見出し画像

リラクゼーションスタッフが続かない理由

今どきの整体事情を知るための市場調査第2弾。(前回の様子はこちら↓)

続けざまに飛び込んだのは街のリラクゼーションサロン。揉みほぐしとオイルマッサージを主体とするメニュー構成で、揉みほぐし料金は30分2000円、60分3000円。30分のコースをお願いした。

リサーチしたサロン近くの大阪十三の商店街。それなりに活気のある街なのでリラクゼーションのニーズもありそう

受付で見かけたスタッフは3人で皆20代くらいの女性。空間の雰囲気もスタッフの接客も上品で、料金も高くないので人気がありそう。

情報管理は大丈夫?

「あれっ」と思ったのは受付のタブレット。住所や連作先など個人情報をすべて登録して完了ボタンを押すと、登録された顧客リストが画面に表示される。20人ほどの来店者の名前と年齢の一覧表で出ていて、たぶん名前をタップするとそれぞれの個人情報が見れてしまうのでは?
もしかしたらロックがかかるのかもしれないけれど、それでも本名と年齢だけでも他人に見られる(身分証も確認されるので嘘はつけない)のは気持ち悪い。今どきの情報管理としてはアウトではないか。

施術スタート

そんな心配をしながら個室に案内され、揉みほぐし30分がスタート。

直前に行ったリラクゼーションマッサージ店とは違い、挨拶も丁寧、セラピストが若干緊張気味ながらも笑顔もあり良い感じ。部屋も個室で清潔感がありこれも良い感じ。

肝心の施術。とにかく丁寧。手の触れ方、移動の仕方、力の抜き差しそれぞれ基本ができているので安心して身体を任せられる。特別すごい施術という訳ではないが、わずか30分2000円でこのように人様に丁寧に癒してもらえるのはぜいたくな時間だろうと改めて思う。女性にも人気があるだろうが、男性需要もかなりありそうだ。

話好きな隣の男性客

と思っていたら、まさに男性客が隣の部屋に入ってきた。個室だけれど仕切り壁の上部が開いているのでお互いの会話は筒抜けだ。(空いているのは空調の問題と防犯上の理由もあるだろう)

お隣は話しの内容からすると40歳くらいの男性か。この店には昔に通っていたが担当セラピストがやめてしまったので来なくなり、今日は久々にきたと話していた。(聞きたくなくても全部聞こえてしまう)

とにかく自分のことを良くしゃべる男性だ。セラピストは「へえーそうなんですね」「すごいですねー」など上手に相づちを打っている。そうすると男性客はますますおしゃべりが加速していく。

まあ若くてきれいな女性を独占して話を聞いてもらえたら男は嬉しいよね。しかも身体をほぐしてもらいながらならさらに幸せ。小まめに通うのもわかる気がしたお隣さんの会話だった。

サロン研修とスタッフのその後

さて私の方にレポートを戻そう。

隣の男性と同じく私も色々話をした。と言っても私は取材だから質問して聞く方。「どのくらいのキャリアがあるの?」「どこで手技を習ったの?」「どうしてこの仕事をしようと思ったの?」「将来の目標みたいなものはある?」などなどをなるべく怪しまれないように、雑談風に聞き出していく。

どうやら彼女は施術に入ってまだ3か月らしい。前職はアパレルの販売業をしていて接客はそこで鍛えたらしい。転職するときにエステか整体か迷ったけれど、エステに行った友達たちの給料を聞いたらとても一人暮らしでやっていけないと。整体ならばぎりぎりやっていけると判断したと。このサロンは初めに無料で研修を受けさせてもらえるのでここに決めたと。

そんなことを話してくれた。

「将来の目標はあるの?」と聞いたら今はまだないと。「ずっとここで働いていくかも?」と聞いたら「そうかもしれないけれどセラピストがどんどんやめていくのでわからない」と。
「どうして辞めるの?」と聞きたかったけれど、隣の同僚にも聞こえているだろうからそこは聞かず、「気持ちよかった」とお礼を言い会計を済ませて外に出る。

一軒目のリラクゼーション店で下がっていたテンションがかなり復活。まだキャリアが浅かったからかもしれないけれど、やっぱり丁寧に一生懸命尽くすことは大事だ。そういう気持ちは手を通して相手に伝わるものだと思った。

リラクゼーションの無形の価値

長年整体をしているとわからなくなるけれど、整体やリラクゼーションにはさまざまな価値が内包されている。
まず一人の人間の時間や労力を自分の為に貸し切りにできるという贅沢。これは何よりの価値だろうと思う。個室であればさらにその贅沢は増すがそうでなくても、手間をかけてもらえるだけで充分贅沢だ。

しかも話し相手にもなってもらえる。隣の男性のようにこんなに丁寧に話を聞いてもらえることなど普段の生活ではなかなかないだろう。これは贅沢であり快感だろう。
私たちプロはとにかく技術で価値を出さないとと思いがちだが、既に貸し切りで相手をするだけでも相当な価値を提供しているのだ。

なぜこの仕事を辞めるのか

その上で気になるのは「この店は辞めていく人が多い」というセラピストの一言だ。きっとそれはこの店に限った話ではなく、どこでもありふれた話だろう。でなくては整体学校の卒業生の為にあちこちのサロンの求人があるはずがない。どんどんやめるからどんどん採用するのだ。実際にこのサロンも常に求人をしているとのことだった。

こんなに研修もしっかりしていて、空間も綺麗で、一人暮らしできる程度のお給料をもらえて、それでもやめる人が後を絶たないとは。
もちろん店をやめると言っても他の店に行くだけかもしれないが、セラピスト業、整体業自体をやめる人も一定数いるはずだから、その点は引き続き検証しなくてはならない。

三宅が考えたこと

この問題はまだまだリサーチが必要だろうが、今の時点で私はこう思う。ここの仕事が長く続かないのは「頑張りがい」が無くなるからかもしれない。

例えば私が初めて整体の世界に入り、ここのスタッフとして働き始めたとする。そして隣の男性の接客をしたと想像する。毎日毎日このようなお客さんの自分語りに付き合ったり、愚痴を聞き続けたりしながら施術を続けるとする。
それが半年続いたとする。そうなるとどうなるか。たぶん嫌になると思う。

それはなぜか。

それは自分が磨いている技術は、身体的な疲れや不調を取り去るためのものだからだ。たまりにたまった疲労を一生懸命ほぐして流していく。重い身体を軽くしていく。

しかしどんなにすばらしい施術をしても、単なる話し相手、愚痴きき相手で終わったらどう思うだろう。きっとつまらないだろう。どれだけ人気が出ても嬉しくないだろう。容姿とか接客とかで認められるより、技術で認められたい。それが整体師としての本能だから。

そんな本能を満たすような客層じゃないのかもしれない。1人のお客さんしか見ていないからとても断定はできないが、そういうこともあるんじゃないだろうか。

今日のまとめ

今回の新人セラピストさんには整体への適性も感じた。だからこそ今後が気になる。半年でやめてしまうのももったいないし、惰性で続けるのももったいない。セラピストとしてどう頑張りがいを見つけていくか、自己成長をどう楽しめるか、そんな整体師の働き方について真剣に取り組みたいテーマだと思った。

リサーチは続く。お楽しみに。

三宅弘晃


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?