きたおおじ よあけ

生と死、カタルシスを軸としてマイペースに書いています。目標は物書き、エルレのライブ参戦…

きたおおじ よあけ

生と死、カタルシスを軸としてマイペースに書いています。目標は物書き、エルレのライブ参戦。 Twitter(@yoakeno_sky)ノベルアッププラスhttps://novelup.plus/user/403080915/storyでは北大路夜明の名前で活動中。

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  • 『事あるときは幽霊の足をいただく!』

    長編小説『事あるときは幽霊の足をいただく!』をまとめました。

  • 短編

    今まで書いた短編のまとめです。

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事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】

あらすじ  遅刻常習犯で赤点王の高校生 崎山 真(さきやま まこと)の前に突然現れた一風変わった謎のサムライ。  彼は崎山家に伝わる偉大な先祖に殺されてしまった怨霊で、長年の恨みを晴らすために子孫である真の命を狙っているという。  勝手で気ままな怨霊男にストーカーされるオカルト生活が始まるのだが、二人はある事件に巻き込まれていく――。  果たして二人が辿り着く事件の結末とは?  あの世とこの世、現代と過去が交差する7日間のミステリー! ※ノベルアッププラスでも連載

    • 事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第8話 (2) その刃が向かう先

      前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真之助視点】 「これはどういうことか説明してくれるか?」    宮下君が机にドンッと両手をついて、詰問口調で責め立てたが、友人A君は椅子の背もたれに体を預けたまま、俯いている。 「待てよ、こんなの誤解だって!」  みんなの冷ややかな視線が友人A君に送られているのを見て、真が椅子を弾いた。今にも噛みつきそうな宮下君と、だんまりを決め込む友人A君の間に体を割り入れる。 「友人Aが財布を盗む

      • 事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第8話 (1) その刃が向かう先

        前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真之助視点】  教室に戻る途中の真はぼんやりしていた。 「でさ、オレが思うにクラス全員でLINEグループを作ろうと聖子ちゃんが言ったのは恋の駆け引きなんだよ。ってなるとオレは今試されている状態なわけ。そう思うだろ?」  ポジティブ選手権が開催されたら優勝候補間違いなしの友人A君の発言をよそに、真は「ナイフの芦屋」がよほどショックだったのか、心ここにあらずの状態で、「そうだな」といい加減な

        • 事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第7話 (2) ナイフの芦屋

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真視点】  バスケットコートの中、友人Aは聳え立つ巨大な壁のように立ちふさがっている。彼の長身とガッチリとした体躯に圧倒されて、対戦チームは巨人に睨まれた小人のようにすでに戦意喪失しているのが伺えた。    今ボールを持っているのは友人Aのチームメイトだ。オフェンス、つまり攻める側にある彼は対戦チームのディフェンスを振り切った。  その先には友人Aが待っている。  パスを回せば、確実にゴ

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        事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】

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        • 『事あるときは幽霊の足をいただく!』
          67本
        • 短編
          1本

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          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第7話 (1) ナイフの芦屋

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真視点】  五時限目の体育はバスケットボールだった。パスやカット、シュートの練習が一通り終わったあと、チーム戦が行われた。  体育館を半分に区切ったネットの向こうでは女子も授業を受けているため、ほとんどの男子は恰好つけることに躍起になっている。  恥ずかしながら、オレもそのひとりで、成瀬さんに注目されたいばかりに、「ヘイヘイ!」と掛け声だけは積極的だ。    というのも、プレーの方は掛け

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第7話 (1) ナイフの芦屋

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第6話(2) ジンジャークッキーはいかが?

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真之助視点】 「守護霊だよ」と抑揚なく真実を伝える真に、友人A君は「あ、そ」と軽く聞き流し、真の隣で焼きそばパンに大口でかじりついた。 「で、昨日は聖子ちゃんと何があったんだ?」 「別に何も」 「それは嘘だ。今朝のホームルームで聖子ちゃんが怪我の話をしたとき、クラスの中で顔色を変えずに聞いていたのは真だけだったんだぞ」  本日、何度目のやりとりだろうか。その都度、真は冷や汗を額に浮か

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第6話(2) ジンジャークッキーはいかが?

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第6話 (1) ジンジャークッキーはいかが?

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真之助視点】   気持ちよく晴れ渡った空に、ふかふかの布団のような雲が浮かんでいる。  何も考えず、のんきに雲の上で昼寝ができたなら、これほどの至福はないだろう。  昼休み。  東校舎と西校舎の間にある中庭に寝転んでそんなことを考えていると、一羽のカラスが水を差すように横切り、私は体を起こした。 「寿々子さんがこっちを見ているぞ」     お弁当を食べる真に促され、肩越しに振り返ると

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第6話 (1) ジンジャークッキーはいかが?

