adult children

いつからだろう
他人の気持ちを
割り切れるように
なってしまったのは

心からの言葉
伝えられないこと
諦めもついて
恥ずかしさも覚えて

伝えきれないことに
伝う至らない稚拙さが
容赦なく僕を啄むから
避けて歩くようになった
大人になったんだ
隠した秘密は宙に舞う
春の匂いも変わらないまま

疎になった 足音も一つ
また一つ聴こえなくなって
下駄箱に仕舞った
思い出の数だけ
あれ そんなのあったっけ？
振り返ることも 疎になった

屯してた公園の背景も
あの頃の友人 名前も顔も
毎日みてたはずの服装だって
思い出せないんだ
大人になったんだ
悲しくはないけど
愛想笑いの数だけ
嘘が上手くなった

上手くできないこと
夢中になってやっていたこと
美しい思い出にした
今と重ねてしまわぬように

ありふれた日々は
胸を締め付けて痛むから
変わらない春の
青さに溶けて馴染むように

知らなかったときのほうが
知ることに長けていたなんて
とんだ滑稽か皮肉なのか
躓く勢いすらもなくした
痛みを覚えてしまった身体と心じゃ
掴めないことに気づいた
あの頃のように
素直でいられたら

大きく見えた背中も
案外、大したことなくて
落ち込んでしまう日々さ
叱られることも少なくなった

興味もないんだよ 他人の人生
世情に疎いのに敏感になる
好きなものもなく 薄れてしまった
端くれの人生に憂いを編んだ
アルコールで流した

呑み込むこと 吐き出すこと
素直にできる環境も心情も
全てが難しく思えて蓋をしたんだ
無意識のまま 気がつけない
大人になった代償なんて
そんなものありはしないのに
取り繕ってしまうんだ
今を生きれはしないから

どこまでも春のようで
季節は何周も巡って
大人になって
映せない子どもみたいだ

大人になった
大人になんてなれないまま
大人になってしまった
大人を振る舞おうか 今日も

自堕落は部屋にしまって
画面には映らないよう
その癖、隠してしまえば隠さないんだ
そうした狡さを覚えた
大人になった
大人ってなんだ？
なんて、子どもみたいに思った
大人になれないまま