生ごみと発芽テスト


有機物マルチを使用する不耕起栽培では作物の残渣も畑に残します。トマトやゴーヤ、ブロッコリーを片付ける時の枝葉は勿論、大根葉の食べられないところも畑に撒き散らかしたままです。一時的に畑はかなりみっともなくなります。そして私は散乱した枝葉を見て思うわけです。

これって生ごみとどこが違うの?

世間的には生ごみは堆肥にして畑にまくのがよろしいとされています。理由は何でしょうね。よく判りません。結構熱心に探してみたのですがどの情報サイトもいきなり生ごみを堆肥にする方法から入っていて、なぜ生ごみを堆肥にするべきなのかという点には触れていないのです。

見た目でしょうか?

生ごみは色とりどりなので目立ちます。とくに柑橘類の皮のオレンジが目に鮮やかでゴミ感を強調します。

見た目は大事です。ゴミ溜めみたいな畑だと言われ、家人や近所の人たちに後ろ指を指されるのは避けたいところです。しかし、見た目だけが問題なら、枯草や落ち葉のマルチで生ごみを覆ってしまえば済む話です。

猫や虫が生ごみを狙ってやってくる?

野菜屑だけなら猫もやってはきません。土の表面に置いておくと生ごみもすぐに乾燥するので虫もそんなには湧きません。

ではそれ以外に何か園芸的に生ごみを堆肥にする理由はあるのでしょうか。

例えば生ごみが植物に悪い影響を及ぼすとか?

堆肥化していないコーヒー滓が種の発根や根の成長に悪影響を及ぼすことは私も知っています。その類の効果が生ごみにもあるのでしょうか。

そこでちょっと実験をしてみることにしました。

堆肥の熟成度を調べるためのテストとしてGIテストというのが行われています(Germination Index test)。堆肥中に植物に毒性がある物質が含まれていないかを調べるテストです。

手順としては、調べたい堆肥の浸出液を作り、植物の種をその浸出液を使って発根させます。
発根率(G)、発根した根の長さ(L)を測り、同時に行った対照群(蒸留水)での発根率(G0)、発根した根の長さ(L0)を用いて
GI値=(G/G0) ×(L/L0)×100
を得ます。GI値が高い方が優秀です。
これを生ごみなどでやってみることにしました。

実験条件

種:ダイソーで購入した小松菜の種
各条件に付き20個使用

浸出液の説明

  1. 水(対照群):水道水

  2. 生ごみ浸出液:800gの野菜くずを28℃で3日置いて軽く腐敗させた後、80gの水を足して浸出液を得た

  3. 生ごみ10倍希釈:上記の浸出液の10倍希釈液

  4. コーヒー:ドリップパック(デカフェ)の乾燥したコーヒー滓に等重量の水を足し軽く攪拌後、フィルターで濾した

  5. 麦のとぎ汁:大麦のとぎ汁をそのまま

  6. 培養土浸出液:市販の種から育てる培養土に重量で2倍の水を足し、軽く攪拌後浸出液を得た

発芽条件:28℃で4日、ペルチェ素子による家庭用保温庫を使用しました。
浸出液や水は各3mLずつ入れて、ペーパータオルで覆い、プラカップのふたをしてあります。

対照群は蒸留水なんて気の利いたものはないので、普通の水道水です。ペトリ皿もないので100円ショップでプラカップを買ってきました。

野菜くずを腐らせたのは生ごみっぽくしたかったからです。そのままだと浸出液が得られないので水を足しました。コーヒー滓は種に本当に悪いのか確かめて見たかったので試してみました。デカフェとあるのは私が加齢に従いカフェインを受け付けなくなったせいです(悲)。麦のとぎ汁はよく畑にまくことがあるので追加しました。米ではなく麦なのは私が健康に気を使うお年頃だからです。培養土は苗を育てるときに使うのでどんな風になるか興味がありました。重量と等倍だと水を全部培養土が吸ってしまうので2倍量としました。

ペーパータオルの上で種が成長すると、根も胚軸も茎も区別がつかないので、全長から種(または双葉)の部分を引いて根の長さとしています。

セッティング

こんな感じで6つ用意しました
野菜やミカンの皮などによる生ごみ

結果

実験結果の表

思いもかけず、生ごみが圧倒的です。写真を見て頂ければ判りますが、伸びまくってます。10倍に薄めても培養土とタメを張ります。コーヒー滓は前評判通り最悪でした。麦のとぎ汁もよくありません。

GI値のグラフ

結果の写真

水(対照群)


生ごみ浸出液


生ごみ浸出液10倍希釈


コーヒー滓


培養土


麦のとぎ汁

考察

何かの論文で読んだ通り、発根条件を28℃、4日にしたのですが、水だけでは肥料分が足りないのか発根後、根が十分に伸びきらないようです。

生ごみ浸出液、培養土は何らかの肥料分を含むので根の伸びが良かったのでしょう。

ただ、ここで面白いのは培養土は化学肥料入りで肥料分は無機成分だとしても、生ごみ浸出液の方は無機成分とは思えないことです。たった3~7日放置して腐敗させただけでそこまで分解が進むとは思えません。ですから根はもっと高分子な形で肥料を吸収しているのではないかと思われます。

私は今まで植物が有機物を肥料として取り込むのはあくまで補助的なものであって、主要な肥料吸収は無機成分だと思っていたのですが、意外と有機物の吸収も大きいのかもと思いました。

今回、野菜屑は生ごみとして大根やニンジン、ブロッコリーやミカンの皮など一緒くたにして実験していますが、どの野菜屑から出てきた有機物が一番効果があるのかを調べても面白いかも知れません。

麦のとぎ汁については水に混濁しているのがデンプン質が主なのではないかと考えました。デンプン質は窒素やリンといった肥料成分を含まないので微生物の餌にはなっても植物の肥料にはなりません。また、根の周りに糊のように張り付いて水分の吸収を阻害したという可能性が考えられます。個人的にはこれからは直接植物に掛けるのは止めようと思います。

最後に、コーヒー滓はやはり堆肥にした方が無難です。名前は忘れましたが、コーヒー滓を土に埋めると初期は生育が悪化したが、2週間したら何もしない土より植物の生育がよくなったという論文を読んだことがあります。植物の根の成長に悪影響を及ぼす物質は2週間ほどで分解される筈です。

結論

野菜屑の生ごみを用いて発芽テストを行いました。生ごみを畑に持ち込むことには植物的に悪い点は見当たらず、むしろ良い効果が得られました。自治体のごみ処理の負担を減らすべく、生ごみの堆肥化が推進されており、補助金なども出るようです。しかし、生ごみ(野菜屑)をわざわざ堆肥にする必要はなく、覆いになる枯草や落ち葉があって見た目をカバー出来れば、畑に直接撒いてしまって問題ないと思われます。

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