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学校帰りに隅田川から新宿まで歩いた話

ざっくり言えば「久々にお散歩しました」という話。

(本当はその日のうちに書き上げようとしたけど途中で3週間近く下書きで放置していました気付いたらなんと3か月以上経っていました。時系列のずれや執筆時のテンションのズレがあるかもしれません。ご了承ください)


通学路を楽しみたい!!

 大学生活も2年目に入り、去年よりも専門性の高い授業が展開されて課題も段々面倒大変なものが増え常に時間との戦いが強いられている今日、なかなか「通学路を楽しむ」ことがなかった。

 私は神奈川にある実家から千葉にある大学まで通っていて、定期券の範囲が言うまでも無く広い。都内を横断しているから途中駅にある新宿や秋葉原は(定期期間中は)行き放題だ。そして途中下車し放題でもある。
 こんな境遇に出会う事なんてそうそうないだろうし、折角なら途中で通る町を素通りするんじゃなくて歩いてその土地の雰囲気を知りたい!!と入学当初は意気込んでいたが、学校終わりに途中下車するのはなんだか気が乗らなかったり、気付いたら電車の中でずっと寝る体質になって途中駅の事なんて全く知らないなんて言う風になっていたり、そもそも大学周辺で友人と遊んでいたら帰りの時間が遅くて寄り道なんてできなかったり…と折角の"くそでか定期券"を充分に使い果たせていなかった大学1年生。(更に、まだコロナの話が敏感で、都内の感染者が増加の一途を辿っていたことや、長期休みの間は定期券を買っていなかったのもある。)けれど一度だけ映像制作の素材集めとして千葉から新宿まで行き、途中で秋葉原~御茶ノ水間を散歩(兼素材集め)してまた大学に戻る、なんてことをしたことがあって、それがものすごく楽しかったし"くそでか定期券"を使ってる感じがしてより充実感を覚えたことがある。あの時の楽しさをもう一度味わいたいな…と思いながら、いつの間にかそんな余裕ない日々が続くようになっていた。

 そんな中、ちょうど授業タームの裂け目で課題などが落ち着いてきた今日、久々に時間的にも精神的にも余裕があったからノリと勢いでお散歩することを決めた。タイトルを見れば分かると思うけど、歩いたのは隅田川(浅草橋)~新宿駅までの約10km。最初はそこまでするつもりは無かったけど、歩いているうちに段々楽しくなってきて「ここまで来たらいっそのこと新宿まで歩いちゃおうか」みたいなこと思い始めて結局歩き切った。最後の方は流石に散歩じゃなくてただの運動だったけど。

赤線が実際に歩いた部分、青い点は普段通学で通ってる駅。

浅草橋~隅田川

 元々、秋葉原には別件で寄り道する予定だったので「せっかくだし一つ手前の駅から降りて散歩も兼ねるか」と思い浅草橋駅で下車。普段は通り過ぎるだけの駅だけど、電車の中から見てもわかるホームの狭さには少し興味があった。実際にホームに立ってみると、特別狭いという風には感じないけど「少ない土地に頑張って収めました」みたいな雰囲気は漂っていた。それはそれで下町の駅(?)という感じがして少しテンションが上がる。改札を出ると狭い道に小さな飲食店が立ち並んでいた。

 そのまま秋葉原駅に向かうつもりだったが地図を見ると隅田川までそんなに離れていなさそうだったので、秋葉原とは反対方向だけど隅田川に向かうことに。高架線の下に並ぶ個人経営のような飲食店の看板を見ては「美味しそうだな…チェーン店とかコンビニ飯とかじゃなくてこういうところでご飯食べてみたいな…」なんて思いながらご飯の誘惑と戦っていた。あと高架線は橋脚などが規則的に連続していてなんだか魅了される。普段とは違う景色に目を奪われながら歩くこと約5分。隅田川に着いた。

