見出し画像

赤い靴

第一回公演
3/28 at かつおの遊び場(アーカイブ動画)
https://twitcasting.tv/catooobar/movie/674632846(1時間30分ごろからよあけのばんの公演がはじまります。)

第二回公演
4/10 at 中之島Love Central

画像1

演目【赤い靴】

―赤い靴 履いてた 女の子 異人さんに 連れられて行っちゃった―

本日の演目である『赤い靴』。『赤い靴』と聞いて日本の皆さんが思い浮かべるのは、この曲ではないでしょうか。こちらは作詞家・野口雨情が書いた詩です。
完成の翌年、作曲家の手により曲が付けられたことで、童謡として親しまれるようになりました。

(―横浜の はとばから ふねに乗って 異人さんに 連れられて行っちゃった―)

しかし、本日のお話はこちらではありません。

日本の童謡である『赤い靴』と、クリスチャン・アンデルセンの書いた童話の『赤い靴』。
こちらの2つは全く違った、なんら関係のない物語です。
本日焦点を当てるのは、みなしごのカーレンが赤い靴に憧れ続ける“童話”の方の『赤い靴』。童謡の方の『赤い靴』は一度しまっておいてください。
それでは、皆さん、まるで眠るように肩の力を抜いて…、生きづらい昨今ですが、今宵はリラックスをして楽しんでいってください。

→『楽園のかいじん』

この物語の主人公はカーレンと言います。
カーレンは貧しい家庭に生まれ、赤い靴はおろか、生活をするお金もありません。雨の日も雪の日も毎日毎日笑顔で働いているのを町の人たちはみんな知っていました。

「ねぇ、カーレン。あなたはどうしてそんなにも働いているの。」

そう聞けば、いつも同じようにカーレンが答えます。

「わたしのお母さんは治すのが難しい病気なのよ。毎日ベッドで寝ているの。だからね、わたしが働かなくっちゃ。お母さんのことを思うと、わたしの疲れなんか 大したことじゃないの。」

そんな健気で優しいカーレンに、さらに不幸が訪れます。
カーレンはまだ子どもだというのに、病気のお母さんは亡くなってしまったのです。あまりにも可哀想なカーレンのために、町の人たちはお葬式を開いてあげることにしました。
棺を閉じる時、カーレンはやはり笑顔でお母さんを見送っていました。

「そしたらお母さん、おやすみなさい。」

そう言った時に、大きな目からたくさんの涙が溢れ出しました。

→『おやすみなさい。』

お葬式の後、カーレンがどうなったかというと、意外や意外、かつての生活よりもうんとよい生活をしているのでした。美しい服、バランスの取れた食事、ふかふかのベッド…。

そんな裕福な暮らしをさせてくれていたのは、いつもカーレンの隣りにいるあのおばあさんです。
彼女は町のはずれに住むお金持ちの独居老人でした。

母親の亡くなった日、ひとりぼっちでわんわん泣いていたカーレンを気の毒に思い、その日のうちに声をかけました。

「カーレン。家族がいないのならわたしの家に来るといい。わたしも、ひとりぼっちなんだ。」

そこから数年、おばあさんとの暮らしは、カーレンを一変させました。いまや毎日贅沢三昧。
服や靴だって、ぴかぴかでひらひらできらきらな物をとっかえひっかえ!
子どもの居なかったおばあさんも、たくさんの愛情とお金をカーレンに注ぎ続けました。

そんなある日の夕暮れ。カーレンは運命の出会いを果たします。
きょうは礼拝に行く時に履く黒い靴を買いにきたのですが、靴屋のショウウィンドウで目が合ったのは、ぴかぴかに光るエナメルの赤い靴。
カーレンはとうせんぼされたように動けなくなりました。

「おやおや、カーレン。目を奪われたしまったんだね。あれは黒い靴かい?」

目の悪いおばあさんは、カーレンに尋ねます。あれは黒ではありません。でもどうしてもあの靴が欲しい…。そして、カーレンは赤い靴を指差して言いました。

「ええ、すぐに買って帰りましょう。あの“黒い靴”を。」

→『ゆうわくの帰路』

いよいよ礼拝の日。カーレンはもちろんあの黒い…、いえ、お世辞にも黒と言えない真っ赤に光る靴に足を入れました。嬉しそうにかかとをカンカン鳴らしながら教会の中を歩くと、誰もがカーレンの足元を見てないしょ話を始めます。

『うふふ、あの人もあの人も見とれちゃってるわ。みーんなわたしの靴の虜ね。』

勿論その後、神父様から話を聞いたおばあさんにこっぴどく叱られましたが、カーレンは赤い靴を脱ぐ気はさらさらありませんでした。

あの日を境に、赤い靴の虜になったのはカーレンの方。雨の日も雪の日も、礼拝の日もお葬式の日も、おばあさんが重大な病気にかかったと聞いた日も、赤い靴に足を入れてはカツカツ歩きくるくる踊り、町の人たちに見せびらかすように歩き回りました。

