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「身ぶりと言葉」(アンドレ・ルロワ=グーラン、ちくま学芸文庫)

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読了日: 2023/4/26

冒頭に付しますが、よくわからない部分(特に第2部)があり、浅学無知なりの書き方になることをご承知おきください。
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人類の頭蓋は二足歩行による支点変化により後頭部容積が拡大し、と臼歯矮小による頭蓋穹窿が拡大(閂の解放)したことにより、新皮質が拡大発達した(いわゆる新しい脳)。また臼歯矮小に関連もするが飲み込む作業が変化し、舌の発達の促した。これはその後の言語活動にも影響するだろう。
二足歩行は同時的に、手の解放はリズム的な道具制作を実現した。石器の発展は偶然によるものではなく、言語的思考による’改善’の結果と大いに推測される。これらの営みと相まって、神経中枢を共有する言語創生が社会を構築するに至ることになる。
生理的機能:古い脳と(動物と区分する意味で)人類たらしめる機能:新しい脳(動物にも新皮質はあるが)は、それぞれ排他的ではなく、それぞれの機能を正当に認識することが肝要である、との思惑と受け取った。正しいだろうか…?
洞窟壁画のより古代の抽象性、婚姻による分け与えが都市構造の礎など想像的社会学から宇宙概念まで、懸命に”その”脳を並走させる680ページ…。

著者は、先史学者、社会文化人類学者とカバーにクレジットされるが、当時の人類学、先史学、生物学、言語学、考古学など明確な分類が難しい旨を「訳者あとがき」に付される。発掘などの考古学、先史学としてのフィールドワークも行っていたようだが、本書に収められる内容は、人間考察、社会一般までの広範にわたると思う。
人骨、石器、陶器、壁画などは発掘によりデータが蓄積されていくが、脳や言葉は発掘できない。よって分かりうるデータからの推測になるわけだが、その推論と論理の真正らしさ、押しの強さあたりが評価されていると思われる。
洞窟壁画のより古代の抽象性、婚姻による分け与えが都市構造の礎など想像的社会学から宇宙概念まで、懸命に”その”脳を並走させる680ページ…。ティム・インゴルドの原点のひとつでしょう(本人曰く)。
未来予測にも震えるが(結構当たっていると思う)、この時代(1964~65年上梓)の大きな仕事だと思う。


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