電車の中からも窺える狭いホームの裏(下)はこんな風になっていた。
アーチ状の柱が並び少し奇妙な景色。

梅雨の曇り空の隅田川

春のうららかな様子は無く、真っ白な曇り空が一面に広がる。それでも都内の狭い道の両側に雑居ビルが立ち並ぶといった狭苦しい景色から、空が一面に広がり目の前に大きな川が流れる広々とした空間に出ると気分も高揚する。普段は電車で素通りするだけの川が、歩いて来るだけで全く違う景色に見えた。

写真だとなんか暗く見える…。

「ダダン、ダダン」と大きな音を響かせながら黄色い電車が橋を渡っていく。自分は小さいころから電車好きだったけど、やっぱり橋を通る時の大きくて濁り気の無いジョイント音はたまらないなと実感しつつテンションがあがる。橋の真下から上を向くと線路の間には枕木以外特に物がないから線路のむこうを覗ける。電車が通ると黒くて大きな物体がものすごい速さで通り抜け、そしてあの「ダダン、ダダン」と大きな音が体の芯にまで響くから普段は味わえない恐怖感に反って興奮が収まらなかった。
 隅田川に着いてもしばらくは橋を渡る総武線各停に見飽きなかった。何本か橋を通り過ぎるのを見てようやく、川沿いにある遊歩道を歩き始めた。
 隅田川沿いの遊歩道はめちゃくちゃ綺麗に舗装されていて、歩道の道幅も広く一定の間隔で休息用のスペースが設けられていた。川の堤防や歩道に敷かれているタイルは明るめの色で統一され、どんよりとした曇り空の下でもかなり明るい印象だった。自分の実家の近くにも川はあるが、そもそも川幅はここまで広くないし、遊歩道があれどとても狭い。道も黒っぽいアスファルトで継ぎ接ぎに整備されてるので、こんなにも明るくて広々とした川沿いの遊歩道なんて青春アニメの世界にしかないものだと思っていた。こんなにも丁寧に整備されているのもなんだか財力の差を見せつけられたような気がする、実際の事情は知らんけど。
 こんなにも素敵な環境が自分の通学路にあったことに感動して、ついつい鞄の中からノートを取り出して川沿いの風景をスケッチした。最初は特別感に浸ってルンルン₍₍ (ง ˙ω˙)ว ⁾⁾と描いていたが、遊歩道を行き交う人々に注目されているような気がして段々と恥ずかしくなってくる。普段スケッチなんて授業の課題でしかしたことなかったし、外でやるなんて初めてのことだからあまりにも調子乗ったなと後から反省。それでも30分ぐらいでなんとか納得のいく形に仕上がった。
 まだまだ秋葉原で本来の目的があるというのに意外とたくさんの時間を費やしてしまった。が、後悔はしていない。そろそろ本来の目的地、秋葉原へ行こう。

調子に乗って描いたスケッチ。ヘタクソなのはご了承。

本来の目的地へ

 隅田川からようやく動き出し、再び先ほど降りた浅草橋へとむかう。本来は秋葉原で確認したいものがあり、散歩も兼ねるために浅草橋で降りたはずだが何故か今更スタート地点に戻ってきた。もちろん、このまま電車には乗らず隣の秋葉原駅まで徒歩で向かう。
 再び浅草橋駅に戻ってきた時、今度はさっき歩いていた道とは線路を挟んで反対側にある道を歩くことにした。最初に歩いた側の道は高架下に様々なお店の入り口が立ち並んでいたが、線路反対側の道はお店の裏口が多く並んでいた。もちろん、高架下ではない道沿いにこそ飲食店が立ち並んでいるけど、最初に歩いた側の道とは少し違った雰囲気を感じた。

