子どもの成功体験は大切だけど、失敗から学ぶことの方が多いかもしれない
新入社員が無断欠勤し始め、結局親が会社に乗り込んで退職に際するあれこれを差配した、という話を聞きました。今時の親はどうなっているのだ、と言う話はさておき、この話から思ったことを書いてみたいと思います。
先日冬の風物詩である全国高校サッカー選手権大会が終わりました。能登半島地震の影響で、富山第一高校応援団の大半が来ることができない中、サッカーファンが温かい声援を送ったことが話題となりましたが、私は堀越高校サッカー部の「2012年から選手主体で活動を進めていくボトムアップ方式に切り替えた堀越高校は、それから9年目の2020年度に29年ぶりの全国高校選手権への出場を果たし、ベスト8に進出した。」との記事に興味を持ちました。
「同学年だから」では優遇しない 堀越高主将がスタメン決定、「僕なら無理」と監督も驚く評価基準
日本のスポーツ界で「選手主体」の指導の大切さが叫ばれる中、育成と結果を両立させているチームの1つが、堀越高校サッカー部だ。11年前、佐藤実監督がボトムアップ型の指導を導入すると、2020年度の全国高校サッカー選手権に29年ぶりの出場。21年度大会にも2年連続で出場すると、今年度も2年ぶりの全国行きを決めるなど、着実に選手主体の指導の質を高めている。
ここで言うボトムアップですが、トップダウンという言葉の反対の言葉として使われているみたいです。
子どもに任せることにより収拾がつかなくることは多分にあったと思います。そして勝利を追求するのであれば、あの多感なティーンを締め上げでなくまとめるのが容易でないこともよくわかります。ですが、監督コーチがどっしりと構えたのでしょうね、自らが考えるサッカーをする子どもたちもすごいですが、指導者もすごい。そして実際に生徒自らが行動し勝利を目指し勝ち抜くチームに成長した事に、それもトップレベルで行われている事に感心することしきりでした。
自分で決めたことは、それが成功であれ失敗であれ、自分のものになると思います。しかしトップダウンで決められたことを年長者の顔色をうかがいながら取り組むような場合だと、その成功も失敗も与えられたもの、という意識を拭うことができません。そして今はできるだけ成功体験を増やし、失敗させないことを良しとする社会です、子どもはいくつになっても庇護の対象であるとの錯覚に陥る可能性があると思うのです。
子どもはどこかのタイミングで自らの羽を広げ、年長者と対等な世界に飛び出さなければいけません。自分よりも若くて力強い羽を持ち、おまけに遠くまで飛ぶことのできる存在を守り続けることだなんて誰にもできないと思います。
ところで子どもは他者と自分の区別がつかないまま生まれてくるそうです。親と触れ合い、他者と触れ合うことで少しずつその区別がついていくと言います。最初は一から十まで親に依存していたものが、少しずつ親から離れ、最後は自分で判断し行動しなければいけません。親はそれを見極め、距離を置くようにしていくものですが、子どもはいつまでも子どもである、と勘違いしている親が多すぎます。そんな親がいるから、ティーンを過ぎても「尊敬する人は父親です」とか恥ずかしげもなく言い出す気持ち悪い子どもがいるのではないでしょうか。反抗期で困っている、といった話も「原因はあなたなんだよ」と一人冷笑する自分がいたりします。
少なくとも高校生になったら干渉しないことが肝要です。それぐらいの気持ちで子どもと向き合った方がお互いにとって絶対に良いです。聞かれたら自分の思いだけ伝える。いわゆる「わたしメッセージ(I messege)」の利用ですね、判断材料の一つになればよいというくらいの気持ちで。親の意見を採用するかもしれないし、しないかもしれない。勉強の強要だなんてティーンに通用するわけもなく、その時期に勉強しないのは、その子のそれまでの生き方から導かれた問題なので、そこで問題が起きたとしても、そこから得られる成功も失敗も親が奪っては絶対に駄目だと思うのです。とにかく子どもの失敗は奪わない、冒頭の話ではありませんが、仕事を辞める時のあれこれも本人から奪わない、とっても大切なことだと思うのです。
親のその一言が、その行動が、子どもの今後の成長や成功につながるわけがありません。親として、それくらいの微かな存在であれば万々歳です。でもこの世の中には子どもに影響を与える存在であり続けたいと思う親が多いこと多いこと。本当に不思議です。
自分で考え行動し失敗したことは必ず次につながります。成功体験だけをさせたいのもわかるのですが、失敗する可能性の高いものをあなたのためにというだけの理由で排除することが果たして良いことなのでしょうか。本当は、その失敗にこそが、その子の将来の成功に繋がるものではないかといった視点も大切だと思うのです。そう考えると言葉に躊躇してしまいますし、失敗を失敗に終わらせないサポートが大切だという考えを持てるようにもなるのではないでしょうか。
最初の話に戻りますが、せっかく会社を辞めるという選択をしたのだから、最後まで自分の力で終わらせるべきです。そこでトラブルがあったとしても、最後の尻拭いまで本人がすれば、「あの日に考えて行動できたから、今があるんだよね。」と思う日もあるかもしれませんし、それこそが子どもの体験を共有できる伴奏者としての親の真骨頂ではないかと思うのです。
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