見出し画像

最近聴いてる曲 ILLIT『Magnetic』ほか 2024年4月

ILLIT / Magnetic

Wait a minute、いい気持ち〜。NewJeansの事務所・HYBEから先日デビューしたILLIT。一発目の曲は今流行りの「イージーリスニング」を狙った心地よいトラックに仕上がっている。

20年代K-POPジャンルとしてのイージーリスニングはNewJeansとその舵をとるミン・ヒジンが一気に作り上げた印象があるが、まんま似た路線でハジけているグループはあまりいないのではないだろうか。LE SSERAFIM『Perfect Night』をはじめ、盛り上がりを作らないメロディで勝負する曲は増えているが、y2kっぽい空気感に関しては今のところNewJeansの独壇場といった感じだ。

そんな中この曲、ドリーミーなシンセ使いと空白をうまく取り入れたサビ後半の緊張感がなかなかよい。サビというか、なんというか。ユユユ・ベベベ・タイム。またサビ前の「This time I want」が絶妙に後ろノリでリズムぴったりじゃないのもなんとなくこの曲の幼い儚さに寄与していると感じる。


余談だが、ナヨーンとした曲調ばかりの界隈に一石を投じるべくとあるK-POPファンが「ディフィカルトリスニング」なる概念を打ち出していて笑った。まぁ確かにそうなんだけど、というネーミング。私自身もチアリーディングな8ビート系K-POPが好きなので、こういう路線はまだまだなくなってほしくないなと思う。

一方で確かに、今の空気感に合わせて何か音楽を再生するなら熱量の低い、心地よいアンビエント感をもったものの方が耳馴染みがいいのも否定できず、去年最も再生したアルバムはおそらくNewJeans『Get Up』だし、可聴時間を伸ばすというビジネス上の目的にマッチしているのもそっちなんだろうなと。



NiziU / SWEET NONFICTION

Make you happyで取り込んだJ-POPファンをどんどん深めのK-POPサウンド沼へ引きづり込み続けているNiziU。いつの間にか小技の効いた玄人めな曲連発になっていて、それでも若い女子ファンを取り込み続けているのだからバランス感覚がすごい。今回の『SWEET NONFICTION』も一聴しただけではとっつきづらさすらある複雑な曲だ。カラオケで一発で歌える気がしない。

しかしなんだかこの詰め込まれたフロウに乗っているだけで耳が心地よい。中でも特筆すべきはリオの「もう卒業します!」パートだろう。JYPはTWICEのモモしかり、鼻にかかったキャッチーな声をきちんとフックに使うのがうまい。LIKEYでいう、卵かけブゲー。


ME:I / Click

日本人K-POPオーディション番組「日プ」がいよいよ終了、デビューメンバーが「ミーアイ」として活動を開始した。デビュー時のNiziUがちゃんとわざとのJ-POPをやっていたのに対して、これはいきなりK-POPだ。リズムトラックがかっこいい。

個人的には国籍関係なく「いい曲、いいビジュアル、いい環境」を揃えればちゃんといいものが出てくるんだなという証明にもなった。ビジネスモデルやかけられる予算、ファンダムの大きさ、求められているアイドル像などいろいろな点で違いがあるのは承知の上で、どうしても日本のアイドルが打ち出す「素人の良さ」と韓国アイドルのガチっと作られたパッケージングにギャップを感じざるを得ない。もちろんそれはただのジャンルの違いであって、比べてどうこう言うのはUKガレージロックに対して演奏が洗練されてないと述べているのと同じことだ。それはそれ、これはこれ。



=LOVE / お姫様にしてよ!

