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佐藤可士和展で、ブランドを考える

国立新美術館の佐藤可士和展では、過去の華々しい作品の数々が展示されており、音声解説も素晴らしく、見応え聞き応え十分な展示だった。

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地味な休憩スペース展示の「インナーブランディング事例」が、一番良いインプットだった

華やかな展示スペースから、少し奥まった休憩スペースにあった長文の展示。三井物産のインナープロジェクトの紹介。
Who makes the brand ? というメッセージの下に、事細かに三井物産でのプロジェクト内容が書かれていた。最初は、ぼーっと眺めていたが、吸い込まれるように文章をなぞっていた。
ここで書かれている内容が、彼の頭の中でブランドをどう捉えているかが理解できる。ブランドを勉強したい人は、ここが一番見る価値ある。

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三井物産のAdvertising Project概要

2014年にスタートしたプロジェクト。現場の最前線に立つ三井物産社員たちが佐藤のディレクションのもと実際の新聞広告を制作。社員がブランディングの主体となることを目的としたプロジェクト。
コピーライティングからビジュアルの企画開発まで、広告制作の主要部分全てに社員が挑むもの。
ブランドの核心を社員自ら言語化。全社に発信・浸透させていくアンバサダー的な役割を担う。(通常は、広告専門会社や、社内クリエイティブに任せる業務を現場最前線の社員が担当するのは、ほぼ無い。)

ブランディングに対する最大の誤解は、
「ブランディング=ロゴやスローガンをつくること」

ロゴやスローガンの刷新をもってブランディングという事例も世間には数多くあるが、実際にはブランディングの入り口に過ぎない。ブランディングとは本質的な価値をもとに戦略的イメージコントロールを行っていく活動全てであり、その99%以上はロゴやスローガン策定後の現実的アクションが占める。どのようなアクションが必要かは、1つ1つのブランドによって全て異なる。そこに定型はない。「方法」そのものから開発する。それこそがブランディング。

三井物産のブランディング方法の核は、「人」

三井物産は、「人の三井」と称されてきた歴史がある。あらゆる産業をカバーする三井物産にとって、ビジネスに革新をもたらす「人」こそが力の源水。そして、人ことがメディア・現場の社員一人ひとりがブランドの体現者として顧客に、パートナーに、社会に「ブランドのあるべき姿」を発信できればそれに勝るコミュニケーションはない。このプロジェクトで15個の新聞広告が生まれたが、実は真のアウトプットは広告そのものでない。ブランドの価値を表現するという体験を全社に広げ、世界中の社員4万6千人をメディアにしていくことを狙いとした。

佐藤可士和の手段を選ばないアウトプット

これら三井物産のプロジェクトについては、3年に渡る長期プロジェクトとなったようだが、本質的な課題解決のためには手段を選ばない挑戦していく姿勢が、見てとれた。ユニクロのロゴ、スマップのクリエイション、その他作品についても、最終的には明確な差別化をもったアウトプットに仕上げている。

優れている3つの点

・相手の想いを引き出す能力
・ロジカルな思考プロセス
・課題を解決するための手段を選ばない良質なアウトプット
とてつもない思考量の積み重ねで、出来上がっている。
鋭い切れ味の思考力とアプトプット力の高い刀を武器に、SAMURAIらしく世の中を切っている。
世の中に受け入れ堅い企業広告をアートの域まで高めて、良質なブランドを作り続けていく佐藤可士和。
この人の真似はできないが、思考プロセスをトレースして、良質なブランド作りをしていきたい。

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