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車の販売って、進化しないよな

感染症に大雨災害。旅行は支援するけど、ボランティアは県外から行っちゃダメ。決めてる人がバラバラだから、決断の基準があいまいなのか、矛盾が過ぎるなと思いつつ、過去に前例のない災害だからと、逃げ続けを許していることに疑問を感じる長山です。

今日はいつもの車売買ハウツーとは趣旨を変えて、車販売の実態と問題に触れたいと思ったので、それについて書いていきます。なので、販売に携わっていない方は、ちょっと面白くない内容かもしれません。

ですが、日本の車販売システムは、30年くらい変化せず、時代に取り残されています。車販売のみならず、保険や家電も似たようなシステムで売られてますので、セールスの方には参考になる内容かと思います。

もしかしたらあなたは会社で、これからの時代に使えない営業方法を、教えられているかもしれません。

むかしむかしの車販売システム

車の販売システムを語るうえで、まず最初に注視しなければいけないのが、メーカーと販売店の関係と役割です。

車は車を作る会社と販売している会社が別々になっています。世の中の商品ほぼすべてそうなっているのですが、なぜか車だけは生産者(メーカー)が販売も行っていると思われている方も多いので、改めて書いておきます。

販売店は別会社ですので、場合によっては同じメーカーでも隣の店舗は違う会社という場合もあります。

そのメーカーと販売店の役割をまとめたのが下の図です

メーカーの役割は、まず商品ラインナップをそろえること。つまり、新車種の開発です。セダンやトラックしかなかった頃から、車の免許保有率が上がるにつれ、カッコいいスポーツカー、コンパクトで運転しやすい車、6人以上乗れるファミリー向けの車など、商品ラインナップをそろえることが一番の役割でした。

開発した車のTVCMなどは、消費者に認知してもらうとともに、販売店に売りやすいと思わせるため(販売店の満足度アップ)に使われていました。また、ブランディングの思想は無く、壊れない、安定した品質の車を作れば、自社の車のイメージアップになり、車が売れると考えていました。

販売店は、お客様認知度の低い新車をどのように売っていくかを命題としていましたので、アフターフォローや、日中に来店されたお客様宅へ訪問し、ついでに向こう三件両隣にも飛び込み営業をかけることが、当たり前でした。業務のほとんどが販売活動だったと言ってもいいかと思います。

ですので、「そこまでその気ではなかったお客様を、その気にさせて売ることが出来るセールス」がもてはやされました。

これがむかしむかしの自動車販売システムです

現在の理想的な自動車販売システム

では現在の自動車販売システムは、どのようになっているでしょうか?
同じように図にしてみました。

インターネットの普及により、消費者は商品情報を自分で手に入れられるようになりました。そのためメーカーはTVCMや雑誌などだけでなく、情報発信の方法を改めていく必要が出てきました(PR,マーケティング)。

他社との差別化を図り、販売の後押しの手段として。メーカーイメージの創造(ブランディング)の必要性が出てきました。

また、新商品開発や品質管理に必要な情報取得をするために、販売店と購入者から、率直な手触りある意見のフィードバックが重要となります。

販売店は、消費者が得られる情報が増えたため、購入決定の後押しに力を入れる必要がなくなってきました。その分集客を考える必要性が出てきたため、PR,マーケティング、ブランディングをメーカーと協調して進めなければいけません。

また、アフターフォローに力を入れ、顧客との接触機会を増やすことで、メーカーへの情報フィードバックや店舗ブランディングを図り、乗り換えを喚起して販売活動に繋げる必要が出てきました。

実際の現場はどうなっているのか

とまあ、私が理想的と思える販売システムを書いてみたのですが、実際の現場はどのようになっているでしょうか?