そんなことを言っている側から日本のアイドル。指原莉乃主導で始まったアイドルらしく、失礼ながら私は先日美容師の方にオススメされるまで存在を知らなかった。そして曲を聴いてみたら、とてもいい。

中学生の頃、クラスで流行っていたAKB48(2010年代前半)を少し聴いていた以来日本のアイドルは聴いていなかったが、こんな感じなんですね。聴いていてかなり楽しい。イコラブの曲をざっと聴いてみたが、個人的にはTHE FIRST TAKEでやっていたような切ない系統より、こういうド・ポップで底抜けな感じの方がいいなと思った。全体的に、カップリングの曲の方。

意識的に「アイドルらしさ」を演出しに全力な感じというか、非常にアニソン的と言うか。卵が先か鶏が先か、アイドルマスター、ラブライブの楽曲を聴いているのと同じ神経が刺激されている感じがする。この曲で言えばμ's『タカラモノズ』、放課後ティータイム『いちごパフェが止まらない』、UNISON SQUARE GARDEN『君の瞳に恋してない』といったホーンセクションとブルースノートが効いた楽曲と同じDNAが組み込まれていてノれる。

私は基本的に歌詞を読まずに聴き始めるので後半「とはいえ今年は 君からグッと近づいてさ 口付けでしょ よいスタート」だと思っており、必ず脳内で白塗りの宇宙海賊が「良いスタート…いいスタート…イースター島!そーれっ」と地球儀を回し始めるので困っていた。実際は「とはいえこのシーンは」で映画撮影のシチュエーションを想起させてからの「よーいスタート」だった。

あと最後「区役所行ってウエディング」のところ「ウエディンぐぐぐ」に聞こえるんだけどどういう歌割りなんだろう。謎です。



大滝詠一 / SHUFFLE OFF (Instrumental)

2021年のロンバケ40thに続き、今年はイーチ・タイムの40周年記念盤が発売された。目玉のひとつは今基準の音で収録された作りかけのトラック『SHUFFLE OFF』だろう。インストの未発表曲が大々的にアルバムの一曲目に入ってくるのも、熱狂的なナイアガラーに支えられる大滝作品ならではの現象かもしれない。あとビートルズくらいか。

この曲は結局歌の部分が思いつかず頓挫していたらしいが、完成したらどんな曲になったのだろう。(録音当初の)『君は天然色』と同じD調とE調を行き来するコード進行のシャッフルビート。やや大人っぽい印象のアルバムに爽やかな風を吹かせるマスターピースになっていたに違いない。



Jogeir Liljedahl / Addiction

「Wii Donut」という、Wiiのハンドメイドアプリがあるようだ。ドーナツが回るテキストアートが流れるだけという「何もなさ」がウケ、この動画は13万回再生を獲得している。


ここで流れているのが『Addicition』という曲。家庭用コンピュータ黎明期の80〜90年代に活躍したPC・Amiga上で動作するMODファイル形式に収められた作品のようで、作者はJogeir Liljedahlというらしい。ホームページ上で公開する配布MIDIのようなイメージだろうか。

当時らしいサウンドがノスタルジーを感じさせつつもAOR・フュージョンなコードの展開がニクく、ものすごくいい曲だ。ハードオフの店内BGMでお馴染み『SC-1903』に続いて、個人的ベストBGMの2位にランクインした。




John Coltrane / My Favorite Things

昨年末に観たアニメ映画・BLUE GIANTから見事にハマったサキソフォンジャズ。まずはコルトレーンから聴き始め、肩の力が抜けた名セッション盤『BLUE TRAIN』、コードでガチガチに縛られた緊張感の『Giant Steps』、言わずもがなの『Kind of Blue』に続いて本作『My Favorite Things』を聴いている。

極上。マイナーからメジャーへの転調をしていく中で、マッコイタイナーの寂しくも艶やかなピアノが下地を作り、コルトレーンのソプラノサックスが聴き手の感性を撫で回す。



おまけ

『もってけ!セーラーふく』のカラオケがサブスクに登場!

かつてニコニコに「もってけ!リッジレーサー」という、これとリッジの画面を組み合わせた動画があったが、トラックを手がけた神前暁はまさに元ナムコの人。ドライブ感がありつつもなんかきもちいい「ヘン」を突き続けるサウンドが最高です。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?