改札口などで駅が少し膨らんだ部分。他の場所よりも道に大きくせり出していてなんだか不安定に見える。それでも必死に土地の中に収めようとしたのが覗えて面白い。

 そのまま愚直に高架下沿いを歩くのもなんだかな、と思い少し線路沿いから外れる。交差点で辺りを見渡すと、小規模な川を渡っていそうな橋を見つけた。やはり散歩と言えば川沿いだろうと思い、その橋の方へ歩き出した。
 調べてみるとその小規模な川は「神田川」だった。いつも通る御茶ノ水駅の目の前を流れているあの川。総武線各停が御茶ノ水から秋葉原にむかう途中で線路は神田川から逸れていくが、どうやらそんなに遠くまで離れていないらしい。御茶ノ水駅周辺の神田川がそうであるように川沿いには道が設けられていない。都内を所狭しと流れる川の様子が好きだったからそれを堪能しながら歩けないのは少々残念だが、仕方なく川に一番近い平行する道を歩くことにした。
 川と線路の間には平行する道路が2本しかなく、実はお互い近くにあるということを実感する。道をしばらく歩いているとビル群の中に公園があり、視界が開けたその先にすぐ電車の高架線が見える。電車の中からだと気付かなかったが、雑居ビルが立ち並ぶ線路沿いにこんな公園があったことに少し驚く。そしていつもとは違った発見ができて散歩の楽しさを改めて感じた。
 更に道を進んでいくととんでもなく道幅の広い一方通行の道があったり、静かな住宅街の中に少し高級そうな雰囲気が漂う居酒屋を見つけたり色々な発見があった。普段毎日のように自分が通ってる道のすぐ近くにこんな景色が広がっていたんだな、と新たな発見でますます歩くのが楽しくなってきた。
 そんなこんなで歩いているとやがて大通りに着く。その先には秋葉原駅の文字。やっと本来の目的地に到着した。


ディープな街、秋葉原

つくばエクスプレスの改札近くにあるランチパック専門店(?)
少し前に友人から紹介され、折角なので寄ってみた。ランチパック美味しい。

 元々、古いゲーム機(PlayStation2)のコントローラを探すために秋葉原に行こうと思っていた。別に最初から「秋葉原にあるここのお店に行こう」とは考えていなかったが、まぁ秋葉原ならガジェット系はなんでも揃うでしょうの精神でいたから実際にお店を調べるのは現地に到着してから。とりあえず偶然見つけたBOOK-OFFに入り、そこで探すも見つからなかったためインターネットの力を借りることにした。すると御茶ノ水寄りの方に何件か良さそうなお店がヒットしたのでそっちへ向かう。
 秋葉原は今までも何度か行ったことあるが、基本的には駅周辺に立ち並ぶ大型家電量販店や全国展開されているゲームセンターぐらいしか行っていない。そのためあまり秋葉原らしい場所には行ったことがなかった。もちろん駅周辺部だって色々なアニメやゲームの広告がでかでかと貼られているしゲームセンターの密集度は他と比べても異常だし、それだけでも充分秋葉原らしいとは言えるが「電気とメイドの街」という感じはあまりしない。オタクの街と言えど一般人でも歩きやすい雰囲気の場所、自分が今までに歩いてきた秋葉原はそんなイメージしかなかった。
 以前も通ったことのある道を行き、そこから少し車通りの少ない道に入っていく。途中の道路沿いには狭い敷地の中に鳥居と神棚(?)があり「こんなところにも神社があるんだなぁ」と思いながら前を通り過ぎた。更に道を進むと静かな道から一転、ピカピカと眩い光が放たれたお店が立ち並び始める。秋葉原の名物、小物電気屋さんだ。道路沿いに置いてあったのは電光掲示板(売り物)で色々な種類、サイズが展示されていた。まるで夜光虫のように自分はそのお店に引き込まれ、展示されている掲示板を眺める。こういうのって思っていたより安いんだなぁ…自分でも普通に買えそうだな、と思ったが今の自分は金欠状態。(数週間前にパソコンとタブレットの液晶が割れ、修理費で財布が空っぽに。。。)お財布に余裕ができたら、これ使って何か創作したいなぁと感じたところでお店を出た。ここまで長々と書いているが未だに本来の目的を果たしていないのである。早く中古ゲーム機屋に行かねば……。
 電気屋を通り過ぎ、突き当たった通りを右に曲がる。この通りをしばらく行くと目的の中古ゲーム機屋があるようだ。どうやらこの通りはメイド喫茶のお店も立ち並んでいるらしく、道の脇には一定間隔でメイドさんたちがお店の勧誘をしていた。私は特にメイドさんとかに興味があるというわけではなかったが、自分の想像していたアキバの図と初めて一致して「これが本当のアキバの姿…!」とちょっと感動した。大通りから一本入った少し細い道にこういう光景が広がっているの、秋葉原ってディープな街だなと思いながら歩いていると中古ゲーム機屋の前に着いた。
 一軒目に行っても目当てのものは無く、その後も何軒か中古ゲーム機屋に行ったが目当ての物は見つからなかった。しかしお店が雑居ビルの中にあったりして、普段大型量販店みたいなお店しか行かない自分にはとても新鮮だったし、雑居ビルに入ってからお店に入るまでの細い廊下や階段を抜けてる間のドキドキ感はなんだか心地が良かった。
 さて、ここまでたくさんの時間をかけた一方で本来の目的はたった数十分で終わってしまった。時刻は18時頃。空はまだ明るいが地面は徐々に影の色を強め始めた。
 寄っていたお店が秋葉原と御茶ノ水駅の間にあったため、折角なのでこのまま御茶ノ水駅まで歩いてしまうことにした。


