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駅で男は目覚めたシリーズ

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散文詩(無改行、不改行)「駅で男は目覚めた」をまとめています。
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2022年9月の記事一覧

駅で男は目覚めた。

駅で男は目覚めた。生まれてから何度目の目覚めなのかはわからなかったが、生まれてから何度目かの目覚めであることはわかった。これは生まれてから初めての目覚めではない。そしておそらくは、生まれてから最後の目覚めとなることもないであろう。そのような予感が男の重いまぶたを押し上げようともがいていた。仮に最後の目覚めであっても、目覚めるときにそれが最後の目覚めだと意識するものはそう多くない。ただ眠るときに二度

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駅で男は目覚めた

駅で男は目覚めた。朝陽の当たるベンチの上で、いつの間にか座り込んでいた。いつから腰を下ろしていたのか、いつから眠りについていたのか、男にはわからなかった。どこかへ行かねばならない。立ち上がって、背を伸ばし、頬を張って、目を輝かせ、力強く一歩を踏み出さなければならない。何かが自分にそう命じている。いや、そうあるべきだという自分の憧れが、自分を追い立てるようにその影像を自分の脳に課している。行き先さえ

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