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スモールビジネスの戦略を立案する「戦略構築ステップ3:対象顧客セグメントを明確にしバーニングニーズを発見する」
まず、この章のサマリは以下になります。
探査領域内で美味しそうな顧客セグメントを発見しなさい。
その顧客セグメントのバーニングニーズを発見しサービスを構築しなさい。
見つかるまで探し続けなさい。
この章で語られていること
ここまでで調べたエクセレントカンパニーのサービスからマイナーチェンジのコピー品を作る方法を解説されている。ここまでで、儲かっている会社とその儲かっている理由がわかっているはずである。
筆者はニーズ、ペイン、ジョブなど様々な軸で語っているが、ここではシンプルにニーズだけを取り上げておく。
いわゆる顧客課題を考えていくときの軸をここから説明する。ここではニーズを選定する方針や、考えるときの観点を説明している。具体的な課題探索はデザイン思考などの方法を活用すると良い。
様々なニーズがある
ニーズといっても様々なものがある。例えば、
頭が痒い(ニーズ)、指でかいた(ソリューション)
これはニーズではあるが、お金を払ってもでも解決したいものではない
一方、
寝坊をして会社に遅れそうになったので(ニーズ)、タクシーで出社した(ソリューション)
これは緊急性の高いニーズでお金を払ってでも解決したいものである。
このようにニーズといっても緊急性の高いものや、この後紹介するような、ビジネス化を考えた時に狙い所のニーズなど、様々な観点がある。
この章ではこのようなニーズの種類、観点について解説がされている。
ニーズを発見するための前提条件
その上で、まず条件として以下を意識する
1. 課題解決型に着目すること:市場が成熟(もしくは伸びており)、顧客が課題を認識し、課題が解決でき、課題解決にお金を払うニーズ(バーニングニーズ)に注目する
2. 欲望実現型のニーズには着目しないこと:欲望実現型は、市場を作り、顧客に課題を認識させる啓蒙活動をし、お金を払わせる、というステップに時間がかかる
3. 課題解決した際に、購買行動(お金を払う)が伴うものにする。課題を解決したが無料ではだめ。
特に2はロマンがあり、やりがいがあるため、事業開発でよく陥りがちなポイントである。もちろん市場を作り、大きな社会変革をする、という仕事は存在する。しかし、スモールビジネスとして、短期に成果を上げていくためには、泥臭い方法で、すでにある市場(もしくは伸びている市場)を目指す方が合理的である。
2のパターンでは、顧客の課題を明確化し、それに対する解決策(ソリューション)を作るだけでなく、購買行動の喚起、市場の形成など幾多の困難が発生する。そのステップをすべて成功させるのはかなりの労力がかかる。(いわゆる、Problem Solution Fit、Product Market Fitなどを一から進めないといけない)
コラムでも語られているように、2の取り組みを行うと、幾多の失敗が待ち構えている。その失敗を許容するならば、2がよい。ただし、先人の知恵を活用し、自分が立ち向かうべき失敗にフォーカスして、1で進めるのがよいだろう。
1の形で、すでに成立しているビジネスに、自分が対象とする顧客セグメントのニーズを反映させ、マイナーチェンジのコピー品を作るのがスモールビジネスである。
購買行動における訴求軸(売り上げアップか、生産性向上=利益改善か)
加えて先に訴求する軸のポイントも整理しておく。
顧客のニーズのうち、購買行動を伴うものをピックアップするのが前提条件であった。いわゆる価値の交換を金銭によって行う(昔は、それを物物交換としていたわけだが)
どんな購買行動の訴求軸があるのか、整理しておこう。特にB2Bの場合は以下の2軸である
1. そのニーズを満たせば、売り上げが上がるもの(いわゆるフロントオフィス)
2. そのニーズを満たせば、利益の改善が図られるもの(いわゆるバックオフィス)
ビジネスの場合、売上を上げて利益を増やす、か、売上はそのままで利益を増やす(改善する)か、どちらかしか選択肢はない。どちらかの選択肢において、課題が存在し、その対価としてサービスを導入する。
1,2のどちらの方が、訴求しやすいか?答えは1である。
利益の改善は、効果は出るが、ユーザーの欲望度としてはやはり売上なのである。
書籍の中でも紹介されているが、1を優先したセールストークを意識する必要がある。
例えば良い例として1のパターンでは
「顧客管理システムを入れることで、お客様のリード管理がしやすくなり、アプローチの数も精度も上がります。それによって、営業の売り上げも上がりますよ!」
悪い例として2のパターンでは
「顧客管理システムを入れることで、営業人員の管理コストの削減ができます。今いる人員を減らすこともできます。このサービス1つで人件費三人分が減らせますよ!」
同じサービスを言うにしても、1か2かでお客様のニーズにマッチするかどうかが変わる。
もちろん、お客様のビジネスの状況において、どちらが正しいかはケースバイケースである。が、1を優先的に考えてみるのがよいだろう。
バーニングニーズと市場浸透理論
ここまでで、どのような課題・ニーズに対してアプローチをしていくかはわかったと思う。その条件を満たす数あるニーズの中で、特に優先すべきものは何か?
