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「昨夜の記憶がありません アルコール依存症だった、私の再起の物語」(サラ・へポラ著、本間綾香訳、晶文社)

読了日: 2024/3/18

 酒を飲みすぎて、”ブラックアウト”何度も経験しているらしい。かなり酔っぱらって昨夜の会話のディテールが思い出せないなど、年ごとに少しずつ多くなっている気はしますが、どうやら”ブラックアウト”とは、それとは幾分違うようです。
 ふと気がつくと”あったこともない男の上に乗っている”こともあるらしい(著者は女性)([前奏 光の都]より)。つまり、”ブラックアウト”中は行動や判断を自分の中の別の人格が担っているような感じだろうか。読み進めると、いやまったく別の人格というわけではなさそうです。ある程度好みの男性に声をかけているようにも思えるし、自身の欲求の延長線上で、抑えが効かなくなっているような感じに思えます。

 前半([Ⅰ 飲酒の夜々])では、酒を飲み始めた幼少期~ティーンエージャーの心移り~いろんな失敗~反省などを綴り、後半([Ⅱ 断酒の日々])では、落ち込みから酒を飲まないようにする努力、経験の変化、自己認識の変化が綴られます。時系列の女性の成長過程、仕事・人間付き合いの四半世紀をまとめたエッセイのような感じです。

 酒好きであれば失敗談のいくつかはあるものと思いますが(小生もその一人)、女性では斯様な失敗談を語ることはより恥ずかしく思うものかもしれません(偏見かもしれませんが)。この本では、著者は失敗をオープンに語り、また性に対する思いやさまざまな経験をもオープンに語ります。どの程度リアルな話かは不明ですが、内容の精度は本書では大きな問題ではないように思います。
 たしかに文章は比喩表現など含めて面白く、クスッとなるところもいくつかありました。職業がライターであるということが貢献しているのかもしれません。けれども、少し開けっ広げ過ぎにも感じました。女性の読者には性経験や異性との距離などの共感もあるのかもしれませんが、小生にはその点の魅力は感じられませんでした。つまり、開けっ広げのインパクトが本書の魅力として映ってしまうことが(すべてではありませんが)、少し残念に感じました。


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