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資金調達の種類と長所短所あれこれ

スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズ

資金調達の種類

資金調達ですがいくつか種類があります。私が携わったものを中心に資金調達の種類と特徴をまとめました(表1)。長所短所は資金の受け手の目線で書かれており、右端には資金の出し手の狙いが書かれています。

表1.資金調達の種類と特徴

銀行からの借入

起業して最初に思いつくのが銀行からの借入かもしれません。創業時には各自治体では創業支援のための制度融資や日本政策金融公庫の創業融資などがあり、比較的融資を受けやすい環境があるものの、しっかりと事業計画等を準備して臨む必要はあります。
長所は、経営権については無条件でそのまま保持できるため、返済スケジュールに沿って利子と元本を払っていれば特に文句を言われることはない点でしょうか。
短所は、銀行は融資したお金がきちんと戻ってくるかを一番気にすることの裏返しで、最初は経営者の個人保証を求められる場合が多く、事業がうまくいかない場合、一歩間違えると自己破産のリスクを負うことでしょう(これを受けてスタートアップ創業促進保証という制度が最近作られましたが効果が出て来るのはこれからだと思います)。あと新興企業の場合、信用力の面で審査が厳しい場合があります。

ベンチャー・キャピタル(VC)の出資

スタートアップがどこどこのVCから〇〇億円調達したという類のニュースをよく耳にします。スピード感をもって一気に事業を拡大したい場合、資金調達先としてVCの存在感は大きなものになります。一般的にVCは第三者割当増資という形で出資先の株式を取得する対価として大きなお金を出資します。
長所は、一時に大規模な資金調達が可能である点、経営支援やネットワーク構築支援を期待できること、また事業が伸びていけば追加出資も望みやすくなる点があります。
短所は、株式の割当に伴い経営権の一部を譲渡する必要がある点、大きなリターンを期待されるため相応のプレッシャーがかかる点になります。
これはVCのビジネスが出資した後の出口として大きなリターンを求める(ファンドにはおよそ10年という時間制限もある)ことから来るので、VCから資金調達する場合にはその点を理解しておく必要があります。

事業会社又はコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の出資

自社事業との大きなシナジーが期待できる会社(大きな会社の場合が多いと思われます)がある場合は、その会社から直接出資してもらう、或いはその会社のCVCを通じて出資してもらう方法があります。出資元の狙いはVCと違って主に事業シナジーであるため長期的な関係構築が期待できます。なおこの場合もVCと同様に第三者割当増資の形を取る場合が多いです。
長所は、戦略的パートナー関係を構築することができる点、VCとは違って長期的視野での支援が期待できる点、業界における信用やネットワークが得られることが挙げられます。
短所は、株式の割当に伴い経営権の一部を譲渡する必要がある点、出資元企業の戦略の影響を受けること、独立性が制約される可能性があること(出資元の競合企業との取引制限など)が挙げられます。

M&A(事業売却)

もし複数の事業を行っているならば、何等かの理由で事業の整理とともに資金調達を行いたいときが来るかもしれません。そんなときは事業売却を検討してみるとよいでしょう。近年不確実性の高い環境の下、事業成長やイノベーションを求めてM&Aを積極的に検討する時代になっています。他社の資産をM&Aにより買収することで、自社でゼロから始めるよりも効率的に(時間を節約して)事業推進することができます。特に技術的に優れたものであればそれなりの対価が得られる可能性が高いです。M&Aは売りたい側と買いたい側の間に仲介する業者が入ることが多く、その分取引が複雑で費用もかかることになります。
長所は、即時に大規模な資金調達が可能、事業の選択と集中を図ることができる、今まで行ってきた事業が売却先で成長する期待が持てることなど。
短所は、取引が複雑で高コスト、売却先に人材も転籍する場合があること、売却後のPMI(Post Merger Integration)が円滑でないと負担になるリスクがあることが挙げられます。

補助金制度

国や自治体はその時々の政策推進や産業育成のために各種補助金制度を創設しています。IT導入補助金やものづくり補助金といった名前を聞いたことがあるかもしれません。補助金の源資は税金になるので自社が払った税金を取り戻す意味合いでも利用できるものは利用した方がよいでしょう。
長所は、返金不要のお金であること、数多くの種類の補助金があること(複数の利用も可能)、補助金を受けられれば公的機関からの信用が増大することが挙げられます。
短所は、申請から完了までのプロセスが複雑でしかも時間がかかること(事務処理が本当に面倒くさいため費用対効果が低い場合もある)、資金使途に制約があること、事業支出が先で補助金の入金は完了報告後になるため資金繰り上不利になることが挙げられます。

クラウドファンディング

某VCの人が「クラウドファンディングは通常の資金調達ができなかったやつがたどり着くところ」と言っていたこともあり(偏見ですね)、私自身はクラウドファンディングはやらなかったのですが、調達の一手段であります。株式投資型のクラウドファンディングもありますが、自社の要件に合せて利用を検討するのがよいでしょう。
長所は、(うまくいけば)多くの支持者を得られること、市場性を事前にテストできること、マーケティング効果が高いことが挙げられます。
短所は、調達金額が不確実であること、キャンペーンの準備と運営に手間がかかること、支援者への報酬や特典の提供が必要な場合があることが挙げられます。

いずれの資金調達方法においても、後々揉めないためにも、お金の出し手の目的・狙いを正しく理解した上で自社の要件とすり合わせて資金調達に臨むことはとても重要なポイントになります。
なお、上記は私の経験に基づいて書き下しているため、当てはまらないケースや、他の見解もあり得ることはご承知おきください。

なお各種質問やこんな話題を取り上げてほしい等のリクエストがありましたらご連絡いただければ幸いです。


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