それがバーニングニーズである。再掲すると以下のものを見つけよう。
市場が成熟(もしくは伸びており)、顧客が課題を認識し、課題が解決でき、課題解決にお金を払うニーズ(バーニングニーズ)に注目する
バーニングニーズは特に、絶対にお金を払ってでも解決したい優先順位の高いもの、である。
自分に置き換えて考えてみてほしい。特に緊急に解決しなければならない課題が存在したとき、それに対しては、通常払っている金銭感覚を超えて、お金を払うだろう。
例えば、夜遅くなって公共交通機関がないが、どうしても家に帰らなければならない。その時は、普段は使わないタクシーを使って帰る。これもバーニングニーズである。
そのようなニーズに着目する時、もう一つ考えておくべき軸がある。それが本書にある
「スモールビジネスでは、持っている人は少人数であるが必ず存在するバーニングニーズに着目する、スケーラビリティなんて気にしなくて良い」
である。
その理由を解説しておく。
1. すでにここまでで儲かる市場は見つけている。またその領域において幾つかのバーニングニーズ(購買行動はもちろん含んでいる)が見つかっていたとする
2. その上で、すでに多くの人が持っているバーニングニーズは検討から外す、と言うことである
3. 理由は、そのようなニーズはすでに解決されている可能性がある(逆に解決されていなければチャンスである)
4. また、課題解決型のニーズであれば、そのニーズを解決したのち、市場浸透理論によってアーリーアダプターから、マジョリティに拡散されていく
いわゆるイノベータ理論のことである。エクストリームユーザーのようにすでに独自の解決策を持っているユーザーも存在する領域である。
いわゆるイノベータ理論のことである。エクストリームユーザーのようにすでに独自の解決策を持っているユーザーも存在する領域である。
![](https://assets.st-note.com/img/1706241287007-iB5gEo4joe.png)
プロダクトライフサイクルも思い出してほしい。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/128818582/picture_pc_d925b02936c7c0d12aa390dff7895dd5.gif)
スケーラビリティを求めずとも、すでに適切な市場、適切な購買行動があるニーズをチョイスしていれば、あとは、本当に困っているニーズを選ぶことで自然と良いニーズにたどり着ける。
一方、単に顧客課題だけに着目し、ニーズを見つける手順では、うまくいかない。市場がない、儲かっている企業がない、購買行動を伴わない、が、スケールしないニーズに着目してしまうと、ビジネスにはならない。
バーニングニーズの把握方法
では、どのようにしてニーズを把握するか?以下のポイントを押さえると良い。
売れているサービスの着火点(どこがみんなも使いたい!と思わせる起爆剤になったか?)をたどる。
自分が着目している儲かる企業のサービスの着火点や、他の事業領域で成功しているサービスの着火点を調べる。
例えば、Paypayなどは、支払側としてはポイントがつくので使いたい、店側は無料で導入できる+営業マンが勝手に設置してくれる、ということで爆発的に広がった。
ちなみに、人間の欲望はとどまることを知らないので、例えすでに解決された課題があっても、さらに便利なものが出てくれば、乗り換えてしまう点は注意しておくこと。
顧客に憑依する
顧客の気持ちになって考える、と言うのが基本である。ペルソナ手法と同じである。
ここでのポイントは
1.「エリートは非エリートの感情シミュレーションをできるようになる」と本書では書かれている点である。これは、自分の価値観ではなく、ペルソナの価値感で考えるということである。自分なら購買行動に繋がらないニーズでも、ペルソナはニーズとして感じるものがある。例えば、40代のおじさんは痩せたいというニーズを持っているが、10代の若い男性が同じニーズを持っているとは限らない
2. 都合のよいペルソナをつくらない。自分のサービスを使ってくれる、買ってくれる勝手なユーザーを作るのはやめよう。本当に困っていて、お金を払うユーザーを正しく精査しよう
顧客セグメントを特化させる
いわゆるターゲット層の絞り込みをし、深いニーズに刺すということである。
また、顧客セグメントを特に自分たちの顧客基盤に当てはめて考えられれば、集客・認知のコストも減るのでなお良い。これは「自分の経験と能力が活用できるセグメント」である。
例えば、地域の中小企業に強い顧客基盤を持っていれば、ここまでで考えてきた儲かっている企業の事業領域・バーニングニーズを、自社の顧客基盤のケースに当てはめて、さらに尖ったサービスを作ることも可能になる。いわゆるローカライズである。
補足:顧客セグメントの分解と軸
セグメントを特化させる場合には以下を注意する。
ここは一般的なマーケティングでも語れているが、顧客のセグメントを意識する場合、その軸はニーズを区分する軸にしよう。
本書では「ニーズでくくる」と表現されているが、
いわゆる年齢、性別などの属性ではなく、ポジショニングマップを作れる軸とすること。
このセグメントの中で自分たちがトライする顧客セグメントを整理することを意識する。
![](https://assets.st-note.com/img/1706241523711-Z5eBHSYznN.png?width=1200)
