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そろそろ、海老の話をしようか
海老の種類に「強そうなやつ」がいる。
たとえば、ブラックタイガー。
「黒い虎」である。ずいぶんと強気な名前だ。確かに黒くて雄々しい姿だが、エビ本人は納得しているんだろうか。「なんかすごい名前つけられちゃったよ、おれ」と困惑しているのではないだろうか。だって、人間で言えば「黒岩虎次郎」である。かなり「いかつい」と言わざるを得ない。
ちなみに黒岩虎次郎は、別名「ウシエビ」とも呼ばれる。一見、穏やかそうなイメージのある牛だが、なかなかどうして。あれは暴れ出したら手がつけられない動物である。コロッセウムでマタドールを執拗に追い回す姿は「獰猛」そのもの。やはり「強そう」である。
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(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑より)
次は「クマエビ」。
でた。「熊」である。海老なのに「熊」。命名者はその茶色く丸々としたボディーに「ヒグマ」をみたのに違いない。彼は、捕まえたエビがぴちぴちと跳ねる様子を観察しながら、ぽつりと言うのである。
「これは、ヒグマだな。名は、クマエビ」
エビを見ながら「ヒグマだな」とは。なかなか想像力が逞しい。じつはこの、小さな生物に「強い生物の名を冠する」という現象はよく見られる。「オニカサゴ」などは好例であろう。鬼はどう考えても強い。
反対に「強い生き物に、か弱い生物の名を冠する」というのは、あまりないようだ。ただ、これは想像してみるとわかりやすい。
山を歩いていると、命名者は熊を見つける。そして、ぽつりと言うのだ。
「これは、エビだな。名は、エビクマ」
いいから早く逃げろと言いたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1671846304446-c84E3SOzmR.jpg?width=800)
(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑より)
これもすごい。
「クルマエビ」である。
エビのすがたに「車」を見たわけだ。点火されたガソリンがエネルギーを生み出し、鉄の塊を高速で走らせる「車」。もはや生物ですらない。車と見間違うほどに泳ぎぶりが機械的で力強く、高速だったんだろうか。だとしたら、やはり彼は言ったのだろう。
「あれは、車か?」
![](https://assets.st-note.com/img/1671864197930-Sh5ES7eT0D.jpg?width=800)
(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑より)
命名の現場は、クリエイティブだ。
きょうもお読みいただきまして、
ありがとうございます。
それでは、また明日。
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