入門以上を目指すオタクはしんどい時代
美容室で新しい担当の方になると、「アニメは観ますか?」と聞かれることがあるのだけれども、これは第一印象がオタクに見えるということらしい。
しかし、イマドキ外観のまずさで趣味嗜好を類推するのは無理がある。
昨今では、様々な分野の入門的な、つまりそれほど理解の深度を要求されない部分のうちで気軽に楽しさを摂取できる要素がそれぞれyoutube動画などを通じて分かり易くかつ無料で呈示されている。
情報化が進んだのは結構なことだ。
オタクの人々が発信した情報のうち、手軽に取得できて愛玩しやすい部分を摘出して、1日イベント参加のような形で下積みをさほど必要としないままに楽しむことができる。
このため、各分野を適当に選択し、その分野を入門的な理解深度で気軽に楽しく短期間消費して、また時期を見て別の分野に移動していくといったキャラバン的な余暇活動を過ごすことが可能になっている。
動画を倍速視聴して、時間をかけることなくして周囲の好みに合わせてそれらしい感想などを述べる世渡りの技術も子どもたちの人口に膾炙しているらしい。
このようなキャラバン的な入門者ばかりになっている現状に対して、各分野のリーダー層としては、深い探究のための活動資金を確保するための仕組みを作る必要に迫られている。
それほど理解の深度を要求されない部分のうちで気軽に楽しさを摂取できる要素を呈示する無料のyoutube動画も実はそういった仕組みの一環として制作されていると考えるのが自然だ。そういったもので集められた者たちの消費活動(近年では推し活とも呼称される)によって高度な探究活動や保存活動が支えられている。
つまり、ある分野の愛好者の中でも少数の情報やグッズその他を発信する側と専ら消費する多数者側とに二分された構造が出来上がる。
こうなると二分された構造で割を食うのは中級以上の深度の探究を志向するタイプの入門者だ。入門者は、各市場に取り込まれて消費者の地位に固定化を強いられてしまうから、早々に稚拙でも発信側に回らなければ重課金を強いられるばかりになってしまう(課金が気にならない人はOKだけど)。
発信は、それなりに市場を観察する必要があるので、とくにオッサンにとっては逆風である。Vtuberやらメタバースやらでオッサンが美少女になりたがるのも無理はない。●●(特定の分野)アイドルよりもオレの方が断然知識だけは上だなどと嘯いたところで市場価値は月とスッポンなのだ。
こうしたしんどい状況で、中級以上の深度の探究を志向するタイプの入門者(とくにオッサン)はどう生きていけばいいのだろうか。
●●研究会(たとえば、鉄道研究会)というような学校のクラブやサークルでの活動は参考になる。そこでは、クローズドでありかつ対等な関係の下で、それぞれのメンバーが思い思いに興味関心分野を探究し、相互に研鑽する場であることが期待できる。学校を卒業しても、学校でのグループを参考にしたグループを立ち上げるのもいいだろう。
こうした性質のグループは、研究発表などしなくてもクローズドな対等関係の構造でのんびり過ごす志向のオタクにとっても快適な構造といえる。
サークルクラッシャータイプにさえ注意できれば、長く快適に楽しむことが期待できるだろう。