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金とき
2022年12月25日 11:51
マフラーを丸めて、首を傾げた。初めてつけたイヤリングがさらりと揺れる。 彼の黒い車が、ようやく到着した。助手席に乗り込んで、腕を伸ばして後部座席に荷物を置く。白いマフラーも一緒に置いた。「ごめん」 彼が言った。「寒かったよね。30分も遅れちゃった」 私は不満だった。彼の一言目が、イヤリングかわいいねではなかったことが。髪型アップにしていてかわいいねでもよかった。別に、いつもと
2020年12月23日 18:29
ぷしゅーっとドアが開いて、何人か、僕の横を通り抜けた。冷たい空気が入り込んで少し震える。ぼんやりと、ドアの外を眺める。陽の落ちたばかりの青藍の空に、ぽつぽつと、白い光の粒が舞い始めていた。 狭いバスの車内は、なんだかいつもよりいい香りがする。女のひとのヒールはいつもより細いし、男のひとの髪の毛はぴしっとあがっている。小さな子どもはぽんぽんのついた帽子を被って、鼻を赤く染めて笑う。僕はおろした