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「絵画の素」(岡崎乾二郎著、岩波書店)

読了日: 2023/9/27

 あとがきにあるように、自身の絵画作品シリーズ(TOPICA PICTUS)制作時に考察したメモのようなものをまとめ、書籍化したものです。
 各章は数ページごとに完結しており、それぞれ(概ね)起点となったであろう作品が掲載されています(前ページオールカラーですが、画面の詳細をみるには幾分画像が小さいです)。
 ただ単に制作工程を検討したり、テーマ設定を検討するための用語の拾い集めなどではなく、深遠な、作家がなにをきっかけに、なにを思い出し、なにに思いを馳せるのか、興味深く読ませる文章でした。
・歴史的な、古来からの人間の営みとその継承
・自然の中で生きるひとの環境とのかかわり(ひとと自然は一線を画すなら)
・絵画作品、作家、時代へ多くの知識と作家(もしくは個人)の目線と意識のベクトル
など個々作品への考察が、引き込まれるようなセンテンスで美しくまとまっているように感じました。

 前著『抽象の力 近代芸術の解析』(亜紀書房、2018)は教科書のような趣で、勉強になった印象がありますが(多くがアタマに入ったわけではなく、都度読み直さなければならないでしょうが)、本書は著者(作家)の思考の一部に触れられたような経験でした。
 2021年より脳梗塞で入院されていたそうです。入院中にも本書の一部を執筆したとのこと。作品のエネルギー感のようなものと生命力がつながるようにも感じられました。


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