院つくりは理念つくりからはじめよう
さて、これからは実際的な整体院の作り方について説明していきます。
これから整体院を開業しようという人はもちろん、すでに開業している人にとっても大事な話です。
整体院つくりの第一歩は「理念」つくり。参考にしてみてください。
理念とはどういうもの?
「あなたの院の理念はなんですか?」と訊かれて、「私の院の理念は○○○○です。これはこういう想いをあらわしています」と即答できますか。多分ほとんどの人は「えっ?ちょっとまって」と焦るのではないでしょうか。
「理念」と書くとちょっと難しく、堅苦しく感じます。そしてたじろいでしまいます。たじろいだまま深く考えることなく、やり過ごしてしまうかもしれません。でも本当はそれが問題なのです。
パナソニックをつくった経営の神様、松下幸之助さんは「はじめに想いありき」という言葉を残されています。経営のはじめは想いから、とおっしゃっているのですね。
松下幸之助さんの言う「はじめの想い」、これが理念です。これから経営を始めるにあたって「どんな気持ちで事業をしていくか」「何を大事に仕事をしていくか」「仕事を通して何を実現したいのか」このような想い、それが理念なのです。
なぜ整体院経営には理念が必要なのか
私は整体院経営においても「はじめに理念ありき」だと考えています。
正確に言えば「まず理念をつくり、理念を技術や接客などの形にしていくことが経営」そのようにとらえています。(この点、詳しく知りたい方は『整体院経営百科』を参考ください)
なぜ理念をはじめに立てなくてはならないのか。それは経営は常に「ブレとの闘い」であるからです。
整体院経営をしていてもいつも順風満帆とは限りません。良いときも悪いときもあります。経営が好調の時はあまり難しくありません。その波に乗って自信をもって進んでいくことができます。
問題なのは経営が不調な時です。何をやってもうまくいかない。施術メニューを作っても反響がない。SNSや広告を出しても反響がない。お客さんがどんどん減っていく。そんな危機は何度でも訪れます。
そんな時に多くの経営者は心に迷いが生まれます。今までのやり方のままで良いのだろうか。知り合いの院長から聞いたやり方に変えるべきじゃないだろうか。もっと値下げした方がいいんじゃないだろうか。立地が悪いせいかもしれないから、移転した方がいいかもしれない。
と言うように、どんどん自信が無くなり疑心暗鬼になっていくと、大体経営はうまくいかなくなります。いろいろ手当たり次第に対策を打ちまくって、ふと我に返るのです。「自分は何をやりたかったんだ?」と。
こういう経営のブレは大なり小なりみんなあるものだと思います。そこをどう乗り越えるか、その時に運命を分けるのが「理念」です。
理念がしっかりしている経営者は、さまざなま対策の中でも「これは自分の院の理念にあっている。これはあっていない」と分別することができ、結果的に迷走や混乱、判断ミスを防ぐことができます。
理念とは原点、立ち返る場所であり、あなたをブレから守るご意見番にもなってくれるのですね。
理念に共感する人が助けてくれる
理念を持つことは、もう一つ大きな意味を持ちます。それはあなたの理解者を集め、助けになってくれるということです。
「人は一人では生きていけない」と言います。また「経営者は孤独」とも言います。どちらも的を得た言葉だと思います。
世の中の成功した経営者の中には「この成功は自分の才能と努力の成果だ」と言う人がいますが、たぶんそれは勘違い。
その成功に至るまでには、何人、何十人、もしかしたら何百人もの人たちの助けがあったに違いありません。
完全に一人でできることなどほとんどありませんから。
一方で経営者は孤独です。社長や院長は社員やスタッフに偉そうに指示をしてさぞ快適だろうと周りには見えますが、決して快適ばかりではありません。
大事な決断をするとき、社員には相談できない決断を迫られることもきっとあります。そんな時社長は一人です。
悩むときに一緒に考え、一緒に責任を背負ってくれる社員や仲間がいればどれだけ救われ、助けられるでしょうか。
孤独になりがちな経営者にとって、共に悩み、考え、働いてくれる仲間は宝のような存在です。そのような仲間をぜひとも作っておかねばなりません。そのために必要なのが「理念」なのです。
