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【2/3】メイドイン海外。日本のエネルギー問題

 日本はいくつものエネルギー問題を抱えています。エネルギー問題というと少し小難しくて、自分とは直接関係がないと思う人もいるかもしれませんが、実は私たちの生活に大きく関わっています。また、エネルギー問題は環境問題にも大きく関わります。ここからは、日本のエネルギー問題の現状について書いていきたいと思います。

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原発問題は知っておかなければならないが、根本的な問題ではない

日本にお住いの方でエネルギー問題と聞くと、「原発(原子力発電所」ということキーワードを思い浮かべる方は少なくないのではないでしょうか。東日本大震災をきっかけに、原子力発電所の存在はエネルギー問題を超えて大きな社会問題の一つとなり、原発の停止や再稼働、発電所内でのトラブルなど全てがトップニュースとして取り上げられるようになりました。ここでは、この問題についての深掘りはしませんが、エネルギー問題を考えるうえでどのようなことがあったのかを知っている必要がありますので、簡単に触れておきます。

2011年3月11日に発生した東日本大震災(3.11)により、東京電力の所有する福島第一原子力発電所が地震や津波の被害を受け、メルトダウンという重大な原子力事故を起こしました。そして、原子力発電所の建屋で爆発が発生し、人体に影響のある放射性物質といわれるものが大気中に大量に発散され、福島県を中心とした多くの地域で放射性物質により汚染されました。

この事故による汚染の影響は大きく、8県100市町村(データ)で国や地方自治体により、放射性物質の除染が行われました。さらに、ピーク時には約8.1万人の方がこれまで住んでいた場所が避難指示地域となり住民が立ち入りが制限されてしまい、別の場所で暮らすことを余儀なくされました。2019年7月の時点でも2.3万人が帰宅困難者として、住んでいた場所に戻れていません。

この事故をきっかけに、日本全国の原子力発電所は全て停止となり、安全対策を実施するまでは原子力発電所の稼働ができなくなりました。ニュースなどで「原発再稼働に反対!」などの運動を目にすることがあると思います。これは、停止状態の原子力発電所を再稼働することで、大地震や津波が発生した場合に、福島第一原子力発電所と同じような事故がおこるのではないかという懸念に対するものです。

この事故だけをみれば原子力発電所はリスクの大きく、怖い存在と感じるかもしれませんが、原子力発電所にはメリットもあり「必要論」、「不要論」が様々な場所で議論されています。

元総理大臣の小泉純一郎氏は、総理大臣の時には原子力発電所を推進していましたが、事故をきっかけに勉強をし直したとのことで、今では原発ゼロ運動をおこなっています。ここで反原発ということを言いたい訳ではありませんが、原子力発電所は一国の総理大臣でさえ判断することが難しい、非常に専門的で難解な問題だということです。

福島第一原子力発電所の事故では多くの方、特に福島県にお住いの方が住み慣れた場所を奪われるなどの精神的な苦痛を受けることになり、それは今現在も続いています。このような事故は今後もあってはならないので、日本全体で考えていかなければならない大きな問題です。

しかし、この原子力発電所の必要性の問題は、日本のエネルギー問題の根本的なものではありません。そもそも日本が抱えている大きなエネルギー問題から派生している一つの問題なのです。

日本のエネルギー問題の根っこは1つ

原子力発電所の問題以外にも、エネルギー問題と言われるものは沢山あります。例えば、再生可能エネルギーの普及率に関することや、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの抑制、石炭を使った発電所を使いつ続けていることに対しての海外から批判など。

これらの問題は耳にすることはあっても、自分には直接関係が無いと感じてしまう方も多いのではないでしょうか。確かにテーマが大きすぎて、想像もできず自分ゴトとして理解することは難しいです。それに、理解をする為にはそれなりの専門的な知識が必要にもなります。

でも一つ一つの問題を深く見ていく必要はありません。個別の難しい問題というのはその道の専門家が必ずいますので、その道のプロに任せてしまえば良いのです。私たちが考えなければならないのは
「なぜ、そのようなエネルギー問題が発生しているか」という、日本のエネルギー問題の根っこの部分です。

