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好きな音楽の話を手短に#3 ハイスクールキュンキュン!

自分が10代や若い頃に聴いていた音楽に対して強い愛着や、大人になって繰り返し聴いてしまうというのはよく聞く話。「昔の音楽の方が良かった!」と嘆き倒す老人たちもその一種でしょう。でもこれは単に昔の方が優れていたという話ではなく、若い頃の記憶の方が歳を重ねても鮮明で、その当時聴いていた音楽というのがその鮮明な記憶をポジティブな記憶と絡めて脳に呼び起こしてくれるからという脳科学のデータがあるそうな。

実際に今28歳の自分が18歳の頃に聴いていた音楽を聴くと、その曲を聴きながら思っていた人の顔や、聴きながら歩いた景色のことなどが一緒に浮かんでくる。もうすでに自分の人生の手垢まみれで、フラットのまま聴くことは難しい。その手垢まみれの曲を誰かとシェアしたとしても人それぞれに曲の聴こえ方は違う。人には同じ記憶はないし、それをそのままシェアする方法はないから。一人に一つの記憶があって、自分がつけた手垢まみれの大切な音楽は一人の人生に一つずつ。そんな音楽の話をもっとしていきたいよねと思う。


THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 『GEAR BLUES』


■16歳の頃、3ピースバンドを組んでいた時に母から「これやれば?」とROSSOを教えてもらったのが、チバユウスケ及びミッシェルガンエレファントとの出会いだった。黒の揃いのスーツにサングラス、ゴリっと鳴るベース、煽るようなドラムのビート、挑発的なテレキャスギターの歪みとカッティング、飢えた狼のように叫ぶボーカル。これほどにまでコンセプト通りのバンドはいない。これがロックバンドやから。胸を貫くのよ。30秒で頭蓋骨は揺れる。それ以上の説明の方法が見当たらん。14発のマシンガン、これが『GEAR BLUES』。これがTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。


monobright 『monobright two』


■ミッシェルが黒スーツサングラスなら、monobrightはポロシャツ黒メガネがユニフォーム。"アナタMagic"がアニメ『銀魂』の主題歌になったことで一気に人気バンドに駆け上がったmonobrightのメジャーセカンドアルバム。デビュー前からオルタナサウンドとポストパンクリバイバル的なサウンドを主体とした音楽性ゆえに、非常に2000年代的ロックバンドを感じるバンド。初っ端からテクノな"SGS"で始まり、ディスコパンク風な"踊る脳"でガンガンにぶち上げていく流れがアルバムとして非常に大好きである。アルバムを通して聴いた時に音楽性にも幅があって情報量も多く、改めて濃いバンドだな〜と思う。


MO'SOME TONEBENDER 『HELLO』


■アルバムの1曲目には耳から心を貫いて、スタートダッシュの勢いをつける楽曲が収録されることが多かった。2000年代は、CD屋の試聴機での一瞬が人と音楽の出会いを左右するからだ。まず1曲目の30秒を聴いて、そのままそのアルバムを聴くかどうかを決める。そして大体3曲目あたりに渾身の曲が収録されていることが多い。そんなことを思い出す。
MO'SOME TONEBENDER、通称モーサムの2001年にリリースされたアルバム『HELLO』は1曲目の"冷たいコード"を30秒聴けば心はググッと掴まれ、ブリッブリのベースに頭振り乱してしまう。一瞬で10代の頃に初めて聴いた時のことを思い出したりする。"ボクはサカシマ"、この曲のギターの音が大好きで、オルタナのギターの音と聞くとこのギターの音が頭の中で再現される。


Syrup16g 『HELL-SEE』


■高校1年生のピッカピカの15歳、高校に入学してバンドを始めて希望まみれだったところに、当時高校3年生だった先輩が「お前は俺に似てる」という理由である日突然貸してくれたアルバムがこのSyrup16gの『HELL-SEE』だった。それがどういう意味だったのか教えてくれることはなかったけど、ある意味で地獄の始まりで、同じだけの希望の始まりだった。そして自分が高校3年生になった時に入学してきた新入生の後輩に、「お前は俺に似ている」という理由でこのアルバムを薦めたのだった。まるでジュマンジのようにそれは繰り返す。


avengers in sci-fi 『avenger strikes back』


■リリースされた当時聴いていた時よりも、こうして数年立ってから聴いた時の方がグッとくる音楽というのも存在する。ふとした時に思い返して自室のCD棚からavengers in sci-fiの1stアルバム『avenger strikes back』を取り出して聴いた時にあまりのかっこよさに衝撃を受けた。リアルタイムで聴いていた時はまだ中学生だったので咀嚼しきれていなかった部分が多分にあった。それを15年の時を経て、口の中で咀嚼しきれていなかった食材の食感や味の深みが遅れて広がってくる感じ、最高だよね。それはきっと自分の人生も経験や知識を重ねて同じだけ歩んできたからなのだと思う。"NAYUTANIZED"を再生した瞬間にあの頃と心がシンクロして、そこにまた新たな色が加わり、懐かしさよりも今感じる「最高」という気持ちが優った。その瞬間、自分の人生に対して「勝った」という気持ちが生まれた。







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