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「三分間の空隙 (上)(下)」(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、ヘレンハルメ美穂訳、ハヤカワ文庫)

読了日: 上; 2023/10/26、下; 2023/11/3

 前作「三秒間の死角」が面白かったので、次作を中古で購入しました。
前作では、前科者のピート・ホフマンが潜入捜査員としての仕事の中でスウェーデン警察、政府に利用され大変な目に遭わされました。けれども彼の臨機応変さと、修羅場を潜り抜けてきた経験から起動される最悪な事態への予測をもとになんとかその現場からギリギリの状態で抜け出すことができました。そして愛する妻と二人の子供と再開することができました。ピート・ホフマンが望む唯一は家族と平穏に暮らすことだけです。
前作は、その場面で終わりました。

 それから数年後、ピート・ホフマンは南米コロンビアの麻薬組織におりました。本書はそこから始まります。
(巻末解説には、”生活の糧を得るために麻薬の売買に再び手を染めた”とありますが、本書の内容とは異なります。)
 スウェーデン警察の潜入捜査員を管轄する担当者(上司)と、DEA(アメリカ麻薬取締局)責任者との指示により、再び麻薬取引解消のための潜入捜査員として仕事をせざるを得ない状況に陥っていたのでした。前作の脱出劇でのやむを得ない殺人により、スウェーデンでは終身刑を逃れられないため僻地での生活を余儀なくされ、あらためてその状況を利用されている、という設定です。

 詳細内容は割愛いたしますが、やはりここでも雇い側である警察、政府組織から約束を反故にされ、独自に脱出、解決策を実行せざるを得ない窮地に追い込まれます。(結論も割愛いたします。)

 北欧、とくにスウェーデンサスペンスが好きです。きっかけは「ミレニアム」でした。アメリカの警察小説、サスペンスも数冊読みましたが(古典含む)、いまいちしっくりこない。スウェーデンのものは状況描写のスピード感や、登場人物の心情への共感などがスムーズに感じます。(この点はしつこいですが、訳者ヘレンハルメ美穂の仕事も大きいと思います。)
 北欧、スウェーデン作品のすべて同様であるとは思いませんが、本著者(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム *ベリエ・ヘルストレムは2017年に逝去されています))作品は、「ミレニアム」に次ぐほどの没入感を得られます。今のところそう感じています。
 本作の後にはすでに2~3作品リリースされているようですが、もし読むなら次は久作にさかのぼってみたい気がします(「地下道の少女」)。「制裁」、「熊と踊れ」は既読ですが「三※※の〇〇」シリーズの方がより一般的で社会的・政治的で面白く感じます。
 同一作家ばかりを追いかけると、より広い世界へは広がらないことが難でが、おもしろいと思っているうちはしょうがないかな。


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