理念をつくり公言すること。「私はこんな整体院をつくりたい」と常日頃から周囲に想いを発信しておくこと。そうすれば中には「それ、いいですね」「私も一緒にやらせてください」という人が出てくるかもしれません。そうしてあなたの仲間が増えていくのです。
理念を作り掲げること。それはあなたを孤独から救いあげる「仲間」の発掘につながるのです。だから理念は大事なのですね。
理念の作り方
では実際に「理念」を作ってみましょう。
でも実をいうと理念を完成させるのはちょっとコツがいる、というよりもちょっと難しいものです。なぜなら自分の本当の奥底の「想い」を引っ張り上げてこなくてはならないからです。
だから一度できた、と思っても、しばらくしてみると「うーん、なにか違うなあ」ということになり、また考え直しです。そしてだんだんと泥沼にはまっていくこともよくあります。
そんな時は専門家の助けが必要になるかもしれませんが、ここではまずはじめの理念を作ってみましょう。まずはシンプルにこのようにつくりましょう。
「私の整体院は○○の実現を目指します」
この○○を考えてみてください。これだ、というのが見つかればそれを理念にします。
例えば以下のようなものがでるかもしれません
私の整体院は「即効的効果」の実現を目指します
私の整体院は「腰痛解消」の実現を目指します
私の整体院は「お客さんの笑顔」の実現を目指します
私の整体院は「ストレス解消」の実現を目指します
などが挙がるかもしれません。これがはじめの理念になるのです。
「なーんだ、それだけのこと?」と思うかもしれませんが、これが大事なのです。
というのは、想いを言葉にする、形にすることに意味があるからです。形にすることで、自分の想いを再確認できる。「なんか違うな」と考えなおしたり、「こっちの方がより自分の気持ちを表しているかも」と考えを深めるきっかけになるでしょう。自己理解が進むのです。
さらには周りの人に自分の想いを確認することもできる。そこに共感と協力が生まれるのです。
逆に形にしないままだと、「この院長は何がしたいんだろう」と周りに思わせてしまい、共感も協力も得られなくなってしまうのです。
理念は定期的に見直し完成させよう
理念が定まったら、理念をもとに「物件・内装」「施術メニュー」「接客マニュアル」などの院づくりを進めていきますが、その方法についてはまた次回以降に解説していきます。
ここでは最後に「理念の見直し」について書いて終わりにします。
一生懸命考えて生み出した理念ですが、定期的に見直しをするようにしましょう。決して「一度決めたら変えない」などと頑固にならないでください。
なぜかと言えば、理念は実際に仕事をしていく中で変化していく可能性があるからです。
開業1年目では見えなかったことが3年、5年と続けるうちに見えてくることがきっとあると思います。そういうときは理念も変え時なのです。
また初めに考えた理念が、あなたの本当の想いを反映していないことも多々あります。前述の通り「本当の想い」を見つけるのはそれなりに難しいものです。
実際に私が「和合一致」という理念を見つけたのは、開業してから5年以上たった時でした。何度も作り直してやっとたどり着きました。自分の本当の想いというものを見つけ、言葉にする、それは思うより大仕事なのですね。
はじめに理念ありき
今回のまとめです。
まず一度、自分なりに理念を作ってましょう。自分が整体院を経営する上で実現したいことを言葉にして見てください。
「これだ」という理念が見つかったら、1日1度でもいいから口にして見る。仕事の合間や施術に入る前に、心の中で理念を唱えてみる。そうすると施術にもより気持ちが入ります。
そういう日々を過ごしていると、「ちがうな」「こっちのほうが良いな」という新しい理念が見つかることがあるかもしれません。その時は理念を変えればいいのです。そうして仕事と理念をだんだんと更新していくのですね。
理念が磨かれれば磨かれるほど、経営に力強さが出てきます。本当に力のある院は、理念がしっかりしているものです。
ちなみに『整体院経営百科』では、理念とは<私の経営が導く未来>であるとして、より詳しく解説されていますのでどうぞご参考ください。
整体院づくりは理念を定めるところからはじまります。
三宅弘晃
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