御茶ノ水駅を脇目に見つつ…

フェンス越しの聖橋と御茶ノ水駅

御茶ノ水駅近辺はちょうど一年前に歩いたことがあった。学校の課題で映像制作をする際に素材集めとして歩いたが、地下鉄がトンネルから出てきて川を横断したり、特徴的な形をしたコンクリート製の橋(ひじり橋)があったり中央線と総武線各停の交差が見られたりと、見飽きることのない場所の一つだ。以前ここを訪れた時は動画の素材集めのために歩ていたが、今回は色々な用事を済ませ帰路に着いてる最中なのでここで道草を食わずにスルーしていく。ただ御茶ノ水駅は川の向こう側にあるから反対側に渡らないと電車に乗れないし、聖橋も上の写真の撮った道路からでは渡ることができない。次に川の向こう側に渡れるのはJRの駅を少し超えたところまで歩かないと橋が無く、少し不便な道路だなぁと思いながら歩いていた。そして「どうせ駅を少し超えたとこまで歩かなきゃいけないのならそのまま次の駅まで歩くのもありなのでは?」とも思い始めた。既に歩いてきた範囲も今まで知らなかった景色が見れて楽しかったし、まだ疲労を感じていない。この後の予定が無いから帰宅時間が遅れても問題ない上、御茶ノ水より新宿側は今まで歩いたことがないのでこのまま歩いてしまうのはあり寄りのありなのだ。
 聖橋をくぐり、地下鉄の御茶ノ水駅の入り口を何か所か過ぎる。右手には大きな建物があり、入り口には「東京医科歯科大学病院」と書かれていて「ここが例の(?)イカとか鹿の大学があるところか」とぼんやりと思いながら通り過ぎる。しばらくしてJRの御茶ノ水駅に続く橋の交差点に着いた。このまま左に曲がって電車に乗って帰るのも少し考えたが、時間に縛られることなく散歩できることも中々ないなと思い、そのまままっすぐ交差点を通り過ぎることにした。


水道橋での寄り道

御茶ノ水駅を過ぎ、川沿いを歩き続ける。対面の川沿いには電車が走っており、帰宅ラッシュの時間になりつつもあって引っ切り無しに電車がすれ違っていた。絶壁のように打たれたコンクリートの壁には線路の脇から生えた雑草が壁を這うように生い茂っていたり黒いすすのようなものが垂直状に伸びている。日が傾いて段々地面も暗くなってきて、谷間にある川の水面は真っ黒に反射している。美しい緑とは言えない自然景観だったけどなんだか都会の風景に溶け込んでいたし、川のすぐ横に打ち立てられた無機質なコンクリートの壁という自然と人工物の対比がなんだかすごく良かった。その上を満員になった電車が走る姿はどこか哀愁を帯びていたように思う。忙しく行き交う電車を眺めながら歩いていると少し大きな交差点に出た。左側には東京ドームに併設された遊園地、東京ドームシティのアトラクションがちらほら見える。あっという間に1駅を歩いたようだ。