そんなカーレンを見て、誰もがこそこそ話をする中、一人の老人がカーレンに話しかけました。

「これはこれは、町外れの豪邸に住んでいる赤い靴のお嬢さん。おばあさんの看病はいいのかい。遊んでばかりいると、神様に悲しい呪いをかけられてしまう。」

赤い靴を褒められたと思ったカーレンは気持ちが大きくなり、にこにこと嘘をつきました。

「ええ、あの人はぐうたら寝ているだけ。どこも連れて行ってくれやしないわ。だから、わたしは今日も赤い靴を履くことくらいしか楽しみがないのよ。」

こんな話し振りには老人もびっくりです。

わたしたちが2曲目を歌っていた頃の、あの可憐で儚げな少女は…どこへさらわれてしまったのでしょうか。

→『市場』


と言ったのも束の間。なぜかいきなりカーレンは森の中へとステップを踏み、踊り始め、キャーと叫ぶ声だけを残して、老人の前から姿を消してしまいました。
察しのいいみなさんはなんとなくお気づきでしょうが、この老人こそが人間に化けた神様だったのです。

さて、神様にも嘘をつき、卑しい態度を取ったそれからカーレンがどうなったかというと…この踊りは一種の罰ですので、一日が過ぎたくらいでは止まることなどありませんでした。

今までと同じように、雨の日も雪の日も、礼拝の日もお葬式の日も…ですが、悲しいかな、こんどは自らの意思で止めることの出来ない少女はずっとずっと踊り続けました。

その間に時間は進み、町外れの豪邸からは豪華な棺桶が運び出されて行き…。
そう、あれはカーレンを育ててくれたあのおばあさんなのですが、それを見かけたところで踊り続ける罰を受けているカーレンはお葬式にも参列できません。

さすがに涙が溢れて止まらなくなるほど悔やんだカーレンは、木こりの隣りを通り過ぎる時、大きな声で叫びました。

「わたしはとても愚かなことをしました!その罪でこうして踊り続けているのです。もう十分反省をしました。その斧で、わたしの脚もろともこの忌々しい靴を切り落としてください!」

それを聞いた木こりは脚に向かって斧を振り下ろし、カーレンはどしんと尻もちをつきましたが、切り落とされた赤い靴は足だけの姿でまだまだ踊り続け、森の向こうの方へと姿を消しました。

自分の足も、赤い靴も、大切な人すら失ってしまったカーレン…。そこでやっと自らの愚かさに気づき、眠れなくなるほど深い後悔をしました。そして、懺悔を始めました。

→『真夜中に迷う中』

さて、今日の『赤い靴』のお話の主人公はカーレンという少女でした。
貧乏な分、健気に育った彼女は、いつの間にか、一心に注がれた愛に気を大きくし、傲慢でわがままで愚かな女性に成長してしまったのです。
しかし、冒頭、舞台袖で控えているはずのカーレンにも聴こえるようにわたしたちは歌いました。

―よくばったら よくないから よくよく考えて―

カーレンはわたしが何度も口にしたこの歌詞を…きっと、聴いていなかったのでしょう。

そう、聴いていないことはよくない結果を招くことがあります。例えば、この『赤い靴』でいうところのカーレン。彼女は、自らの足や、靴や、大切な人までも失ってしまうのですから代償は大きいですよね。

よあけのばんでいうと、どんなことが「よくない」のかと言いますと…我々は毎回新しいことをやっているのですから「見逃してしまう」という結果が待っているわけです。

では、よく聴いてくださいね。まず、5月の公演。この日はコノハコトノハとのツーマンライヴ、そしてコラボCDの発売を兼ねたイベントです。6月の公演。これは、伝統芸能が行われる「山本能楽堂」でのイベントとなります。そして、7月、9月、10月…と関西内外のイベントが決まっているのですが、すべてただのブッキングライブではありませんので、これを聞き逃しているとかなりの大損な訳です。

そして、おまけにもう一つ言いますと、これから演奏する最後の曲は、5月に発売されるCDに収録される曲だってこともあるわけです。

→『描きかけの世界』(3/28公演)
→『Over the moon』(4/10公演)

画像2

2021.3.28 at 道頓堀かつおの遊び場
共演 ヘテロズ / まえざわけんいち

2021.4.10(sat) at中之島LOVE Central
中之島ミュージックマルシェ Vol.51
共演:きものやん / ギターパンダ / エレナファウンデ / ショーン(from irodori)

公演予定
2021.5.2(sun) @新大阪SlowBird
split album「ツクルヒトタチノカタチ」発売公演
演目【(鋭意制作中)】
共演:コノハコトノハ
展示:中島尚志
open 18:30/start 19:00
入場料 2000yen(+1drink)

2021.6.20(sun) @山本能楽堂
演目【金魚とカラス】
語り(歌唱) よあけのばん
江戸小唄 白扇夕樹夫
歌唱 きものやん mode 天
HBB 菅雄登 & KenTa
Piano 植月茉奈
start 19:00
入場料 4000yen

2021.7.29(thu) @北浜雲州堂
眠りネズミのお茶会 VOL.3
「クジラは夢をみるか?」
演目【クジラは夢をみるか?(仮)】
共演:ヤマネヒロシゲ with 井上真紗子:ライブペイント
open 18:30/start 19:30
2000yen(+1drink)

2021.9.18(sun) @緑橋studio sizma
Art experiment LIVE -En-
演目【En】
空間展示:百合優隆
open /start
入場料 TBA

よあけのばんは、大阪で世にも小さな音楽劇団として活動しています。どこかで公演を見ていただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします。