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NBAのスタッツ推移を色々グラフ化してみた

「ペース&スペース」等、NBAのトレンドについて語られる際、シーズン毎の平均3P試投数や、1試合の平均攻撃回数(Pace)の推移等のデータが出てきます。

このデータ面白いよなー、自分でも色々いじれたら楽しそうだよなー、と常々思っていたので、この機会にグラフ化してあれこれ考えてみることにしました。

1. データの取得元とグラフ化の方法

元にするデータはBasketball Referenceのこのページから取得しました。NBAの公式サイトにはより詳細なデータもありそうですが、手っ取り早くExcelでダウンロードできたので、こちらを採用しております。

このExcelを少し整形加工して、BIツール(Power BI)に読み込ませて、折れ線グラフにしてみました。各スタッツ項目でグラフ化してみて特色があったり、気になった項目を取り上げていきたいと思います。

なお、対象とするシーズンは3Pルールが導入され、一通りのスタッツが揃うようになった1979-80シーズンからとします。(データ自体は1946-47シーズンからあります。すごい!)軸の幅や色付けはPower BIのセンスに完全お任せ。一部、パーセント表記と小数表記が混在してますがご容赦下さい。

2. 平均得点

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直近の2019-20シーズンの平均得点111.8点は、3Pルールが導入されて以降最高だったようです。これはやはりペースアップや3P多投等のオフェンス戦略の進化によるところでしょうか。この辺りはその他の項目を見ながら掘り下げていきたいと思います。

一方最低は1998-99シーズンの91.6点。調べてみたら、このシーズンはロックアウトによる開幕遅れと試合数減、マイケル・ジョーダン2度目の引退等があり、停滞期に入っていくシーズンだったようです。その辺りの影響もあったのでしょうか?

推移としては、1984-85シーズン以降右肩下がり。98-99シーズンで底を打ち、以降は多少の上下動はありつつも右肩上がりで、19-20シーズンはついに頂点という流れですね。

3. Pace

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記事内で何度か触れている「ペース&スペース」のPaceです。

ばっくりと1試合の中で一方のチームが何回オフェンスの機会があるかを示した数字で、速攻やアーリーオフェンスでショットクロックが十分残っている状況でシュートを打つことが多ければ、この数字は高くなります。逆にセットオフェンスでショットクロック24秒使い切るようなオフェンスが多ければ、Paceは低くなります。

この数字を見ることで、リーグ全体がよりアップテンポなバスケをする傾向にあるのか、じっくり攻めていく傾向にあるのかが見えてきます。公式は下記の通りです。

Pace - Pace Factor (available since the 1973-74 season in the NBA); the formula is 48 * ((Tm Poss + Opp Poss) / (2 * (Tm MP / 5))). Pace factor is an estimate of the number of possessions per 48 minutes by a team. (Note: 40 minutes is used in the calculation for the WNBA.)

(Basketball Reference Glossaryより)
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html

推移は平均得点と非常に似ていますね。1998-99シーズンにかけて下がっていき、以降上がっていくという形です。98-99シーズンが底辺なのは平均得点と同じ。やはり得点が増えたのはリーグ全体のペースアップの影響が大きそうです。

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ちなみにPaceと平均得点のグラフを重ねると、推移が似ていることがよく分かりますね。

4. 3P試投割合

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今度は「ペース&スペース」の「スペース」の方です。3Pをたくさん打って、ディフェンスを広げ、ゴール下でより効率良く得点取ろうというトレンドです。

なお、ペースが上がるとシュート試投数全体が増え、つられて3P試投数も増えてしまいます。前述のペースアップによる影響を除外するため、「3P試投数÷シュート試投数」で3P試投割合を出してみました。

これはかなり右肩上がりですね。上がり方が気持ち急になった感のある2015年あたりはゴールデンステイト・ウォリアーズの黄金期です。スプラッシュブラザーズ効果でしょうか。ちなみに自分はウォリアーズファンです。

あと、94-95シーズンから3シーズン程、急上昇した期間がありますが、これも調べてみたところ、ちょうどこの期間3ポイントラインとゴールの距離を短縮していたようです。分かりやすくグラフに表れていて面白いですね。