それまでビルが立ち並んでいた道路右側の視界が突然開ける。四角い高層建物の中に混じる観覧車や謎のアトラクションはとても目立つ。

 水道橋駅と言えば読売ジャイアンツの拠点地である東京ドームの最寄り駅だ。昔親に連れられて何度か東京ドームで野球観戦をしたことがある。せっかく水道橋駅まで歩いたしついでに東京ドームを一目見ていこうかなと思い、一旦川沿いから離れ東京ドームへと向かった。

記念に寄り道した東京ドーム。せ・パ交流戦の最中で、ドーム内ではジャイアンツとホークスの戦いが繰り広げられている模様。

 時刻は18時半を過ぎたあたり、野球の応援ユニフォームを身に纏った人たちに囲まれながら東京ドームへと歩いた。野球ファンでもない自分が学校帰りに東京ドームに寄っていることが何だか不思議で新鮮で、これから野球を見る人たちと同じように気分は高揚していた。なんの目的も無しに東京ドームに来ることなんて今後も無いだろうな…と思い、折角だしと東京ドームを一周して戻ることに。ドームに来ても後ろまで回る事や天井のトラスの骨組みに圧倒されてゆっくり歩くことは中々ないので、我ながら変なことしているなぁと感じながらドームを1周した。日本のテレビ番組などでは、広大な土地の大きさを表すのによく「東京ドーム〇個分」という表現がされるがいまいちよく分からない。こうやって一周歩いてみれば実感がわくのかなと思ったけど、(気分が高揚していることもあってか)意外とあっさり一周してしまい東京ドームが大きいのかどうかも分からなかった。でも普段ゆっくり見ないようなところまで見ることができ楽しかったからヨシ!!

東京ドームを囲むガラス天井の末端部。裏側はガラス天井がないということを今回初めて知った。
ドームから線路沿いに戻る途中でドームホテル横あたりに見つけた"Hi!"のオブジェ。

再び線路沿いに向かう

 線路沿いから東京ドームへ寄り道をし、わけも無くぐるっとドームを一周した後再び線路沿いに戻る。この辺りからは川と道路の間に建物が立ち並ぶため川沿いを歩いているというよりも幹線道路の歩道を歩いているという感覚が強くなる。御茶ノ水を過ぎる辺りからずっと同じ道路(外堀通り)を辿ってるはずだが、先ほどまで片側1車線の道路がいつの間にか片側3車線ぐらいの道路に様変わりしていた。道幅が広いぶん空の視界も開けていて、西の空は橙色に染まっていた。地面も徐々に車の前照灯や道路沿いの街灯が主張を増してきた。

広角写真のせいでちょっと分かりづらいが、高速道路が一般道の交差点を沿うように急カーブを描く姿は中々見ごたえがある。

 途中の交差点で高速道路と交わり(接し?)、その曲線美に魅かれつつも少し川沿いから離れてきたように思ったため幹線道路から離れ、少し細い路地に向かう。線路沿いに近づくと、錆びた感じがいい雰囲気を出す鋼橋を見つけた。小さな鉄道橋なんて普段電車に乗ってても殆ど気付くことはない。普段通る道を全く違う角度から見えるから散歩は楽しいと思う。ところで川と並行に線路が敷かれてるはずなのに橋梁…?と少し疑問に思ったが、どうやらここは川の分岐点らしい。GoogleMapでこの場所を見ると「日本橋川の起点」と書いてあるし、この橋の近くの交差点には何やら石碑があるからこの辺りは歴史的に見て重要だった場所のようだ。
 線路真横を通る車通りの少ない路地を進んでいく。相変わらず線路は若干高い位置を通っているから電車が通ってもその姿はあまり見えない。しばらく歩いていくと線路も道路も少し左に湾曲しはじめた。水道橋駅の次、飯田橋駅に近づいてきたようだ。


