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整うカラダと高潔な天丼(飛うめ/福岡)

先日、久方ぶりのサウナに入った時のこと。壁にかかっている温度計を読むと針は90℃を指していた。熱に浮かされぼーっとした頭で考えたのだが、12分の入浴を3度繰り返すとして、90℃36分。これ立派な低温調理ではないか。(湿度があるので体感温度としては60〜70℃らしい)そう考えればサウナ室が蒸し器に思えてくる。551の肉まんや崎陽軒のシュウマイの気分はどんなものかと思いを馳せつつ、熱気を堪能し汗を流したのである。

さて近年のサウナブームにより「整う」という言葉が流行している。この「整う」に近い感覚を僕はジョギングの最中にも感じることがある。四肢がふわりと軽くなり、意識が頭頂部から抜け出し肉体の数十センチ上を浮遊しているような感覚。考えているようで何も考えていない。景色や音や感触がスースーと空っぽの意識を通り過ぎていく。「無」を感じるような状態だ。

そんな「無」になることは僕程度のレベルでは稀なことなのだが、毎朝のジョギングコースで出会うランナーの中には「毎回入っちゃってるな」というツワモノがいらっしゃる。毎日同時刻に同コース上ですれ違うベテラン風のシニア。彼は地上5mmのあたりの空気をすり足のように滑らすフォームで無表情になめらかに流れていく。

その正確無比な足の運びは、ほぼロボ。すり足のASIMO。あまりに同じ軌道で反復するため、見ているこちらが今が昨日なのか今日なのか、はたまた明日なのか、と時空の歪みに引き寄せられるような感覚に捉われる。無我の境地、もはや舞に近いトランス感と推察する。いずれはその境地にたどり着きたいものである。

さて、与太話もほどほどに料理の話をしよう。

写真の天丼は福岡の「飛うめ」という老舗蕎麦店の天丼である。お米の上に海老天3本、以上。あまりに高潔な佇まい。創業70年を超えてなおソフィティスケートされまくり。しかも、驚くべきことに10秒くらいで着丼するのだ。これを熱々のうちにかかかっとかきこみ、午後の活力とする。シンプルで力強い味わいに胃と心に喝の入る粋な一杯である。

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