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金とき
2021年4月18日 17:26
※単体のお話です ボールの音が響く。きゅきゅっと、あちこちでバッシュも鳴る。放課後の体育館は賑やかで、暑苦しくて、どきどきする。独特の匂いがして、胸が高鳴る。「やなー、こっち手伝ってー」「はい!」 松井先輩が、ボール籠とタイマーを抱えて動けなくなっていた。俺は走り寄ってタイマーを持ち上げる。「ありがと」「なんでこんなの、一人で運ぼうとするんですか。明らかに無理でしょ」「
2021年4月5日 18:17
※単体のお話です 涙で滲んだ視界いっぱいに、花のように儚い女性の顔。目尻から頬をすっと涙が伝う。『待ってるから。ゆっくり来てね』 俺は声を殺すのに必死だった。女性は手を伸ばそうとして指を震わせる。それを見た男性が、その手を強く握る。『理沙』 名前を呼ぶしかできない男性は、大粒の涙を落とす。俺もさっきからぽたぽたと滴るほどに泣いている。女性がそっとゆっくり微笑んで、それから目をつ