飯田橋駅をプチ探検

高速と川と道路に挟まれ細くなった建物。飯田橋駅前の歩道橋から撮影。

 飯田橋駅の直前で大きな歩道橋に出る。ここはちょうど江戸城外堀跡と神田川の合流地点で、線路や今まで歩いてきた外堀通りは前者の外堀跡に沿って南西方向に、前章に出てきた高速道路は神田川に沿うように北西方向に分岐する。同時に様々な道路が色々な方向に伸び、駅前の交差点は5差路のような構造をしている。江戸城外堀跡と聞いてもピンと来ないかもしれないが、都内にあることで有名な釣り堀がある場所でもある。中央線や黄色い電車(総武線各停)でぼんやりと外を眺めているといつの間にか川が現れるように見えるが、実は川ではなくお堀の跡なのだ(自分も、つい最近まで全部川なのかと思っていた人の一人)。
 前置きはさておき、5差路のような道路に架けられた歩道橋を上ると首都高が少し近くに迫り、今まで道路からは見えなかったJR線がよく見えた。ちょうど飯田橋駅の旧ホームが歩道橋からよく見え、喧騒に囲まれた駅なのに利用客が誰もいない寂しげなホームをしばらく見つめていた。

帰宅ラッシュの最中なのに誰もいないホーム。急カーブ区間に設けられた旧ホームは転落事故の多発から現在の位置に移動された経緯がある。
駅と反対側を向いた様子。川と道路と歩道橋と高速道路が4層に交差する。

 歩道橋でしばらく景色を堪能したのち、駅へ向かう。いよいよ電車に乗って帰る…のではなく、券売機でsuicaのチャージをした。これは話が脱線するが、昔からの自分の趣味の一つに「交通系ICのチャージの領収書集め」というのがある。駅の券売機でチャージすると領収書の下側に「○○駅」と書かれており、これを基に通った駅を記録するといった具合だ。電車から降りない限り獲得できないので「実際に駅を歩いた!!」という指標には最適だ。御朱印集めとかと似たようなものだと自分は思っているけど未だに同じことをしている人を見たことがない。楽しいからみんなもぜひやってみてほしい。最近はモバイル系に移行して券売機でチャージなんてしない人も多い気もするけど...。
 話が脱線したので散歩の話に戻そう。この領収書集めでは、同じ駅でも鉄道会社が違うと領収書も異なるので複数鉄道会社が接続する駅では大量ゲットが狙えるのだ。この飯田橋駅ではJR線の他に東京メトロと都営地下鉄の2社が乗り入れている。JRの地上券売機でチャージしたあと、地下鉄乗り換えの案内板に従って階段を降り地下へと潜って行った。

 帰宅ラッシュの最中ということもあり、駅の通路は人がいっぱいだ。地下通路という制約もあるからなおさら窮屈に感じる。普段なかなかこうやって地下通路を伝って行くことはなく、坂道になっている通路や地味な段差が多い。東京の地下は巨大駅に限らずそこそこな駅でもアリの巣のように通路が張り巡らされていることを実感する。東京メトロの券売機、都営地下鉄の券売機と梯子して再び地上へ戻った。これだけでもなかなかの移動距離だ。

