見出し画像

新卒採用の面接官は、エントリーシートをほとんど読んでいないかも。

noteを3ヶ月前くらいに始めました。いくつか分野を分けながら、少し記事を書いてみました。そうしたところ、新卒採用の面接官の経験談が、そこそこ読んでもらえていて、「スキ」をいただく割合が高いことがわかりました。

とはいえ、採用が本業ではないので、採用面接について書ける内容はほぼ出し尽くしてしまいました。そこで、面接ではなくて、エントリーシートを面接官がどう見ているか、について書いてみます

私の経験談なので、偏りはあると思います。ただ、一緒に面接官をやっていた同僚を見ても、同じような感じでした。そのため、以下で書くことは、そこそこ一般化できると思います。

面接官をやる時には、エントリーシートは数十秒しか読みません

頑張って作成した学生には申し訳ないですが、これが私の実情です。働き初めてから20年の間に、1次面接、2次面接、最終面接の面接官を経験しました。でも、どの場合も、エントリーシートは斜め読みです。

時間を計っているわけではありませんが、感覚的には、1枚あたり数十秒くらいしか見ていません。でも、これには、いくつかの理由があります。

まずは、その理由を説明します。

理由①:面接官は採用面接以外の本業で忙しく、事前に読む時間がない

私が勤める会社では、採用面接官を専門でやっている社員はいません。本業が別にある社員や役員が、特定の日だけ面接官をやっています。

つまり、採用面接以外の日は、本業に忙しく追われています。そのため、当日の朝になってから、面接官モードになります。その日になって初めて、エントリーシートに向き合うことになるのです。

しかも、朝に集合して段取り合わせをしていると、最初の面接の時間がすぐやってきます。そうなると、面接と面接の間のわずかな時間しか、エントリーシートを読む時間がありません。

でも、その時間は、前の候補者の評価を入力もやらないといけません。その結果、エントリーシートを読む時間がほとんど取れないまま、面接に入ることになるのです。

理由②:エントリーシートは直前まで渡されない

面接に臨む学生は、「前日や当日にエントリーシートを読む時間がないなら、もっと前の日に読んで欲しい」と思われるかもしれません。でも、それができない事情があるのです。

エントリーシートは住所・電話番号・学歴・顔写真という個人情報の塊なのです。安易にメールで送ってもらって、各社員のパソコンにファイルを残したりできません。よって、エントリーシートは人事が厳重に管理しています

20年前くらいは、当日に集合した際に、紙に印刷したもの渡されました。もちろん、終了後に回収です。

最近はWEBシステムに登録されており、そこへのアクセス情報が前日に送られるようになりました。それでも前日です。

こうした情報管理の観点から、面接官がエントリーシートを触れる時間は、かなり限定されてしまうのです。

理由③:何年も面接官をやっていると、読むべきポイントが絞られてくる

人事と違って、エントリーシートを何千枚も読んでいるわけではありませんが、何十枚か読めば、だいたい同じことが書かれていることに気づきます

学生の皆さんは、「個性は出したいけど、基準外になって、書類選考で落ちたくない」と考えている人が多いのだろうと思います。その結果、皮肉にも、没個性で特徴のない内容のシートを、たくさん目にすることになるのです。

そうなると、面接でしっかり確認すべきところだけが、読むべきポイントになります。そのポイントは片手で足りるくらいの数しかありません。そして、だいたい同じことが書いてあります。そのため、斜め読みで十分ということになります。


斜め読みでも見ているポイント

① 出身都道府県(高校名や実家連絡先)

自分の出身地や縁のある都道府県の場合、質問を投げる前のアイスブレイクの雑談に使っています。そのため、ここは目を通します。

② 大学名

学校名(学歴)は合否判断の基準にはしていません。ただ、別の記事に書いたとおり、学歴によるバイアスがあります。経歴欄の大学名は、どうしても目についてしまいます。

③ 希望職種

ITソリューション会社だと、学生の希望職種は、大半が営業かSE希望です。学生は就活で人事によく接するためか、人事希望もしばしば目にします。しかし、この3つの職種(営業・SE・人事)を希望する学生は、数が多いので見ても意識しません。

では、意識的に見ているのはどの職種かというと、経理と法務です。専門性が必要な職種で、会社として一定数の確保が必要な職種です。そのため、意図的にチェックして、希望度合いを確認してます。

④ やりたい仕事(志望動機)

以前に記事に書きましたが、面接での判断ポイントは、ほぼこれです。ただし、エントリーシートの文章は判断材料にしていません。

ここを斜め読みでも見ている理由は、質問すべき点を考えるためです。とはいえ、学生も当社の仕事を十分理解していないので、的外れなことや一般論の場合も多いです。

的外れや一般論の場合は、「面接で一から確認するしかないなぁ」ということを考えます。そうでなく、自分なりの内容の場合は、「面白そうだし、色々聞いてみるか」と個別に質問を考えます。

私にとって、エントリーシートで大事なのは、この欄だけです。


ほぼ全く読まないところ

①学生時代に力を入れたこと

バイトかゼミかサークルのリーダーの話が大半です。また、ここに書いていることと、面接での対応が真逆のこともあります。

例えば、バイトでのお客様とのコミュニケーションを大事にした経験が書かれている。その後に、コミュニケーション力を仕事に活かしたいと締めくくる模範パターン。でも、面接での質問への回答は、用意した説明の棒読みばかり・・・。

面接官をやり始めた頃は、目を通していた気がします。でも、こんな経験を繰り返した結果、ほぼ読まなくなりました。

②保有する資格

自動車免許、TOEICが王道。たまに簿記。そして、マイナー資格。努力の跡というレベルが多いです。他の学生も同じようなことを書いているので、差別化にもなりません。読まないです。

③研究テーマ

技術系採用では読まれるのかも知れませんが、文系採用で面接の参考にならないことが多いので、ほぼ読みません。そもそも、様々な分野の専門内容は理解できないです。

ただ、例外は大学の専攻が特殊な学科で、自分が興味のある学問の場合です。これは、アイスブレイクの質問に使うために、研究テーマも目を通します。

まとめ

これが私が面接官やる時のエントリーシートの読み方です。このことは、頑張ってエントリーシートを書いた学生としては、腹立たしいかもしれません。

でも、私の役割は面接官です。エントリーシートの評価者ではありません。面接で学生を見極めるのが仕事です。

もちろん、人事部門での書類審査は最初にあるので、そこではエントリーシートの内容が合否判断に使われているはずです。ただ、面接まで到達したら、エントリーシートは、合否とほぼ無関係です。

面接は質疑応答が主軸であり、そのために面接官も時間を割いています。エントリーシートは面接を進めるための道具に過ぎないのです。

面接官はエントリーを熟読するのに時間を使うより、質問内容を考えるのに時間を使いたいのです。

中には、面接で質問すると、「エントリーシートに書いたように」と前置きしてから、回答する学生がいます。

そうした学生は、面接における質疑応答とエントリーシートの間に、本質的な価値の違いがあることをわかってません。つまり、面接の目的と手段の違いを理解してないことを露呈してます。

究極的には、エントリーシートと違うことを答えてもいいのです。例えば、エントリーシートにSE希望と書いても、面接の質問に対して、営業希望と答えていいのです。

就活を経て変化があったなら、きちんと理由を説明して、エントリーシートと違う見解を伝えることは、むしろポジティブです。

エントリーシートには、模範的なことを書く必要はありません。面接官が質問したくなるように、相手に「おっ」と思わせること、相手をワクワクさせることを書いてみてください。

そうしたエントリーシートは、面接合格への道具になるはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?