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IPO支援者(主幹事証券)のトレンド

スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズ

IPOにおける主幹事証券の役割

スタートアップがIPOを目指そうとした場合、その支援をする重要な登場人物として主幹事証券会社があります。主幹事証券会社の役割はフェーズに応じて以下のようになります。

上場準備から上場申請前まで:上場に向けたアドバイザリー業務
・上場に向けたスケジュール策定(足元の事業進捗と成長戦略を踏まえてどのタイミングで上場を目指すのがよいかアドバイス)
・内部管理体制の整備に係るアドバイス(内部管理体制の穴をどう塞いだらよいかについて助言)
・主幹事証券による審査(上場審査基準に適合するかを取引所審査の前に予備審査する)
・証券取引所による上場審査に向けたアドバイス(証券取引所の意向を汲んで押さえるべき点に関する助言)
※上場に向けたアドバイザリー業務はどの証券会社も大体年間500万円程度でたいして証券会社の儲けにはなりません。

上場申請から上場まで:証券取引所審査のサポートと公募/売出スキーム検討
・証券取引所による上場審査(スタートアップと証券取引所の間を取り持つ)
・公募/売出スキームの策定(株式数や調達額等に関する構想を検討)
※通常はシンジケート団(シ団)といって複数の証券会社が引受を行い公募・売出業務を行います。
・機関投資家とのロードショーのセット(スタートアップの特性に応じた機関投資家を選別し反応をヒアリングしブックビルディングの準備)
※上場前にスタートアップが複数の機関投資家に対してピッチを行うことをロードショーといいます。

上場後:株式全般に係るアドバイス
・上場後の安定株主対策(公開されると誰でも株主になれるため安定株主の確保は経営上重要です)
・IR支援(IRが下手だと株価が不当に低くなる可能性があります。投資家に正しく会社を知っていただくためにIRは重要です)
※IRについては、証券取引所や株主からの情報開示要求が年々強まる傾向にあり上場企業にとっては重要な課題です。

主幹事証券のトレンド

2010年代後半から新規上場会社が年間90社程度と2010年代前半に比べて大きく推移していきます。以下にデータを引用します。

TDB Business View 2024/2/2 2023年のIPO動向
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240201.pdf

図1にIPOに関与した主幹事証券数(2021年年間と2024年半期の比較)を記しています(図中の数字は件数)。これを見ると分かる通り、SMBC日興証券、みずほ証券、野村証券、大和証券、SBI証券の5社でほぼ8割という構図は変わっていません(かつてみずほ証券と並んでトップを走っていた野村証券の主幹事割合が減ってきてはいます)。

図1.IPOに関与した主幹事証券会社(2021年年間対2024年半期)

スタートアップが主幹事証券を選定するにあたっては、複数証券会社からプレゼンをいただくビューコン(ビューティコンテストの略)を経ることも多いかと思います。そこで各社の実績や担当予定者の紹介などがあってどこを主幹事にするか決めていくプロセスですね。
最近の傾向として少し気になるのは証券会社からスタートアップへ転身する人材が増えていることがあります。ちなみに私がスタートアップにいたときの主幹事証券からは若手担当者2名が転身しました。主幹事証券会社の仕事は基本的にそれほど大きく違うものではありませんがやはり担当者によって差は出ます。もしあなたがCFOならば証券会社そのものよりも自社の担当者と仕事がやりやすそうかどうかを判断基準にしてみるのもアリだと思います。

追伸)スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズでは備忘の意味も込めて書き綴っています。各種質問やこんな話題を取り上げてほしい等のリクエストがありましたらご連絡いただければ幸いです。


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