都営の地下通路は変な配置の蛍光灯が特徴的だった。同じ駅でも会社や路線で雰囲気が大きく異なるので意外と面白い。

気になるあの看板

 飯田橋駅で無事に3社の領収書をゲットし、再び川沿いを歩いていく。正式には川ではなく外堀跡だからため池のようなものなのかもしれないけど、この方が言いやすいのでこれからも「川」として書こうと思う。
 飯田橋から新宿側は再び川のすぐ横を線路が走る形となり、線路と対岸のビル群は電車の中からでもよく見える。今まで通学時にぼんやりと電車の外を眺め「あそこのビルって何の建物なんだろうな」とか「あの通りには何のお店があるんだろう」とか思っていたのでとても気になる部分だ。日はすっかり沈みいよいよ空は真っ暗闇となっていたが終電まではまだまだ時間があるので構わずに歩く。新鮮な気持ちでいっぱいな所為せいか疲労はまだ感じていない。というか最初に駅を降り始めてから既に5時間近く経っているが道草ばっか食っていたせいでまだ5kmほどしか歩いていないのだ。時間はあるとは言えここからは少し歩調を速めることにした。
 飯田橋駅を出るとすぐ、川にビアガーデンのようなお店を見つけた。川沿いの木々がライトアップされ、背面に見える暖色系で照明が使われた駅とマッチしている。真っ白な照明を漏らした列車は暗闇の中でも一層存在感を増していたが、駅に到着する姿はライトアップされた木々と不思議と馴染んでいた。

奥に見えるのは飯田橋駅。暗くなってからのお散歩も悪くない。

 この通り沿いは大学や専門学校の敷地が多く、東京理科大学や中央大学といった有名な大学のキャンパスも立ち並んでいる。時刻は19時半を回った頃であったが既に多くの大学キャンパスは閉鎖されており、都内と言えど思ったより閉館時刻が早いようだ。飯田橋駅の次、市ヶ谷駅まではこれまで歩いてきた区間と比べると駅間距離が少し長い。そしてこれといった目ぼしい何かがあるわけでもない。しかし川沿いに立ち並ぶ建物の看板を見て「ここにはこんな建物があるんだ」と思ったり「この看板変だなー」と感じたりして楽しんだ。一番印象に強いのは、塾の看板のネオンサインが一部切れてて「合格実績」が「合各実責」となっていたこと。いやほんとどうでもいいようなことだけど逆に言えばこれぐらいしかネタになりそうなものが無かった。ぶっちゃけ、この記事を執筆している時点で飯田橋駅を出るまでの記憶は鮮明に残っているけどそれより先は殆ど覚えていないのである。お昼とか明るい時間帯に散歩していたらまた違った印象なのかなーと思うからまたいつか歩いてみたい所存。

通りすがりに撮った中央大学の市ヶ谷田町キャンパス。私立大ってやっぱきれいだな…
電車の中からよく見え、見るたびに気になっていた「かねふく」の看板。
看板の下は明太子が売っている…ことはなく、中華料理店が構えられていた。

 無心で歩いているとやがて東京メトロの市ヶ谷駅入り口が見え、同社券売機へ寄り道。再び地上に戻り橋を渡って今度はJRの市ヶ谷駅の改札まで行き本日5回目ぐらいのチャージを行った。実は市ヶ谷駅も都営が乗り入れているが、川で駅が分断されていたりそもそも都営が接続していることを知らなかったりで都営市ヶ谷駅の存在を知らずスルーしてしまった。ところでこれは散歩の為に歩いているのか領収書を集めるために歩いているのかなんなんだか…。


さよなら外堀通り、こんにちは新宿通り

 今まで散々楽しい楽しいと言って歩いていたが市ヶ谷駅に近づいてきた辺りで流石に疲労を感じ始めた。しかしここまで徒歩で来ている以上、今更電車に乗り換えるわけにもいかないと謎のプライドが発揮するし足は前へ前へとしきりに出たがっている。「学校帰りにこんなことできる機会も中々ないよな」と思いせっかくなので新宿まで歩くことを決意。市ヶ谷駅を過ぎると線路は更に南下し、地図で見ると新宿手前は窪んだ線形となっている。このまま線路沿いを行ってもただの遠回りだし、西方向に直進すれば新宿駅にぶつかるので若干のショートカットをすることにした。最初は市ヶ谷駅を出たら線路沿いから離れようと思ったが、市ヶ谷駅の次、四ツ谷駅まで近づいたころで新宿通りと交わり、その方が曲がる回数も少なく済みそうだったのでそこまでは変わらず線路沿いを歩くことにした。市ヶ谷を出てしばらくするといつの間にか川が無くなっていて、線路と道路の間には公共の広場(運動公園?)があった。どうやら江戸城外堀跡の水が張られた部分はここまでのようで、広場の中にあるグラウンドでは野球少年たちがナイターを繰り広げていた。ナイターで汗を流す少年たちを眺めながらカーブを描く道路を進んでいく。この辺りは坂道が多く起伏の変化が激しい。外堀通りの道幅が再び広くなってきたところで東京メトロ四ツ谷駅の看板が見え始め、いつものごとく券売機に寄って地上に出たのち新宿通りと交わる交差点で外堀通りとはお別れをした。こんにちは新宿通り。


ラストスパート!!

