すき焼きに水濡れ
■2023年(両親81歳)
8/2
単身で訪問 10:00頃
母は居室で休んでいるとのことで、1F食堂にいた父と一緒に居室へ向かう。
父、元気! 表情明るくほっとする。
エレベーターで2Fに着くと、ちょうど母が居室から出てくるところに遭遇。
その出で立ちにぎょっとする。
シャツはボタンが留められておらず胸がはだけており、首元にはチョッキがマフラーのように巻き付けらている。
この風貌でふらふらと廊下に出て歩いてくる母の様子は何とも言えない。
きっと、寒かったので上着を着ようとしたのだろう。
「お母さん! お父さんと来たよー!」と平静を装い、取り急ぎ居室に引き戻す。
母の身なりを直していると、突然「すき焼きが食べたいから牛肉を買ってきて」と言われる。
「お母さん、すき焼きが食べたいの??」
「うん。安いお肉でいいから。あんまり高いのじゃなくていいから。」
久々に母から自発的な発言が聞かれ、ものすごく嬉しくなってしまった。
「分かった! 安いお肉ね、買ってくるね!!」
一人で感極まる。あー、食べさせてあげたい! と切に思う。
その後、父の爪をニッパーで整え、掃除をしていたら、居室のドアの左横あたりの床がビショビショに濡れていることに気づき、驚く。
一瞬どうしようかと思ったが、取り急ぎトイレからトイレットペーパーを持ってきて拭く。何より転倒防止。
しかしなんでこんなところが濡れているんだろうか。
母がおしっこでもしたのだろうか。
でもそうだとしたら、一体どうやって…?
帰り際、スタッフさんに報告。
聞けば、数日前には母に便失禁も見られたとのこと。
初めて聞く「べんしっきん」との用語を理解するまでに数秒かかる。
母が!? 信じられない。
夜間に便失禁していたそうで、スタッフさんがオムツを替えようとしたところ、寝たふりをしてなかなか替えさせてくれなかったそう。
でもそのまま放置するわけにはいかず、半ば強引に体制を変えると「痛いっ!」と抵抗したとか。
「こういうのされるの嫌だ?」と聞くと、「うん」と答えたらしい。
ふと、2歳の娘のことを思い出す。
2歳の娘も、いつからかうんちをする時にカーテンに隠れたりと恥ずかしがるようになった。
うんちが出たら早くお尻を洗ってあげたいのに、恥ずかしがって抵抗し、なかなか洗わせてくれない。
二人とも、この段に置いて恥ずかしがる必要なんてないのに恥ずかしがる。
幼子も老人も、恥じらいの意識が確かにあるのだ。
それにしても、床のあの水濡れは何だったのか。謎。
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