ラグビー日本代表テストマッチ

2021年7月7日。
サッカーのヨーロッパ選手権が盛り上がるなか、別のスポーツイベントが常に気になっていた。ラグビー日本代表のテストマッチである。対戦相手は英、ウエールズ、スコットランド、アイルランド代表からの選り抜き「ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズ」とアイルランドである。
ライオンズは強豪ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ遠征のために4年に1度、結成されるチームで、その準備のためとはいえ対戦は稀有な機会。次回対戦は保証されておらず、今回が最初で最後になる可能性もある。

アイルランドは2019年のW杯日本大会でジャパンが金星を勝ち取った相手。今回はその敵地に日本が乗り込んでの戦いであり、汚名返上に向けた同国の意気込みにはただならないものがあった。

結果は2試合とも日本の敗北に終わった。コロナ禍の影響でW杯後は代表の活動を行えず、5月下旬にようやく再開できたことを踏まえると、上々の結果と言えるだろう。ただ、少なくともアイルランド戦はリーチキャプテンも言うように「勝てた試合」であり、残念と思った。

それとともに、アイルランド(世界ランキング4位)に負けて残念と思っている自分が可笑しく感じられた。10年前であれば負けを前提に点差を何点に抑えられるかが焦点であり、点差が比較的小さければ「善戦」であったはずだ。今回の試合は後半途中まで「勝てる」と思いながら中継を観ていた。

日本は1995年の対ニュージーランド戦でW杯史上の最多失点(145点)を喫し大敗したチームである。この試合を機に日本のラグビーブームは一気にしぼんでしまった。日本ラグビー界のトラウマは大きく、「体格の小さい日本は肉弾戦が大きな比重を占めるラグビーで世界の強豪に勝てない」という感覚はファンの間にも定着してしまった。

だが、これは思い込みに過ぎず、工夫と努力を重ねれば勝てるということをエディー・ジョーンズ前監督(2021年7月現在イングランド監督)が実証。ジェイミー・ジョセフ現監督は日本代表のラグビーをさらに進化させた。日本は「ティア1」と呼ばれる強豪国の仲間入りを実質的に果たしている。

フランスで23年に開催される次回のW杯、日本は強豪国イングランド、アルゼンチンと同じ組に入っている。決勝トーナメントには2チームしか進めないため、予選リーグで敗退する可能性もある。それでも現在の状況や選手層が厚みを増していることを踏まえると、前回(ベスト8)以上の成績を獲得することは十分に可能だと思う。

エディ、ジョセフという2人の卓越した指導者が続いたことで、日本ラグビー界には好循環が起きている。競争の激しい世界市場で戦うビジネス界がラグビー代表に注目するのは自然の成り行きだろう。

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