雨のイヤリング

13歳からダイビングをしているという人に出会った。
40〜50分近く潜るそうで、そんなに長く入れるのか！と驚く。

「海は本当は人間が入る場所じゃないんです。
ほんの少し、ほんの少しお邪魔させていただくんです。」

「だから真剣に入らなくちゃいけない。他のこと考えていられないんですよ。水の中のことだけ考える。だから(教習中に)ふざけて入る人いたら叱ることもありますよ。」

そんなことを熱く語ってくれた。
つい数ヶ月前にもダイビングを趣味にしている人に出会って、楽しいよと誘われたばかり。
また全然別方面からダイビングの話を聞くとは。

「人間は70%水でできてるでしょ。地球も70%。日本はほぼ水に囲まれてるし、生まれる前は羊水の中にいる。ダイビングはぜひ経験してほしい。」

スーツ姿の貫禄あるお姿と、商品を売ると言う本来の目的から逸れて海の話を熱く語る姿が程よく重なっていて、心地よい矛盾を纏っているなあと見ていて安心する。

帰りの頃、気温が下がっているからラーメンを求めつつ夜の散歩へ。
徐々に雨足が強まる。
雨の日の散歩は嫌いじゃない。
植物の先っちょにまん丸の水が生まれてイヤリングみたい。
水たまりに響く波紋の音を拾ったらどんな音楽になるだろう。
いつもより濃くなる緑の色がとても好き。
葉っぱの水滴越しに街灯の光を受けてちょっと青っぽくなったり、オレンジ色に染まる木々も好き。

この雨も海から生まれてるのか。
人間の涙の塩分濃度は海と同じと聞いたことがある。

帰宅して、買ったばかりのミルでカフェオレを淹れる。
隣人にあげたら中国のお茶をもらった。

『りかさんのカフェオレ、チョコミントの味がする』

今日は水の日。
海に呼ばれてるのか。
とりあえず人に誘われるままダイビングやってみようと思う。