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海外赴任で活躍するために、着任後すぐに行うべきこと

先日、これから初めての海外赴任を迎える方と対話する機会がありました。
その方は若くして大手企業の管理職を担い、専門分野に精通されていて、現地法人の管理部門の責任者として赴任予定です。
ただ、日本本社からの期待役割は大まかには理解しているものの、現地側のニーズや課題は未知数で、また業務上のパートナーとなる現地のマネジャーとは何度か顔を合わせた程度、英語も得意ではないということで、渡航が近づいて現実的に見えてくるにつれて不安が高まっているという状態でした。

このようなケース、多くの会社で起きているのではないでしょうか。
この方は赴任前に問題意識を持たれているので準備もできますが、現地での業務をリアルに想像することなく、「現地に行ってみればわかる」と飛び出していく方も多く見てきました。

確かに、まず現地に飛び込んで消費者の実態を掴んでから構想を練ったという起業家の成功談を聞くことはあります。
ただ、会社や組織のマネジメントとして赴任される方は、着任初日から、現地社員に観られていると言っても過言ではありません。
歴史がある拠点になると、「日本人が来なくても自分たちでできる」と思っている現地人材も多いです。
一方で、「日本人が自分でやるだけで、現地に技術やノウハウが残らない」というのも実はとても多い現地側の不満です。

表向きは温かく迎えてくれていても、この上司は自分たちに何をもたらす人なのかと、期待や不安、そして諦観などが入り混じっているのではないでしょうか。

新たな国やポジションに着任した際にまず現状を正しく認識するのは勿論大切なことですが、本社の方針を繰り返すだけだったり、既知の問題を解決するだけでは、残念ながら現地社員との距離は縮まらず、専門性や日本とのリエゾンといった「一つの機能」としての認知に留まるでしょう。

私自身も海外赴任後しばらくして、それなりに信頼関係があると思っていた部下から、「この会社にはビジョンがない。この国のことをわかっていない」と痛烈に言われたことがあります。
正直なところ最初は、掲げているビジョンはあるじゃないか、そのために一緒に顧客企業でプロジェクトを行っているじゃないか、くらいにしか捉えられませんでした。また、当時自分はまだNo2の立場で成果を上げることに精一杯で、どこか他人事に感じたのも否めません。
しかし、その後当人と話したり、様々な業界の方から学んでいくと、日本人が掲げるビジョンはあくまでも日本視点の独りよがりであったり、その国の彼らが到達する姿の具体性が欠けていたりすることを否応なく理解しました。
そしてまた、私自身がその責任に向き合わず及び腰だったことも見透かされていたでしょう。

その後間も無く、彼は退職していきました。
抽象的なスローガンでなんとなく共通理解が進む日本と違い、海外では3倍のコミュニケーションが必要と言われます。
頭では理解していたつもりでしたが、リアルに突きつけられた苦い経験です。

それでは日本人として、現地の部下に何を伝えればよいのでしょう。
そもそも、その現地法人は何のために存在するのでしょうか。
市場開拓、コストやサプライチェーンの最適化、また法規制やリスク対応などさまざまな理由で設立されたことと思います。
それらは全て日本本社側の戦略上の意思決定です(例え政治的な要請などがあったとしても)。従って、現地社員には見えていないかもしれません。

また最近は、現地法人の役割の高度化を目指す企業も増えています。これまでの単一機能から、自立した事業ユニットとして、本社からの要求が変化する中で、現地の現実は追いついていないこともあるでしょう。

現地社員からすると、日本製品やサービスのファンだったり、技術などの強みを理解していたとしても、自分の夢やキャリアを日本企業の枠組みの中で考えられていないことも珍しくありません。

だからこそ日本人のマネジメントには、グローバル、リージョン、その国、機能それぞれの視座で、会社の存在意義と目指す未来像、そして現地法人や社会への貢献を、全体観を持って自分の言葉で示していく必要があります。
「現地社員には言っても伝わらない」「全ての情報は開示できない」という声も聞こえてきそうですが、実はこれまでそういった高い視座や根源的な問いを持ったことがないだけで、きっかけがあれば仕事への向き合い方や、組織風土も劇的に変わるケースを目にしてきました。
そのやり方はOJTや1on1から、会議体やイベント、その他仕組み作りまでさまざまですが、一つ言えるのは上司の思いと覚悟が常に変化の起点となることです。

赴任後間もない時期だからこそ、現地法人の代表であってもミドルマネージャーだとしても、組織を率いるリーダーとして、「自分はどんな人間なのか」、「何をするためにここにいるのか」、「現地の現状や課題をどう認識しているのか」、「自社や顧客にどんな価値や変化をもたらすのか」を自分の言葉で社員やステイクホルダーに語っていただきたいと思います。

グローバルビジネスの最前線で戦う皆様を心から応援しています。

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