 だらだらと書いてきたこの記事もいよいよ終盤…既に1万1000文字に渡る私の駄文を読んでくれてる画面のむこうの読者、ありがとう。でもあともう少し駄文は続くんだ…散歩から3か月経ってなんとか記憶を捻り出して書いているけどもうこの辺りからは本当に曖昧なことしか覚えていないんだ…。
 余談はさておき、実際ここまで歩いて脚の疲労を感じないはずが無いし、川沿いを離れてからはぶっちゃけ消化試合のような心持ちで歩いていた。それでも地下鉄の駅の入り口を見つけたら欠かさず券売機までは行き再び地上に戻っていたし、幹線道路沿いにはぽつぽつと特徴的な建物があるから単調なものではなかった。騒がしい幹線道路を一本入るとそこは閑静な住宅街が広がっていたり、築30年以上経っていそうな古めかしいビル群の真ん中に申し訳程度に公園がぽつんと置かれていたり、通り沿いにあるたい焼き屋さんがすごくおいしそうだなーと思ったり。たい焼きは買って食べようか本当に迷った。これだけ動いているから流石にお腹も空いていたし、でも金欠気味だから多少の倹約はしないといけないし…しかし迷っている間も足は前へ前へと止まらず気付いたらお店が後ろに遠のいていたから結局諦めた。またここらを歩く機会はあるのか分からないけど、次ここを通ったら絶対に食べるぞたい焼き屋さん。

新宿通り直下を走る丸ノ内線。作られた年代が影響しているのか、地上の入り口から改札までがすごく短い。疲労がたまってきた足には優しい設計。それにしても改札外からでもこんな間近に地下鉄ホームが見えるのは面白い。
信号待ちしている時に見つけた派手なビル。ようこそ、四谷へ。

 自分は基本的に外では地図アプリを使わない。行ったことない場所でも基本的に駅や街中にある地図看板である程度方角と位置を把握したらその後は己の土地勘で歩くスタイルが定着している。見たことのない景色を楽しみたいし、マップを見ながらだと景色を覚えにくいからだ。新宿駅までの行き方も市ヶ谷駅を出たあたりからは確認していなかったが、道路に書かれた看板を頼りに道を進んでいった。途中で「新宿西口≫」の文字が見え交差点を曲がる。しばらく歩くと、新宿駅近辺の自分がよく歩く道に出てきた。途中で新宿の地下道に入り、メトロと都営の新宿駅領収書を獲得したのち無事に新宿駅JR改札へゴール!!新宿まで歩くという思わぬお散歩ルートとなったが、約5時間半、10kmに渡るぶらり旅が終了した。
 ちなみにこのあと新宿からの電車内でめちゃくちゃ爆睡して最寄り駅を寝過ごした


終わりに

 ここまで読んでくれた人、本当にありがとう。ただのお散歩記事のはずなのに気づいたら1万文字越えててもはやssぐらいの分量になっていた。初めてのお散歩記事だったけどいかがだったでしょうか?
 実際に歩いたのは6月の初めなのにこの記事の半分以上は8月の終わりに書いているし何が何だかっていう感じだけど、3か月近く経っても覚えているものは鮮明に覚えていたし、書いてる途中で「あの場所/建物って何だったんだろう」と思って地図を見たら「ここの近くにxxがあったんだ!!」みたいな新たな発見もあったし、なにより書いててすごく楽しかった。またこうやって普段歩かない場所をお散歩したいな…