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赤い靴が履けない話


私の職場にはきちんとした制服というものがない。
けれど決まりはあるのです。
上は白の襟付きのもので、下は基本的には黒のパンツかスカート。
会社から支給されるわけではなく、個々にそれを用意して着用しているので、傍目から見れば制服だけど実は私服、けれどプライベートでそれを好んで着るわけでもないのでいわゆる仕事着です。
って、別にそこに関して不満があるわけではなくて。

さっき言った「基本的には」この言葉って結構曖昧だよなぁって思うわけなのですよ。
個人の受け取り方の問題でもあるわけだし。
実際働いて周りの人たちを見てみると、みんな上はちゃんと白の襟付きなんだけど、下は意外とそうでもなくて。
カーキ色のパンツを履いている人もいれば、ドット柄のゆるっとしたネイビーパンツやベージュのワイドパンツみたいなのを履いている人もいて、上の服のようにがっつり統一されてはいない様子。

最初に制服の説明を受けたときに、靴に関しても「あまり華美でない動きやすいものを」と言われたので、白いスニーカーを履いている私。
周りの人たちも大抵の人はスニーカーだけど、バレエシューズや革靴、黒パンプスの人などもいて、それぞれ。

よく聞くオフィスカジュアルもそうだけど、「常識的な範囲内で、業務に合った服装を」これって、周りを見て空気読めよって言われてるのと似てるなぁって。

タイトルにある「赤い靴」は、ピカピカでテッカテカの真っ赤なピンヒールなどではなく、ただの赤いスニーカーです。(ちなみにコンバースのハイカット)
これ、業務的にも周りの雰囲気としても、履いて行ったって何も言われないと思うんですよ。っていうか、誰もそのことに気付きすらしないと思う。

でも、私は履けない。

もしもそれで注意されたり、常識のない人だと思われてしまったら。
そういう気持ちが、少しでも心の底にあるから。
人の中から弾かれたくなくて、目立つことも苦手。
私は思っている以上に臆病で、気にしぃで、そして見栄っ張りだと思う。
注意されたら、自分を全否定されたような気持ちになって必要以上にへこんでしまうところがあるし、それを結構引きずるめんどくさいタイプ。

要するに、自意識過剰なんです。
誰も自分のことを気にしていないのに、どう見られているのか気になってしまう。
すべての人から好かれようだなんて無理なことだし、思ってもいないけど、出来れば嫌われたくはないし、それをいちいち確認して自分を安心させたくなる。
ここに存在してて大丈夫ですかね?私。ってな具合に。

仕事に行く前の玄関で赤い靴が目に入るたびに、今日は履いていこうかなあと迷って、結局ボロボロの白いスニーカーを履いて行っちゃう。(そっちの方が恥ずかしいだろうと思うのに)
私が今の職場で働きはじめてからまだ半年経っていない、というのも理由のひとつかもしれないし、ローカットなら履いていけたかも?なんて、本当に数センチくらいの些細なことを日々気にしながら生きてます。

赤い靴、履いていけたら自分の中のなにかが変わるかしら。
いや、変わらないかなぁ。

目の前の大きな水たまりをジャンプしてみたくなるような、そんな気持ち。

失敗しても、服や靴が少し汚れるだけで怪我なんてしないはずなのにねぇ。

跳び越えても、越えられなくても、
汚れてもケガしても、
水たまりがあることすらも、
私以外には誰にも見えない。

だけど多分、私はあしたも赤い靴を見て少し迷うんだろうな。


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