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jam

あの目。私を見る目。
あの目を、一体いくつ見てきただろう。
期待を大さじで、諦観を小さじで入れて、強い熱で煮詰めたあの目。
食べたいだけ食べて、もてあまし続けた、冷蔵庫の中でカビを生やしてきっと私を待っていた。

あの黒い眼鏡のなかから、大きな喉仏の内側から、長い睫毛の下から、求めていたもの。わかっていながら何度だってわからないふりをして、実のところ全く分かっていなかった。知っているふりをして軽蔑しながら、一番軽蔑されるべきだったのは私だった。

うねった茶髪を触って、恥ずかしそうに笑う君を愛おしいと思いながら、甘味が口から消されていく。砂糖のようなドロドロした甘さに、もうちょっと浸かっていればいい、そういう盲目さがあったっていい、しかし叶わない、そういう冷たい目を私はしている。

同じ人をずっと愛しく思う自信が無く、それは、人を安易に好きになる自分と激しい衝突を起こした。ずっと愛されていたい自分と軋轢を生んだ。
愛しいと思わなくなっても、きっと君たちが笑っているのを見ていたいとは思うのだろう。それなら、もう、踏み込まない方がいい、甘さは目だけで知ったふりをしていればいい。その美しさを私はみだりに犯せない。

甘味を知らないままで、青いセーラー服の中学生が声も出さずに泣いていた。膨らんだ布団が嫌に大人びていた。
この幼さを守るために、私は何をすればいいのだろう。

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