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ぼくらのひみつきち

空間 絵描きdai
演出 よあけのばん

わたしたちの町には一本の川が流れていて、、、と始めてみたけれど、桃が流れてくるわけでも、河童が住んでいるわけでも死体が隠されているわけでもない、よくある川です。河原で花火をしたり、河原で星を数えたりできて、始まりも終わりもない、ただただ、感情も風景も流れて行く、川。ありふれた日々変わりゆく景色ですが、そこには大事な記憶があって、今日もあなたは描き続けているのでしょうか。

→描きかけの世界

「眠たくなった」とあなたが言って、「子守唄を歌ってあげるよ」ってわたしが思っています。「愛してる」って言葉がインスタントに使われる少女漫画みたいなシロップに浸かって溺れて、おはようとおやすみを繰り返すだけの毎日だなんて、ほんと、嫌だわ。

→女生徒
→各駅停車で会いましょう

「変わらない美しさを求めているんだよ」って言ったあなたは変わらないままでわたしの中に在り続けています。あなただけが変わらない世界にいるだなんて愛おしすぎるから、わたしは変わりゆく美しさを見ていくことにしようかなと思います。この留まることのない空を描き続けていれば、何か一つでも分かるのではないかなって思います。

→変光星

ジリジリとアスファルト燃える朝に鳴いていたセミの声も、チリチリと瓦屋根を揺らす風鈴の音も、随分と遠くなってしまいました。あの日、車窓に映したあなたの面影も、わたしは覚えています。そしてあの日が在ったということは、くたびれた向日葵やバケツいっぱいの線香花火が教えてくれているのです。

→サマータイムマシンブルース

夏が通り過ぎて、月がきれいな秋の夜でした。大切なものを思い出すように、大切なものを失ってしまうように、秘密を共有することはとても難しい事なのだと気がつきました。だから、わたしたちはたくさんお話をして、たくさん共有の記憶を作って、たくさん答えあわせをしましょう。

→シャボンの惑星

本当に月がきれいでしたから、何かを伝えられる言葉などなくて、ただ黙って川の流れを見るほかありませんでした。でも、その永くも感じる短い時間が幸せで仕方がありませんでした。

→Over the moon

一つの映画だけを見させられているようでした。その世界はあなた自身を強くしてくれましたが、失くしては自分を保てない程に「あなた」を蝕んでいきました。孤独でした、暗闇でした、幽霊が踊りました、雨が降り続けて、届かない手紙は降り積もり、出口のない絵に囲まれた部屋でした。だから手を取り抜け出して、本当の幸いを得ようとそう思ったのです。わたしは子守唄を歌います。おやすみなさい、雨の、町の、幽霊の、あなた。

〜ぼくらのひみつきちは いろんなところにあって
一つは星の流れる 銀河のような白い川のそばさ〜

木を植える事をやめてしまったクジラも、月の石を食べていた水たまりも、上手に声を出す事ができないSF小説も、みんなみんな眠ってしまった。最終列車に乗り遅れた消しゴムも、レコード盤の上に置かれたサボテンも、少年を思い出している街灯も、、、見えているものは全て「・・・おやすみなさい。」もしかして眠っていたのはわたしのほうだったのかな。

→おやすみなさい。

月の見える糸杉の森の中でかくれんぼうをしました。「そろそろいいかい、見つけてもいいかい」って隠れるつもりのないわたしを探していました。見つけようとする想いが確かにあって、その想っている形に向かっていきました。今からずっと眠らないように、全ての歌が一つのハッピーエンドへ向かうように。こっちにおいでよ早くおいで、今ならきっと笑えるからさ。

〜ぼくらのひみつきちは いろんなところにあって
一つは花の隠れる 月明りの綺麗な森の中さ〜

→もりのかくれんぼう




よあけのばんは、大阪で世にも小さな音楽劇団として活動しています。どこかで公演を見ていただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします。