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2020年11月の記事一覧
笑いたくなんてなかった
四階建ての、小さなマンションだった。駅から遠くてかなり歩く。バスもあるみたいだけれど、彼とはいつも歩いていた。部屋番号を確認して、深く息を吸う。インターホンの前で、軽く目を瞑る。
笑っていれば大丈夫。優希ちゃんは可愛いんだから。
結城智也はいつもそう言って笑った。あたしはそのたびに、あんたなんて死んじゃえ、と言った。
ゆっくりと数字を三つ押して待つと、はい、と声が聞こえた。
「花澤
四階建ての、小さなマンションだった。駅から遠くてかなり歩く。バスもあるみたいだけれど、彼とはいつも歩いていた。部屋番号を確認して、深く息を吸う。インターホンの前で、軽く目を瞑る。
笑っていれば大丈夫。優希ちゃんは可愛いんだから。
結城智也はいつもそう言って笑った。あたしはそのたびに、あんたなんて死んじゃえ、と言った。
ゆっくりと数字を三つ押して待つと、はい、と声が聞こえた。
「花澤