存在傷名
頬を伝うのが涙なら、それ以外はなんだって言うんだ。流れない涙に名前をつけようか、君の名前にしようと僕は言った。流れない涙の名前を呼びたくて名前をつけてみたけど、君が嬉しそうに涙を流すから、名前のなかった流れない涙も、頬を伝えばただの涙。名前がないから存在しないまま、確かにそこにあるのに触れられないんだ、辞書にはないけど、探してもみつからないけど、僕はここにいるよ、気づいてよ。
探してたものなんて、案外みつからないけど、答えなんてないから名前をつけてみようよ。嘘みたいだなんて言わないでおくれよ、貴方の名前を呼びたいんです。
なんだか胸が酷く痛んだ、立ち直れそうにない、向き合えそうにない。心の傷って言うらしい、それぞれのものらしい、じゃあ名前をつけてくれよ、僕の名前を。呼ばれたってイマイチピンとこないな、なんでだ、流れない涙と僕は困った、新しい名前をつけようにもどうにも決められない、ピッタリの名前が浮かばないんだ、名前をつけてくれよ。
どうやら簡単に割り切れることばかりじゃないらしい、答えのない答えもあるらしい。じゃあどうすればいいってんだ、ふざけてる世界だ。なんて叫びたいのに、どこに向かえばいいんだ。
心が痛いんです、心のどこですか、どんな風に痛むのですか、それはどのくらい。明日が怖いんです、眠れないんです、原因はこちらで診断しますので、他になにか心当たりは。
知りもしない症状に名前があるように、研究しとしてくれよ、私の全てを。なんて無理だなんて分かってるから構わないでくれよ、どこにもいかないでよ、名前を呼んでくれよ、心の名前を。
いつからか繰り返しすぎて懐かしくもなった、どうやら月日に慣れてきたらしい。大人って言うらしい、なれた気はしないけど、それでいいやって思えてしまったみたいだ。我儘みたいで、だけどそれは本音で、あの頃は確かにそこにあった。そんな日々の名前を、気持ちの名前を、僕みたいで名前をつけてみたんだ。そんな話です
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