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金成玟『K-POP 新感覚のメディア』感想

以前に山本浄邦『K-POP現代史――韓国大衆音楽の誕生からBTSまで』を読んでおり、その本によって得た知識、その本の内容との対比を意識しながら読んでいました。

K-POPというものを定義の難しさを述べています。

「韓国でつくられたポピュラー音楽」では大きすぎるし、「特定の音楽ジャンル」では小さすぎる。しかも、そのカテゴリーの中身は世界のトレンドの変化とともに常に更新される。

金成玟『K-POP 新感覚のメディア』p.v

これはK-POPに限らず、ポップス(J-POPも)における難点であり、あらゆる音楽ジャンルを吸収しながらキャッチーで特定のファン層ではないところに向けてリーチしようとしているものは概ねそうなのではないかなという気がします。

かなり多くのアーティスト名をあげていて、私が今好きなNewJeansやLE SSERAFIM、aespa、IVEなどが先輩としてあげているBoA、CL、IUなど、ソロアーティストまであげているところはK-POPの知識を網羅的に摂取したいという点では参考になりました。それこそ、先日、NewJeansはIUのライブのO.A.をつとめていましたり、確かコラボ曲も出すんじゃなかったかな。そんなことをMCで言っていた気がする。

第1章K-POPの誕生、第2章K-POPの拡大では、当時あった韓国の歌謡曲シーンとは別に、ブラックミュージックからの影響、MTVを背景にした聴くだけではなく視る音楽、J-POPからの影響などがありながら、徐々に韓国独自の音楽が90年代に生まれてくるということが書かれてました。また、それぞれの会社のマネジメント的な面にも触れていて、そこはちょっと特殊で面白いと感じました。現在のアイドルの専属契約が一般的に7年というのは幾度かのアイドルと会社との裁判等を経て、最長で7年になっているというのは学び。法的根拠がちゃんとあったんだなー。PSYの江南スタイルがYouTubeの再生数をカンストしただかって話も知らなかった。そういう流行っているものがあるということは知っていたけれど、そもそもポップス的なものに対して関心がなかったので深く知ろうとも当時は思っていなかった。

第3章K-POPの感覚で興味深かったのが2016年のキャンドルデモにおいて、学生たちがデモを解散させられる直前に歌っていたので少女時代の「Into the New World」だったこと。デモなんかにおいて歌われるのはその活動の根幹に関わる精神性をもったものが選ばれるのが多いというのが私のイメージで、そうなると、デモの歴史的背景から古い労働歌、日本だとフォークとか、韓国だと往々にして「民衆歌謡」というものが歌われて痛そうなのですが、デモの主体が学生という若い層だったということもあるのでしょうが、社会に対する抗議の意思を表明する歌として少女時代の曲が歌われていたというのは、K-POPというジャンルの始祖と言っていいであろうソテジワアイドゥルから続く、歴史的文脈みたいなものを感じました。こういうものはJ-POPには全くないと言っていいでしょう。海外であればこれらはポップスではなく、ロックやフォーク、ブルース、ロックンロールを吸収したプロテストソングであったり、ヒップホップを経たジャンルが担っていたりと、ポップスにはなかなか結び付きにくいところが特殊だなと感じます。ただ、私が、K-POPをそういう風に解釈したいと思っている節があるので、相当バイアスがかかっているとも思います。

第4章K-POPの核心は正直退屈でした。アイドルの一般論的な見解や、ポップスの一般的な見解が並べられているだけ。ただ、K-POPがどのような場所から発信されているのか、事務所はどこにあるのか、また、ソウルという都市はどのように発展したのかというところに触れている、しかも地図まであるところが、とても助かります。実は今、ソン・ウォンピョン『三十の反撃』を読んでいるのですが、舞台がソウルで江南に本社がある大企業の小さな会社で勤務先は江南じゃない外れにあるのですが、あー、行ったことはないけどなんか知ってるみたいな気持ちになりました。ありがたい。

おわりには、流し読みでしたので、あまり印象に残ってないです。

全体的に詳細にアーティスト名を記載していたり、統計データなどの表などを用いて書かれているところは、単なる印象ではなくデータとしてそうなっているということが分かるので、K-POPのガイドとして知識を得ることができるガイドとして勉強になる内容でした。
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では、ごきげんよう。

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