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いんよう!同人誌『まちカドかがく』(11/22 文フリ東京)

同人誌を作りました。
Podcast番組『いんよう!』の同人誌です。
番組のアーカイブ的な内容ではないです。
ヤンデル先生とサンキュータツオさんにめちゃくちゃご協力いただいて作りました。

ようやく編集作業も終わって入稿してあとは印刷されるのを待つだけです。
もしかしたら作業で大きなミスをしてるかもしれないけれど、
「9から112ページの文字色が95%のグレイになっていますが、黒に訂正しますか?」
とわざわざ電話で確認してくれる印刷所なのでたぶん大丈夫だろう。
すごい。
詳しくは手にとって読んでいただきたいのだけれど、奇しくもというべきか、必然的にというべきか、
思っていたよりアカデミックな内容になりました。

職業研究者をやっていると、自分の成果の発表は論文か学会発表に限られる。
21世紀にはいってからは、アウトリーチ活動をやれと、上のほうからうっすら圧力がかかり始めた。
ある研究者はもとより社会とのコミュニケーションに意義を感じとりアウトリーチを始め、
ある研究者は科研費の申請書に実績として掲載されると聞いて、とりあえず形だけ整えてやっているフリをする。
現在、ほとんどすべての研究者に課されるアウトリーチ活動は、論文の内容を大学・研究所のホームページで公表する、いわゆるプレスリリース。
もう少し偉い先生方になると、市民講座やサイエンスカフェで話したり、
中学や高校で特別授業をしたり、スーパーサイエンスハイスクールを手伝ったりしているようだ。
場合によっては、マスコミから取材を受けたり、新書のたぐいを執筆されるかたもいる。
基本は、研究内容や成果、または成果が社会におよぼす影響をどうにかして知ってもらおうと試みている。
サイエンスコミュニケーションの王道であり、常にもっとも必要とされるアウトリーチ活動だと思う。

しかしながら、昔からそういったものに、とくに自分がそれをやる姿を想像すると、違和感があった。
自分にはそぐわない、とても落ち着きのない気持ちになる。
他の研究者が自分の成果を積極的に社会に伝え、還元しようとする姿勢は尊敬しているのだけれど、どうしてかやる気になれない。
どうやら私は、自分の成果を話したいわけじゃないらしいと気がついた。
他人の研究だろうが、他分野だろうが、自分がおもしろいと思ったものを人に話したくなる。
だから、生物学ですらない、素粒子物理や情報工学にも興味があるし、ひも理論を理解できたらどんなに楽しいだろうと今でも思っている。
どういうところがおもしろいのか、どうやったら興味のない人にこの楽しさ、テンションがあがる瞬間を伝えられるのだろう。
そういうことは無意識に昔から考えていた。
そういう癖があるらしい。
高校生の頃からそうだった。

好きなものの姿勢を、クリエータータイプと批評家タイプのふたつに分けるのならば、自分は批評家タイプなのだと思う。
興味の対象を研究し、新しい仮説を証明し、論文に書く行為はまちがいなく創造的な行為だ。
だとしたら、自分の興味の発露は、論文やそれに紐付けられたプレスリリース、サイエンスカフェではなくて、
エッセイやラジオで自分と関係のないサイエンスの話を書いたり話したりするほうが自然なのだと思う。
今回の同人誌もその延長線上にある。

ということで来場されるかたは当日ブースで会いましょう。

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