顧客セグメントにおける注意点
ここまでで、バーニングニーズの把握方法を簡単に紹介した。実際の課題探索はデザイン思考などで行うとして、スモールビジネスの観点から避けた方がいい顧客セグメントを考えておく。
顧客のセグメントを分けていくと様々なペルソナ像が出てくる。ただ、できれば避けた方がいいセグメントも存在する。
避けた方がいいセグメント
1. 金払いが悪く要求が多い:購買活動に繋がらないため
2. ノービジョンサラリーマン:いわゆる何も考えず生活している人である。参入時に営業やヒアリングをして、この人たちの意見を聞いても得られるものは少ない。PDCAも回しにくい。
3. 医療・金融:すでに競合もかなり多く、小規模な取り組みでは参入しにくい
4. コストが叩かれている業界:単純にすでに硬直化して成熟してコスト競争をしている領域。投資するための原資がない。
5. 多くの人に目の触れる業界(飲食、アパレル、エンタメなど):派手であるがゆえに参入している人が多く、競争が激しく利益率が低い。前にも紹介した、他人から賞賛されるセグメントは避けた方がいい。
コストが叩かれている業界は多くの場合、5force分析において厳しい状況にある業界・プレーヤーである。
![](https://assets.st-note.com/img/1706241699346-xrQ2msUCXE.jpg?width=1200)
狙うべきセグメント
一方、狙うべきセグメントも存在する。その特徴としては
1. 顧客セグメント自体が成長している
2. 投資意欲が旺盛
3. 利益率が定常的に高い
4. 新規参入の人気がない
これらのセグメントは、競争が少なく、目立ちにくいのでビジネス展開しやすい。がっちり稼ぐ小さな会社はこの辺りのセグメントで、「実は儲けている」という会社が多い。
例えば、不動産セグメントは今も投資が伸びており、賃貸の需要も伸びている。そのような状況の中、稼いでいる会社の一つが、日本セーフティー株式会社である。単純に家賃債務保証をメインでおこなっている会社であるが、素晴らしい利益率・額を叩き出している。
この顧客セグメントは、伸びている不動産市場の中で、家賃債務管理が大変な不動産オーナーで、代行費用を払ってでもお願いしたい、という層である。金払いもよくいいセグメントである。
![](https://assets.st-note.com/img/1706241796804-F8IM9YTmMq.jpg?width=1200)
引用元:https://www.nihon-safety.co.jp/company/ir/
どの予算を狙うか?
セグメントの選定する視点もわかったところで、最後の原資・予算の話をしておく。
ここまでで、儲かる市場で、バーニングニーズ(課題解決した際の購買行動も伴う)について、顧客セグメントも絞れた。
ではその人たちが持つ予算・原資のうちどこを狙えばいいのだろうか?
まず、原資が乏しい市場はもちろんここまでで排除しておかなければならない。例えば中高生に対して、サービスを提供しても親の財布程度の原資しかない。
一方、原資がたくさんある中ではどの予算を狙うか?については、以下を注意しよう。
1. この予算が何のための予算か、理解しているもの:つまり強いニーズがあり、それに対して対価を払ってでも解決したいものがある。例えば人材不足の昨今においての人材採用のための予算
2. 予算削減プレッシャーが弱い予算:例えば、古典的な大企業におけるESG投資や研修費用、定常的に運営されているサービスの保守費用。逆に原価参入されている部品代金、人件費は利益改善プレッシャーが強い。
ここでは一般的な議論をしているが、プレッシャーの強さは以下の要素も関係する。
サービスの代替性(簡単に他のもので代替できると安い方を買いたくなる)
購買決定プロセス(代替品はあっても、決裁を取るのが大変なので、高いサービスのまま継続されている)
顧客セグメント(相手の事業領域において、利益改善をしやすい業務と、しにくい=高くても外部サービスを使いたい、ものがある)
まとめ
この章では、以下を実施した
探査領域内で美味しそうな顧客セグメントを発見しなさい。
その顧客セグメントのバーニングニーズを発見しサービスを構築しなさい。
見つかるまで探し続けなさい。
特に顧客の購買行動につながるバーニングニーズをベースにしながら、攻めるべき顧客セグメント・予算にも言及した。もしこのようなバーニングニーズが見つかっていれば、あとは、マイナーチェンジのコピー品を作ることがタスクとなる。
受講者へのお願い
1、自分が現在担当している領域で、バーニングニーズと捉えられる他社の事例を調べてください。
バーニングニーズの条件として、以下を満たしているかも説明してください。
・課題解決型であること:市場が成熟(もしくは伸びており)、顧客が課題を認識し、お金を払う
・その課題は、数ある課題の中で緊急度が高いもの
・着火点が明確であるもの:サービスが広がる起爆剤は何だったか。
・狙うべき顧客セグメントに入っている
・原資・予算が存在する
2、1で説明した他社事例を参考に、その周辺の課題を考え、新しいバーニングニーズと考えられるものを提案してください(難しいと思うので可能な範囲でOKです)
補足:もし、自分の担当領域の調査が難しい場合は、自分の興味ある業界(美容、健康、育児など)において、1、2を実施してください。