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百合とSFと科学

インタビューで、百合SFが盛り上がっている理由について、溝口力丸さんという編集者がこう答えていた。

——SFの「自分がいる世界を疑ってみる」というプロセスと、「誰かを愛せよ」という規範めいたものから解放された浮遊感

長らく、異性同士の深い関係をまとめて「恋愛」と呼んでいたが、かならずしも異性同士じゃなくてもいいし、恋愛対象の性の人間と恋愛感情以外で深くつながることもあるかもしれないし、そもそも恋愛でくくられる感情の領域が大雑把すぎないか。もう少し解像度を高めていくと、違う景色が見えてくるのではないか。

たしかに百合にしろBLにしろ、恋愛や人間同士の関係性を再構築しようとしているように見える。
SF作品は、それぞれに現実の、現在の社会とは異なる「世界」を持っていて、まずそれ自体が大きな楽しみだ。
加えて、違う世界、異なる環境で人間がどう行動するのかを考えてみれば、それは世界そのものを考えるのと同時に、人間自体についても考えている。

科学理論を検証する時にはよく、複数の手法で実験したり、同じ手法でも複数の条件で行うことが求められる。
理論の確からしさが分かるからだ。
そんな中で、条件を変えて初めて現象の新しい面が見えてくることがあるし、新しい技術は新しい発見の契機になる。

科学やSFや百合は、歴史も背景も用いられる手法も全くちがうけれど、同じく、新しい世界や人間を知りたい、楽しみたいと思う流れの中にある。
既存のものを疑い、新しいものを求めて分解し再構築する。
身の丈に合ってないと思うけれど、自分が好きになるのは相変わらずそういうものばかりだ。

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