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帰る家がないよ

■2022年(両親80歳)

2/9 留守電

9:48

母 帰る家があるのかな? ある?

父 帰る家って… 尚子に電話してみな。

母 だから今かけたら出なかった。

父 我々はどこ行けばいい? 

母 どこ行けばいいんだろうねぇ。

父 もう、うち帰っていいんでしょう?

母 あ、それはいいんじゃない。うち帰りたかったら帰っていいよね。それが一番ですよ。帰るうちがない人が困っているわけだから。ね。

父 淳子は帰れない? 

母 私は帰るうちはないのよ。

父 え? じゃあ淳子はどこへ帰るの? 自分のうち帰るんじゃないの?

母 うん。帰る家がないよ。

父 だって自分のうちがあるじゃない。

母 もう誰もいないから駄目だよ。誰もいないから、家に帰っても。

父 なんでいない? どうした? お父さんとお母さんは?

母 もうどうしてもみんないなくなっちゃったの。

父 どこいったん?

母 あっちこっち。

父 え?

母 それぞれ自分のやりたいことやりにどっかいっちゃったからいないの、家には誰も。

父 空き家になってるん?

母 うん。だからそこに帰ってもいいのよ。今度は私がそこの主になればいいんだからね。そうしようかな。

父 どうなってんだ? うち来ればいいじゃない、じゃあ。…うち泊まるのは嫌か。

母 うん? いやぁ、そうじゃないけど、迷惑かけると悪いでしょ。

父 だって、誰もいないところへじゃあ帰るわけ? で、帰ってくるんだろ? もちろん。

母 もちろん帰ってきますよね。

父 今いない人も。

母 うん。

父 じゃあそこにいればいいのか。

母 まあどうするかね。

父 連絡してみればいいじゃない。

母 はいはい。


二人して謎な会話をしている…。 

見た目は80歳の老人だが、話している会話はまるで子供のよう。

まったくもって不思議。


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