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ちなみに3P成功率も一緒にプロットしてみると、こちらは95-96シーズン辺りまでは上昇傾向でしたが、以降は上がったり下がったりしつつも、ばっくりと横ばいです。このあたりにも、とにかく打ってスペースを広げることが大事だという戦略が出ている気がします。成功率が上がってきたから試投数が増えている、という訳ではないんですね。

5. eFG%(Effective Field Goal %)

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eFG% - Effective Field Goal Percentage; the formula is (FG + 0.5 * 3P) / FGA. This statistic adjusts for the fact that a 3-point field goal is worth one more point than a 2-point field goal. For example, suppose Player A goes 4 for 10 with 2 threes, while Player B goes 5 for 10 with 0 threes. Each player would have 10 points from field goals, and thus would have the same effective field goal percentage (50%).

(Basketball Reference Glossaryより)
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html

3P成功数を1.5倍にして計算するシュート成功率、eFG%。オフェンスの効率を高めるにはこの数字が非常に重要とされていますが、近年の伸びっぷりがすごいですね。

6. ORB%(オフェンスリバウンド獲得率)

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シュートが外れた際にオフェンス側がリバウンドを取った割合を示すORB%(オフェンスリバウンド獲得率)は1990年頃から右肩下がりです。

オフェンスリバウンドに人を割くと、取れなかった時にディフェンスへの戻りが遅くなり、相手の速攻を受けやすくなります。速攻が増えてペースが上がっているNBAでは、相手の速攻に備えるため、オフェンスリバウンドを取りに行かなくなっている、という説をよく聞きますね。

1980年代はPaceもORB%も高いという時代でしたが、この頃はオフェンスリバウンドを捨ててでも相手の速攻に備えよう、という発想はなかったんですかね?

7. TOV%(ターンオーバー率)

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1回のオフェンスでターンオーバーをする確率を示すTOV%は、上がったり下がったりですね。ただ、近年は減少傾向に見えるので、eFG%と併せて近年はやはりオフェンスの精度が上がっていると言えそうです。
(裏を返せばディフェンスの劣化とも言えてしまうんですが、どちらなのかは有識者の意見を聞いてみたいところです)

8. FTR(フリースロー獲得率)

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相手のファウルでフリースローをもらう割合を示すFTR(フリースロー獲得率)は2005年頃から減少傾向です。

これは結構意外でした。3P多投により空いたペイントエリアを積極的に攻めるようになると、ファウル→フリースローも増えていそうな印象でした。

あまりフリースロー減についての解釈は聞いたことがないので、ぜひ聞いてみたいところです。

9. ORTG(オフェンスレーティング)

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最後に100ポゼッション換算で何点取るかを示すORTG(オフェンスレーティング)です。Paceの影響を排するために、100ポゼッションで分母を揃えることで、オフェンス全般の質を見るための指標です。

2000年前後で沈み、2005年頃に盛り返し、2011-12シーズンで下がるも、以降は右肩上がり傾向、といった状況です。直近の19-20シーズンは過去最高を叩き出しており、やはり近年の伸び方が顕著ですね。

ORTGはここまでに触れてきた4 Factors(eFG%、ORB%、TOV%、FTR)が大いに影響しますが、ORB%とFTRがマイナスでも、eFG%とTOV%でのプラス分がそれを補って余りある、といった状況でしょうか。eFG%の伸びのインパクト大きいですね。

10. 終わりに

色々BIをいじっていたら楽しくなってきて、ついつい書きすぎてしまいました…。

ORTGに表れているように、近年のNBAはオフェンス全盛の時代と言えそうです。しかし、速攻が増えればオフェンスリバウンドを捨ててでも備える、といった対策が出てきたように、戦略の進化に対してしっかり対策がなされていくのがNBA。今後ディフェンスが盛り返していく時代もきっと来ると思います。

それが早速来シーズンの数字に表れるのか?楽しみにしたいと思います。

NBAは様々な数字を一般向けに公開してくれてますので、NBAやスタッツ好きの方は色々いじってみると楽しいですよ。

最後に書くことではなかったかもしれませんが、これは「スポーツアナリティクス Advent Calendar 2020」の4日目の記事です。
https://adventar.org/calendars/4955

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