衝撃のジャワ
「じゃあこの、ビーフジャワカレーください」
オーシャンキッチンというその名の通り、窓から視界いっぱいの広い広い海が見えるレストラン。あいにく天気は曇りで、その見渡す限りの海は曇り空の色を映して濁って見えます。
キャンプ帰りの眠気と疲れをどさっと肩に乗せたまま薄っぺらいメニュー表をぼーっとながめます。どこか既視感のあるファミリーレストランのようなメニュー。もう16時を過ぎていて遅すぎる昼食に何を食べたいのかもわかりません。
むかいに座った友達はオムライスに決めたようです。オムライスってなんだかほっこりしたい時に食べたいような気がするのは私だけでしょうか。
今朝方キャンプのために借りたレンタカーにトラブルがあって(事故とかではありません)、車の免許もなく車についても全くわからない私は、その対応を友達に任せきりにしてしまったのでした。
車がキャンプ場を出発するまで何時間もかかって、ようやく出発したものの、もちろん運転はその友達。自分は赤くなったスマホのバッテリーを気にしながら、いい雰囲気を作ろうと車内のBGMをセレクトしているだけ。本当に頭が上がりません。
結局キャンプ2日目はどこにも寄ることができず、せめて何か食べて帰ろうと海ほたるで車を停めたのでした。
私は昨日の晩、カレーを作ったことも忘れてカレーを注文しました。「ビーフジャワカレー」という名前から滲んだレトロでリゾートな感じに惹かれたのだと思います。
少ししてカレーが運ばれてきました。ライスとは別に魔法のランプみたいな形のステンレスの容器にルーが入っています。それをライスにこぼすようにかけると、一口。
……ん?めっちゃおいしい!?まるでホテルのカレーのようです。スパイシーなのですが、炒めた玉ねぎの甘さなのでしょうか、深みのある味の奥にとても上品な甘さが残ります。
付け合わせも変わっていて、フライドオニオンに福神漬けではなくしば漬け。そのとなりに、フルーティな甘さの謎の液体。それはカレーそっくりの見た目で、てっきり厨房の人が誤ってこぼしてしまったのを、そのまま運んで来たのかと思ったくらいです。
みるみる食欲が湧いてきて私はそれをあっという間に平らげてしまいました。正直期待していなかった分、おいしさも倍です。
再び車に乗り結局また友達にハンドルを握らせると、私はさっきのカレーについて調べ始めました。ああいうカレーをまた食べたいと思ったのです。深みのある上品な甘さに、しば漬けと謎の液体がアクセントになったカレー。
ビーフジャワカレー。「ジャワ」が重要であることは間違いないでしょう。しば漬け、謎の液体、フライドオニオン、上品な甘さ。そのうちのいずれかが「ジャワ」なのか、はたまたそれ全てひっくるめて「ジャワ」なのか。
とりあえず検索ボックスに「ビーフジャワカレー」と放り込んでみると、さっき私が食べたものと全くおんなじカレーの画像が出てきました。さっきのレストランのwebページがヒットしたのかな。そう思ったのですが、それはかの高級ファミリーレストラン、ロイヤルホストのwebページだったのです。
そうです、実はさっきのレストランはオーシャンキッチンという名の皮をかぶった(ほぼ)ロイヤルホストだったのでした。
私は喜びに打ち震えました。ロイヤルホストだったらわりとどこにでもあります。いつでもあの「ビーフジャワカレー」を食べられるのです。
ちなみにオーシャンキッチンに限らず、海ほたる5Fのフードコートは、ロイヤルホストを展開しているロイヤルホールディングスが運営しているようです。
さて、そして私はそれから一週間もしないうちに妻を連れて近くのロイヤルホストを訪れました。もちろん「ビーフジャワカレー」を頼みます。運ばれてきたそれは、数日前に食べたものと全く同じものでした。
しば漬けは本当にしば漬けだったし、謎の甘い液体はチャツネというらしいです。ちなみに「ジャワ」と付いているのはこちらのページを見るに「インドネシア人シェフから受け継いだレシピだから」だと思われます。上品な甘さはやっぱり玉ねぎだったみたい。うーん、おいしい!
どうやらこれはしばらく通ってしまいそうです。
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