遠慮のかたまりをいただこう。
宴席にて。
空腹を抱えた数人で矢継ぎ早に注文。
ほどなくテーブルにお皿が運ばれる。
湯気を立てる皿で一杯になる食卓。
各々が心のままに箸を伸ばし、口へ運ぶ。
会食は和やかな雰囲気で進む。
つぎつぎに新しい皿が運ばれ、
空いた皿は下げられていく。
やがて卓上の均衡が崩れ始める。
テーブルの上には、
ひと口分のもやし炒め。
2つの焼き餃子。
たくあんがひと切れ。
複雑に交錯する「遠慮」が、
そのすがたを現しはじめたのだ。
これは、
わたしが食べるべきなのだろうか。
しかし先輩であるA氏を差し置いて、
しゃしゃり出るのはいかがなものか。
仕切り屋とか思われても困る。
まて。
ここは女性に一言オススメしておくべきか。
「ぎょうざ、食べませんか?」
いや、そんなことを言えば、
「フードハラスメント」と
捉えられてしまうかもしれないし、
あまつさえ「食いしん坊マン」と
揶揄されてしまう危険性をはらむ。
こうして逡巡する間にも着々と、
もやしは萎れ、餃子は冷める。
どうする。
おい、なぜ、平気な顔で談笑している。
なんで誰も気にならないのか。
機を逸すれば本来の味わいを損ないかねん。
事態は、急を要する。
どうする。どうする。
不意に、連れのひとりが、
「すいませぇーん、山芋鉄板とたこぶつ!」
…なんだと。
といった具合に。
食卓の「エントロピーの増大」が
気になってしょうがないのです。
提案です。
みなさん、
遠慮のかたまりをたべませんか。
きょうもお読みいただきまして、
ありがとうございます。
それでは、また明日。
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