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地方での「品定め」と個人情報

ちょっと遅れましたが、福井県池田町が移住者向けに発表した「池田町暮らしの七カ条」が話題を呼んでいます。

私としては、もはや公的資金の投入に期待できない集落の、ホントの実態を表現していますし、半ば、「地域としてこれで生きていく・生きていかざるを得ない」という覚悟のようなものも透けてみえるところです。

木下斉さんも指摘していますが、(引用部分は有料部分より)

一昔前であれば、こういう集落業務を行政業務に置き換えることこそ行政の仕事みたいなところだったので、「これらは集落でやってもらうことですから」みたいなことを行政担当がいうと、どこからか批判とかもあったのですが、もうそんなレベルは超えている。公式見解で行政も面倒はみれません、移住した人たちも集落業務に加わっていただく他ありません、という本音をメディアに発信できるようになったというのは時代が変わったと感じるところです。

まさに、転換点だと思います。

さて、私が特に気になったのは第5条ですね。

また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください

の部分です。

なぜ、地方で品定めが行われるのか


では、なぜ、地方で「品定め」が行われるのでしょうか。

ざっくりいえば、それは「防犯」なわけです。

30万規模の都市ですが、私が所属していた経済団体も紙の名簿が未だにつくられています。経済団体なので、メンバーの多くは経営者や経営幹部な分けです。

 その名簿冊子には当然ながら、それぞれのメンバーの会社の住所、電話番号、メールアドレス、などの連絡先が載っています。また、会社だけでなく、誕生日や、人によっては自宅の住所電話番号も載っています。私も、これを見ながら、友人として、誕生日プレゼントなどを贈ったりしていました。

 恐らく、首都圏の人から見ると、個人情報のダダ漏れ具合にびっくりすると思います。よく、地方では自宅に鍵を掛けずに外出する、といいますが、個人情報にも鍵が掛かってない状態ですね。

 昔、地元の新聞社が東三河総覧という書籍を出していました。さすがに今は出ていないですが、それでも、最新号で2012年ぐらいだと思います。

 そこには、家族構成が載っており、

長男・ダレダレ(どこそこ勤務)
長女・ダレダレ(どこそこ高校)

と掲載されている人もいます。

なお、この本は市販されていました。

 「悪用されたらどうするの?」という話ですが、そもそも悪用する人がいない前提なんですよね。

 鍵を掛けずに外出するのは大前提として泥棒がいないからと同じ。そして、都会と違って、「見知らぬ人間が歩いていたら直ぐに気がつく」ぐらいの人口密度なわけです。逆に、「見知っている人が泥棒」だとしたら、狭い世間で、そんなことやったら、やった方が生きていけません。

 そもそも、経営者同士の付き合いなのか、友人関係のつきあいなのかがシームレスです。今、私が、例えば、会社に導入しているマネーフォワードの社長の自宅住所を、会社の社長として知ることは難しいでしょう。

ですが、例えば、当社の甘酒の販売先の会社の社長は、高校の1年後輩です。そもそも、自宅の場所は高校生の時から、「後輩の家」として知っています。シンプルに友達として、遊びに行ったこともあります。

 そもそも、地方では、会社と自宅が一緒というケースも多いでしょう。、「あそこの糀屋さんの場所が村井君の自宅」であり、「あそこの写真館の2階が経営者のご自宅」であり、「あそこの工場の敷地内の建物が経営者のご自宅」なのです。

それは、会社が知られている以上、市民誰でも自分の自宅住所を知ってるような状態です。そう、恐らく、のび太の学校の全校生徒と町内全員がジャイアンこと剛田剛君の自宅を知っているでしょう。

それは、個人情報が学校の名簿から漏れたからみんな知っているわけではなく、あの八百屋の息子さんであるから、八百屋を知ってる=自宅を知られている、わけです。

 さらには、大人になってからの友人も、会合などで一緒に飲んだあと、互いに車で送ったり、ゴルフの際には迎えに行ったりしているので、その中でそもそも、かなりの人の自宅の場所を知っています。多分、豊橋で「社長」と呼ばれる人の住所を100人以上は知っています。

 私は、地方でも、どちらかと言えば経営者コミュニティには所属していますが、例えば、消防団だったり、PTA関係だったり、地域に根ざした何らかの組織体であれば、多かれ少なかれ、同じような状況だと思います。

 つまり、コミュニティにいる限り、ほぼ個人情報は互いに知っている状態です。

 ただ、この大前提は、「個人情報を悪用する人はいない」からです。この大前提があるからこそ、個人情報もガンガン共有される。

 そして、一旦コミュニティに入ると個人情報が筒抜けになる・筒抜けにならざるを得ないからこそ、「お前には情報を筒抜けにしても大丈夫な人間かしっかり見定めさせてもらう」分けです。これが、「品定め」に繋がります。

逆に言えば、「品定め」の結果、「こいつには個人情報を全部開陳させる仲間として認めて構わない」となるまでは、距離を置かれた対応になります。

これが、外から来た人が中に入っていくハードルの高さに感じられるのかも知れません。

 都会で言う「会社の同僚」ぐらいの、互いの住所や電話番号は知らないけれども、業務遂行上必要な程度の情報(携帯番号とか)はやりとりする、みたいな、精度の高い微妙な情報管理が、地方でも継続されると考えると、しんどいと思います。

 正直なところ、これが地方の実態ではあります。

 肯定するかどうかは別として。


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