実は、様々な日本のエネルギー問題の多くを辿っていくと1つの大きな問題にぶつかります。それさえ理解すれば、エネルギーについて詳しくない人でも日本のエネルギー問題を自分なりに考えることもできますし、問題解決のためにアクションに起こすことができます。

1つの大きな問題というのは
「日本は海外から輸入した化石燃料で、エネルギーを作り出している」ということです。

そして、解決策はこの真逆で
「化石燃料以外で、日本でエネルギーを作り出す」というシンプルなものです。

しかし、言うは易し行うは難しで、この問題を解決するには数十年単位の時間がかかり、長期的に取り組んでいかなければなりません。まずは、この根っこになっている大きな問題についてみていきましょう。

原油だけでも年間約5.6兆円を外国に支払っている日本

電気、ガス、ガソリンなど私たちが使うエネルギーの多くは原油、石炭、天然ガスなどの化石燃料から作られています。化石燃料というのは、その名前の通り微生物や植物などの死骸が何億年という長い時間をかけて化石となり、そこから変成されたものです。ガスや石炭を燃やす事で電気を作り出したり、石油から作られたガソリンを燃料にする事で自動車のエンジンを動かすことができます。

私たちの生活に欠かすことのできない化石燃料ですが、日本ではそのほとんどを海外からの輸入に頼っています。自国のみで作られたエネルギーがどれくらい自国で使われているかという指標に「エネルギー自給率」というものがありますが、日本のエネルギー時給率は9.6%(※2)と非常に低く世界で35位という順位です。ちなみにアメリカのエネルギー自給率は世界5位で、92.6%です。

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同じような日本の自給率の指標に「食料自給率」という言葉があります。これは日本国内の食料消費が、国産品でどの程度賄えているかを示す指標で、2018年の日本の食料自給率は37%という非常に低い数値です。

朝昼晩の3食の食事のうち、2食は日本以外で生産された食料品を食べているという計算になります。普段の買い物では国産の食料品を買っているつもりかもしれませんが、例えばパンの原料となる小麦、料理に欠かせない油、牛や豚などを育てるためのエサとなる飼料などの多くは海外から輸入されています。私たちの気にしていなところで、間接的に海外からの輸入に頼っていて、それが食料自給率の低さに繋がっています。

みなさんは普段の買い物で食料品が同じ量、同じ品質、同じ値段であれば日本産(made in japan)のものを選ぶのではないでしょうか。食料だけでなく洋服や日用品などでも日本産の方が品質が高く、自分のサイズに合うという理由で選んでいる方は多いはずです。

エネルギーにも同じことが言えると思います。私たちが使う身近なエネルギーの電気やガス、ガソリンなどは品質に大きな差はありません。しかし、日本で多く使われる化石燃料の90%以上を海外からの輸入に頼っている現状では、日本産の選択肢は無いに等しいと言ってよいでしょう。

エネルギーの輸入品目で特に注目すべきは原油です。原油は、プラスチック製品などの原料にもなりますが、電気やLPガス、石油などの熱源や、ガソリンや軽油などの動力源に大半が使われています)。(※3)

輸入した原油のうち熱源と動力に使用される割合は約80%に達し、日本のエネルギーとして使われる比率は非常に高くなっています。日本の原油輸入額は、2017年度で約7兆円(※4)ですので、原油だけでも約5.6兆円という金額が電気やガソリンなどのエネルギーを作るために、海外に流れていることになります。

原油の輸入は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東エリアへの依存度が約88%と非常に高くなっています。中東から輸入する原油は、タンカーで海上輸送し日本まで運んでくる必要があります。世界地図を見ていただくとわかりますが、これらの中東各国から海上輸送をする場合には、ホルムズ海峡という国際情勢が緊迫しているエリアを航海する必要があります。有事の際には輸入ができなくなることや、輸入量の減少による原油価格が高騰というリスクを抱えており、私たちの生活や日本の経済がおびやかされる可能性が内在していると言えます。

また、原油以外の化石燃料も海外からの輸入比率はは高く石炭が99.3%、天然ガスは97.5%となっており、日本のエネルギーの海外依存率の高さが伺えます(※4)。

次回へ続きます

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