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製図道具の思い出(5)

第二原図

今は、CADの機能で簡単に図面の複製ができるが、手書き図面の時代は簡単ではなかった。複製を作るのことを第二原図を作る、と呼んでいた。

青焼き機と呼ばれたジアゾ複写機に、第二原紙と呼ぶ特別な複写用紙でコピーをする。そのコピーは原紙ほどではないが透明度があるので、そのコピーを使ってさらにコピーができた。だから第二原紙と第二原図とか呼ばれた。

何故、そのようなことをするのか? 修正をするためだ。第二原紙用の修正液というのがあり、それで修正したい部分を消すことができる。結構面倒で、まず消去用の液で消しておいて、液をふき取って、定着用の液で定着させるのだ。定着をきちんとしないと、コピーをしたときに消し残しとして現れるので、コピーのおばさんとか現場の人に嫌がられる。

編集設計

時代は下って、PPC複写機が出始めた。まだアナログだが、トナーを紙に定着させる仕組みのコピー機で、専用の複写用紙は不要で普通紙にコピーができた。ただし、修正をすることができない。トナーが紙の繊維に溶け込むからだ。それから、ランニングコストが青焼き機より桁違いに高価なので、第二原図作成目的で使いはじめた。トレーシングペーパーという透明度のある紙を使った。
(出図用に使うようになるのは5-6年後くらいと記憶している)

修正をする場合、二通りの方法がある。
1番目は、修正液で修正部分を溶かしとる方法だ。1液タイプで、消したら終り。だが、物理的に溶かすので時間が掛かる。(ジアゾ複写機の修正液は化学反応なので早い)そのため、修正部分が広範囲になると時間的にこの方法は使えない。

2番目が、編集設計と呼んでいた方法だ。ゼロックス社の社員が出張デモで紹介していたのが懐かしい。
いろいろテクニックはあるが、基本的には原理は同じで、修正したい部分を紙で隠しておいて、もう一度コピーする方法だ。コピーを重ねると細かい部分がつぶれてしまったり、原寸再生度がわるくなるので、それを嫌う場合は、未定着コピーという機能を使ったりもした。これは、トナーを定着させないでコピーをする方法で、ティッシュペーパーで簡単にふき取ることができる。消し終わったら今度は定着だけさせる。消した部分に改めて製図するというやり方。

透明シールに、表題欄とかよく使用する注記、シンボルなどをコピーしたものを用意しておき、図面に貼るというのもその応用で、以前はゴム印を作っていたのが不要になった。

これら編集設計のテクニックは、そのまま2DCADの機能に反映されている。なので、手書きと同じ要領でCADに移行することができた。しかも、CADはデジタルなので、完全に同じものを何度も再利用することが出来る点で画期的だった。その結果、大した苦労をせずに設計を再利用できるようになった。そのうち、再利用することが設計だと勘違いする人が出てきたことは嘆かわしい。

トレーシングペーパー vs コットン紙

原図は和紙を使っていた。丈夫で、折り目がコピーに出ないので使い勝手が大変によい。一方、トレーシングペーパーはパリパリで破れやすく、折り目が見事にコピーに出てしまう。使い勝手が悪い事この上ない。

で、採用したのがコットン紙。綿で出来ているので紙と呼ばないかもしれないが、これは湿気に強く(もともとは海図用だとのこと)、丈夫で、折り目が目立たない。しかも、修正液が使えるという優れもの。鉛筆ののりも良くて気にいっていた。海外工場に派遣された社員が見つけてきたもので、修正液は輸入品。海外出張者が帰国の際に買い込んできたのが懐かしい。


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