長編小説『事あるときは幽霊の足をいただく!』をまとめました。
前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真之助視点】 「これはどういうことか説明してくれるか?」 宮下君が机にドンッと両手をついて、詰問口調で責め立てたが、友人A君は椅子の背もたれに体を預けたまま、俯いている。 「待てよ、こんなの誤解だって!」 みんなの冷ややかな視線が友人A君に送られているのを見て、真が椅子を弾いた。今にも噛みつきそうな宮下君と、だんまりを決め込む友人A君の間に体を割り入れる。 「友人Aが財布を盗む
前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真之助視点】 教室に戻る途中の真はぼんやりしていた。 「でさ、オレが思うにクラス全員でLINEグループを作ろうと聖子ちゃんが言ったのは恋の駆け引きなんだよ。ってなるとオレは今試されている状態なわけ。そう思うだろ?」 ポジティブ選手権が開催されたら優勝候補間違いなしの友人A君の発言をよそに、真は「ナイフの芦屋」がよほどショックだったのか、心ここにあらずの状態で、「そうだな」といい加減な
前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真視点】 バスケットコートの中、友人Aは聳え立つ巨大な壁のように立ちふさがっている。彼の長身とガッチリとした体躯に圧倒されて、対戦チームは巨人に睨まれた小人のようにすでに戦意喪失しているのが伺えた。 今ボールを持っているのは友人Aのチームメイトだ。オフェンス、つまり攻める側にある彼は対戦チームのディフェンスを振り切った。 その先には友人Aが待っている。 パスを回せば、確実にゴ
前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真視点】 五時限目の体育はバスケットボールだった。パスやカット、シュートの練習が一通り終わったあと、チーム戦が行われた。 体育館を半分に区切ったネットの向こうでは女子も授業を受けているため、ほとんどの男子は恰好つけることに躍起になっている。 恥ずかしながら、オレもそのひとりで、成瀬さんに注目されたいばかりに、「ヘイヘイ!」と掛け声だけは積極的だ。 というのも、プレーの方は掛け
今まで書いた短編のまとめです。
「実はわたし、あなたの孫なの。だから養育費をちょうだい」 目の前に佇む少女があまりにも突拍子もないことを言うから、あたしはまず自分の体調を疑った。 頭を強く殴られでもし、記憶がまるごと喪失したのだろうか? それともついに認知症を患ったのだろうか? 頭の中で自分がどこの誰べえであり、生年月日、今日の日付、今いる公園の住所を難なく諳んじられるのを確認してから、そっと安堵の息を吐き出した。 それから回遊魚のように右に左に泳いでいる少女の瞳をじっと見つめる。