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金とき
2021年8月26日 17:02
目を覚ます。ぼんやりとした黄色い灯りがぼくを見下ろしている。少し怖くなって、きみの指にそっと触れる。ひんやりと冷たい指が、オレンジ色に染まって見える。 んん、と唸って、きみの眉が歪む。描いていない、ぼやけた眉の形に、ぼくはうっすらと興奮を覚える。無防備なきみをもっと見たいと思うのは、知欲か、性欲か。 きみが目を開ける。目が合う。くちびるを、ぺろりとなめた。唾液が艶めいた。おやすみを言って
2021年8月18日 17:04
腰掛けた道路脇の段差は苔生していて、ところどころぬめっとしている。薄い布を隔ててお尻がひんやりと冷たい。下駄からすっと右足を出して、指を精一杯開いてみる。お母さん指とお父さん指の間がひりひり痛む。ちょっぴり砂っぽくて、汗ばんで、鼻緒の当たる足の甲はところどころ擦り切れている。 お祭りの夜は、なんだかいつもより暗い気がする。提灯や屋台の橙色の灯りが、星や月の光を隠してしまう。闇の輪郭がはっきり
2021年8月15日 19:37
「またぁ? 何人めよ、もう」 いい加減うざい、という顔で、晴菜がこちらを見た。ちらりと横目で確認しつつ、今日二つ目の玉子をレーンから取る。「でも、合わなかったんだもん」 醤油にわさびをたっぷりと溶かして(さっきも溶かしていたのに辛くないのだろうか)、玉子に巻かれた海苔を丁寧に箸で剥がす。まず海苔を醤油に浸す。それから玉子の内側も。またやってるよ、とじろじろ見ながら、あたしは言う。「