メーカーは店舗のイメージ統一や、情報発信に力を入れつつあります。ほとんどのメーカーがYouTubeチャンネルを作っていたり、WEBページの改善、SNSでの情報発信を行っています。

ですが情報顧客からのフィードバックや、販売店のブランディング参加、アフターフォロー体制の拡充は、上手くいっているとは思えません。

もっと言ってしまえば、販売店は、訪問販売をしなくなった程度で、体制は変わっていません。マーケティングやブランディングまでほとんど意識していないのが現状だと思います。

まず、アフターフォローに力を入れるようになれば、商談の方法も変わってきます。何度もお客様とお会いする機会がありますので、強く乗り換えを進めるよりも、状況や必要に応じた商談をする必要があると思います。

アフターフォローに力を入れているお店であれば、キーマンは営業ではなく、車のメンテナンスを担当しているメカニック達です。営業インセンティブを抑え、メカニックの報酬を上げなければ、アフターフォローを店舗運営の中心には据えられないと思います。

ですが、いまだ「そこまでその気ではなかったお客様を、その気にさせて売ることが出来るセールス」をほめたたえ、営業マンに多額のインセンティブを渡し、メカニックの給与を上げている販売店が大半で、アフターフォローに力を入れている状況とは言えないと思います。

お客様からの情報フィードバックも、明らかに上手くいっていません。

ほぼすべてのメーカーで、購入後や点検後に、店舗を利用された感想を、アンケートメールを送り調査しています。このアンケートでメーカーはお客様からのフィードバックを得て改善に繋げなければいけないのですが、なぜかアンケート結果次第で、店舗にインセンティブを出す仕組みを取っています。

そうなると、販売店はどうするか?
セールスはお客様に「なにもなければ満点で」とお願いします。お客様も差し支えなければ、ほぼ満点を入れます。

お客様が感じたことは、販売店によって改ざんされているも同然です。そのような顧客アンケートで、何が得られるのか、疑問でしかありません。

システムが変わらないのは何故だろう

世の販売の主役は、セールスからPRやマーケティング、ブランディングに移り変わっています。車の販売もそのように形を変えなければいけない状況なのですが、未だむかしむかしの販売方法を引きずったままです。

なぜシステムは変わらないのでしょうか。
私が思う原因は、「セールスの既得権益を守りすぎていること」だと思います。

販売実績によりインセンティブを貰うのは当たり前だとか、セールスの方は考えています。昔のように消費者の気持ちを動かさないと売れない状況でしたら、セールスは特殊能力くらいのレベルです。売れる人間が評価されて、多額の報酬を貰うことはおかしな話ではないと思います。

ですが今や販売の主役はPRやマーケティング、ブランディングに取って代わり、売ることのハードルは下がりました。特殊能力ではなくなったのです。

であれば、今までのように売るだけのセールスに、インセンティブを払う必要はありません。むしろ、マーケティングやブランディングを担当している人であったり、アフターフォローの主役であるメカニックに、インセンティブを付けるべきなのです。

しかしセールスは、今でも高いインセンティブを貰い続けています。それは、今管理職や経営者となっている方々がそのようなシステムで既得権益を得ていたため、それを捨てられないのです。

インセンティブからの脱却が必要なのは、セールスだけではありません。

先に挙げた顧客アンケートや、店舗改造、人員配置、メーカーは販売店に対し、あらゆるものに達成インセンティブをかけています。

インセンティブを付けることで、サービス向上や体制確保のコントロールを図ろうとしているのでしょうが、販売店はインセンティブ(売上)確保のために、とにかくつじつまを合わせるだけで、実態が伴わないのです。

個人や会社を金で動かそうとする思想を、まず捨てるべきです。

もう一つの原因は、車業界は昔からの封建社会的思考から脱却できない点にあると思います。

販売店はメーカーから販売権を貰い、販売をしています。ですから販売権をはく奪されてしまうと、経営が立ち行かなくなる会社も出てきます。販売店はメーカーに、圧倒的な力で抑えられている状況です。

消費者の動向をつかみ、商品開発品質管理、PRやブランディングに繋げていくためには、販売店からの情報フィードバックが不可欠です。

ですがメーカーが力で抑えつけている状況では、販売店に都合のいい報告しか流れてこないため、正確なフィードバックは返ってきません。

車業界のメーカーと販売店の関係は、江戸時代の徳川幕府と外様大名のような構図です。もしくは、コロナ対策の政府と地方自治体みたいな関係です。昔はよかったけど、今はどうでしょうか?
上手くいく関係性だと思いますか?

何度も書いていますが、販売活動の主役はPR、マーケティング、ブランディングに移り変わっています。そしてそれらは、メーカーだけではなく、販売店も一緒になって取り組まなければいけない内容です。

お互いの関係改善も、販売システムを変えるために必要なことなのです。

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