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全国に東大理三合格レベルは何人いるのか?(大学の合格最下位学力の統計分析⑧ )

共通テストリサーチを用いて大学の最下位合格者の分析を行っています。東大理三は共通テストリサーチだけでは評価しきれないため、前回は他の推定方法も組み合わせて、理三に合格できる東大生が何人いるかの推定を行いました。

その推定結果も含めて、東大の科類ごとの主要指標を一覧にしたのがこの表です。理三の最下位合格は共通テスト偏差値で71.9(837点/900点)で、それを超える東大合格者は363名(理三除くと266名)という推定結果でした。

表1

今回は同じ東大理三合格レベルの受験生が、全国に何人いるかを推定します。今回も推定の元データは共通テストリサーチの2020−2024年度平均の数字です。分析の前提となる考え方は、過去の記事をご参照ください。

0. まとめ

  • 東大理三の合格レベルの受験生は、全国で578名。

  • 逆に言えば、理三の最下位合格は全国で578位。18歳人口(2020−2024年平均で112万人)の0.05%に入れば、理三に合格できる。

  • 578名のうち、約6割の363名が東大に進学(理一170名、理三97名、それ以外94名)。

  • 578名のうち、約4割の223名が医学部医学科に進学(理三97名、京大58名、地帝37名、難関医医31名)。

1. 単純推定

前回の分析から東大理三の最下位合格は、共通テスト偏差値で71.9と推定できました。以前に推定した全体順位の分布から単純に推定すると、共通テスト偏差値71.9を超える受験生は602名となります。大学を区分して表にすると、このようになります。

表2

ただ、この表を見ると、いくつか合理性が低い数字が見られます。

例えば、「他の国公立・私立に進学」は全体人数のバランスから残差として算定しているものですが、理三合格レベルで他の国公立・私立に進学する受験生が38名もいるとは考えられません。同様に「浪人」の10名についても、東大理三より最下位合格偏差値が高いところはないので、発生することは考えにくいです。

この2つは全体順位を算定するときに、一律で推定したロジックがこのレベルでは適合しないものと言えます。そのため、どちらも「0名」に修正しても問題なさそうです。

一方、これ以外の数字は、共通テストリサーチの元データに起因するものです。そのため、一つ一つ確認しながら補正していきます。

2. 医学部医学科の補正

①東大理三

東大理三の最下位合格偏差値71.7以上の人数を抽出したのに、表1の単純推定では、定員97名を下回る50名となっています。これは、最下位合格偏差値は各年度で算定した数値の「5年平均値」であるのに対し、人数は5年間で最下位合格偏差値が「5年間で最低」となる年度になることから生じる差異です。5年平均で比較しているのですが、東大理三を基準にしているため、ここは97名に補正しても問題ないと判断します。

②京大医医

表1では京大医医は30名となっており、単純推定の東大理三50名の6割です。駿台全国模試のB判定偏差値が1つしか違わないのですが、成績トップ層の分布なので、これくらいの差は出るのかもしれません。ただ、①で東大理三を定員の97名に補正しているので、京大医医もその6割の58名に補正します。

③地帝医医・難関医医

対象とする大学を一覧にすると、この表になります。

表3

左側の地帝医医は各大学に数名から十数名ずつ、東大理三合格レベルの学生がいるという推定結果です。大阪大医医は定員の15%で、これは東大理一と同じです。医学部志望の受験生で、東大理三はギリギリ最下位合格の可能性あるけど、そのリスクを取らずに、地元のほぼ合格確実な地帝医医を受験する学生が一定数存在するのはおかしくないと思います。そのため、ここは修正せず、単純推定結果を採用します。

右側の難関医医は、東大理三合格レベルが一定数存在する大学とほぼゼロ人の大学に分かれています。東京医科歯科大は定員の16%で、東大理一15%より少し上の程度ですが、最上位が理三に流れることを考えると、妥当なラインと考えます。他の大学は地帝医医と同様に、もリスク回避で合格確実な医学部志願者が受験して合格したと考えれば、この程度は存在してもおかしくなさそうです。そのため、難関医医も修正せず、単純推定結果を採用します。

④中堅医医・一般医医

地方国公立大(ネット用語の駅弁大学)の医学部医学科です。表1の単純推定では、中堅医医(駿台全国模試B判定偏差値63〜65)で5人、一般医医(同61〜62)で1人です。

これらの大学と東大理三の間には②の地帝医医と難関医医があるのに、東大理三のリスク回避で、ここまでランクを落とす受験生はほぼいないと考えられます(家庭の事情で同じ県内の大学に自宅通学しかできない学生くらい?)。

この6名は、後伸び余力のある現役生が共通テスト直前に大幅に学力が上がって、たまたま共通テストで高得点だったという見方が妥当です。そこから東大の2次試験の勉強をして、理三に合格するのはかなり難しいと思うので、この6名は推定誤差と見なすことにします。そのため、中堅医医・一般医医はどちらも0名にします。

3. 文系・理系・医他の補正

①東大

こちらは前回の複合推定の数字を採用して、「266名」に修正します。

②京大、東工大・一橋大、地帝5大学

これらの大学をブレイクダウンすると、この表のようになります。

表4

京大は理学部・工学部を中心に人数を稼いでいます。特に京大理学部は定員比6%で、表3右側の難関医医の平均3.9%を大きく上回っています。京大も一部で青天井になっている可能性は十分にあり得るので、単純推定からの修正は行いません。

東工大と一橋大はそれぞれ5名ずつで、定員比は1%未満でした。東大理三の手前に、東大の各科類があるので、この学力が安定的にあれば、同じ東京にある東大の科類を受験するはずです。これも推定誤差と見なしてよいと考えます。そのため、東工大と一橋大は0名にします。

地帝の10名はかなり分散しています。どこかの大学に集中的に存在するわけではないので、こちらも集計誤差で、共通テスト本番で高い得点を取ったパターンと見なせます。そのため、地帝も0名にします。

4. 補正後の推定値

上記の修正を行った、東大理三合格レベルの受験生の補正後の分布は、こちらの表・グラフのようになります。

表5

東大理三に合格できるレベルの受験生は全国に578名存在していて、東大理三に2割、その他の東大に4割、京大に3割、地帝医医と難関医医に1割の割合で進学しているという推定結果となりました。

理三以外の東大は医学よりも興味のある学問分野へ進学した最優秀層。京大は地元志の他に、他地域からあえて東大でなく京大を選んだ最優秀層。地帝医医と難関医医は理三不合格のリスク回避と地元志向の2タイプ。こんな感じではないかと思います。

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