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第5話(2) すなわちオレ最強

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真視点】  聖子先生は凛然として言った。 「残念なニュースがあるの。このクラスで、またお財布が無くなりました」  安堵に包まれていた教室が今度は水を打ったかのように静まり返った。  聖子先生は教壇に両手を付いて、ひとりの女子生徒の名前を挙げる。 「今朝、報告がありました。昨日の五時限目までは鞄の中にお財布が確かにあったそうです。無くなったと気がついたのは放課後。そうなると六時限目の前

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第5話(2) すなわちオレ最強

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第5話(1) すなわちオレ最強

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真視点】  「おはようございます」  規則正しいリズムを刻むヒールの音が、ホームルーム開始の鐘と同時に三年一組の教室へやって来た。  聖子先生が教壇に立った。勝ち気な視線が生徒たちを一巡りすると、一瞬だけオレを射貫くように止まる。  もちろん、オレの後ろに立つ真之助が見えているわけでなければ、遅刻しなかったことを称賛しているわけでもない。 「昨日のことは芦屋君には秘密よ」と無言の圧を

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第5話(1) すなわちオレ最強

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第4話(2) 成瀬美月 【後編】

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 【真之助視点】  親鳥に生きのいい昆虫をせがむヒナのように、寿々子さんが唇を寄せてきたけれど、私は彼女の親鳥になった覚えはない。 「もう! 私は寿々ちゃんの親鳥じゃないよ」  うっかり本音を滑らせると、寿々子さんは恋が一気に冷めるときのようにすっと体を離した。  私の本音に気分を害したからでもなく、自分の態度を反省したからでもない。成瀬さんが席を立ったからだ。    守護霊界の掟の「一、守護霊はお付き人から離れるべからず」に

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第4話(2) 成瀬美月 【後編】

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第4話(1) 成瀬美月 【後編】

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 第1章第1話はこちらから読めます。 【真之助視点】  「作戦も考えておりますのよ」  寿々子さんは危機感と縁もゆかりもないおっとりとした動作で両手をポンと合わせた。 「わたくしが殿方と親しくして油断している姿を見せれば、ストーカーめが隙を突いて美月に襲いかかってくるはずでございます。そこをわたくしと真之助様で叩きのめす! 新郎新婦の初めての共同作業ですから、作戦名は『新婚さん、イラッシャイ!』に決まりでございます」  私は

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第4話(1) 成瀬美月 【後編】

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第3話(2) 成瀬美月 【前編】

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 【真之助視点】 「寿々子さん。成瀬さんに憑きまとっているストーカーはどんなやつなんですか?」  声を洩らさぬよう口元を本で隠した真が訊ねた。この本は手近な書架から適当に引き抜いたもので、背表紙には興味もないだろう郷土史のタイトルがある。 「言うなれば」  寿々子さんは記憶を呼び起こすように天井に視線を這わせた。 「血が通っていないような青白い顔に、生気のない鋭い目、艶のない総髪に、黒装束。まるで、死人のような殿方でございま

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第3話(2) 成瀬美月 【前編】

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第3話(1) 成瀬美月 【前編】

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 【真之助視点】  成瀬美月。  私たちは図書館のカウンターから一番離れた末席で彼女の様子を観察している。  肩の位置で切りそろえた黒い髪は朝日を受け滑らかな絹のように美しく輝き、文字追う黒目勝ちの瞳はリスやハムスターなどの小動物を連想させるほど可愛らしい。  図書委員の貸し出し作業の傍ら読書に夢中になっている成瀬さんは、真がひそかに思いを寄せている同じクラスの女の子だ。 「真之助様。ストーカーの気配は感じられますか?」

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第3話(1) 成瀬美月 【前編】

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第2話 (2) この世の仕組み

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 【真視点】 「まずは『オツキビト』について話そうかな」  一方的に話を進める真之助に、オレは遠慮なく苛立ちを言葉の端々に散りばめた。 「何だよ、そのお憑き人ってのは?」    真之助はできの悪い生徒に呆れ果てる教師のように首を左右に振る。   「お憑き人じゃないよ、お付き人。私たち守護霊が守るべき対象者のことだよ」 「どっちも同じだろうが」 「似ても似つかないよ。守護霊は憑くんじゃない、生者に付くんだ。憑依とは訳が違う。だ

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第2話 (2) この世の仕組み

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第2話 (1) この世の仕組み

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 【真視点】  昨夜、真之助の正体を見破ったあと、オレたちはすっかり人気が消えた夜の公園へと移動した。  住宅地の合間を縫って憩いの場として作られた駅前公園は、名前の通り、駅から一番近い場所に位置していることもあり、昼間は子供のはしゃぎ声や観光客の足休めといった具合に、それなりに活気に満ちている。  しかし、夜ともなると酔い醒ましのサラリーマンや生活利用者の近道として使われる程度で、だいぶもの寂しい雰囲気へと変わる。 「改めま

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第2話 (1) この世の仕組み

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第1話 リア充爆発

          前話までのおさらいはマガジンで読めます。 【真之助視点】  今、私の隣には梅見原高校のセーラー服を着た三十代の女性がいる。    きっちりと結い上げた島田髷に、螺鈿細工を施した櫛と簪で艶やかに飾った彼女は、にこにこと穏やかに微笑み、私に腕を絡ませては無防備に体を押しつけてくる。  仮に私が生者、つまり生きている人間で、生身の肉体を持っていたとすれば、心臓が派手に爆発でもして、理性の境界線が吹き飛んでしまうのだろうけれど、生憎、私は当の昔に死んでいるため、煩悩もとっくに手

          事あるときは幽霊の足をいただく!【長編小説】第3章 第1話 リア充爆発