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都会のインテリが、地方の現場のプロトタイプ・スモールスタートを笑う国

ちょっと、挑発的なタイトルだったかと思いますが、気にしないでください。

いよいよ、緊急事態宣言も解除になり、『新しい生活様式』なるものでの、宣言後の世界が始まります。アフターコロナの第一歩ではないでしょうか。

個別具体的な『新しい生活様式』の内容そのものには様々賛否がありますが、少なくとも『感染拡大を防止しつつ、なるべく「普通」の生活をして経済活動を回していく』という工夫が必要になることは論を待ちません。

コロナウイルスは『物体』ですから、どうしても、その対策は物理的な工夫が必要になります。

例えば、蛍光塗料を用いたクルーズ船の接触感染の実験があります。

NHKは専門家と共同で、10人が参加する検証実験を行いました。実験では1人を感染者に設定し、せきを手でおさえた想定で、ウイルスに見立てた蛍光塗料を手のひらに塗り、30分間、自由にビュッフェを楽しみました。
その後、特殊なライトを当てて、青白く光る塗料を確認したところ、食器や手などの広い範囲に広がったことがわかりました。
塗料は参加者全員の手に広がり、3人は顔にもついていることが確認されました。
料理を入れた容器のふたや料理を取り分けるトング、それに、飲み物の容器の取っ手などを介して広がっていました。
一方で、感染対策として店員が料理を取り分けてトングも頻繁に交換し、客に、こまめに手を清潔にするよう促すと、塗料が付着した手の面積は30分の1に減り、顔に付着した人はいなかったということです。

これこそ、まさに、地方中小製造業が大得意なことなんですよ。『ビュッフェ』形式が危険、だと全部ビュッフェを止めなければいけないけど、トングとを取り替えれば、付着30分の1に減らせる。

経営コンサルタントの倉本圭造さんの記事で、詳細が書かれていますが、中国では食堂のテーブルとエアコンの配置、空気の流れにより、どの席が感染しやすく、どの席が感染しにくいかの現場検証などもされてます。


こういうのね、中小企業の製造業、むっちゃ得意なんですよ。まず、プロトタイプをやってみて、現場の物理で検証するっての。


そして、そこで開発された「現場の工夫」が蓄積、展開していくことによって、『新しい生活様式』においても、『一切の接触避けるために完全自粛だ』ではなく、『こういう工夫をすれば人も集まれるし、感染確率も大幅に下げられる』という『日常を取り戻す』ことに繋がっていく。


ただ、この手の工夫って、大体の場合、めちゃくちゃダサいのです。

3月にでた、この記事、覚えている人多いと思います。当時、ネットで、話題になっていました。でも、今、コンビニとか営業再開するために、ほとんどの商店でビニールシートでカウンターを守ってますよね?結局、これがあって、カウンターの人が濃厚接触にならないことも、店舗が再開や継続できる理由に繋がっていますよね?


そういうことなんです。


最近では、大分の焼酎メーカーが発起になって、『新しい生活様式』でも出来る宴会のやり方を現場検証していました。

これも、ネットで、めちゃくちゃに笑いものになっていました。


でも、これが、まさに現場のプロトタイプ。スモールスタートって、こういうことなんですよ。まず手を動かして造って、ロールプレイして、みんなで検証してって言う。


5月23日リンク追記


そして、この考え方って、まさに、「デザイン思考」だと思うのです。詳細は専門書に譲りますが、「デザイン思考」は次の5ステップを踏みます。

第1段階:観察・共感・洞察
第2段階:問題定義
第3段階:創造~視覚化
第4段階:プロトタイプ
第5段階:テスト~評価と改良

そして、プロトタイプの段階では、余り手間や時間、予算をかけず、それこそ数百円、10分程度でも、まず造ってみて、色々試して、次の段階の評価して改良しての螺旋を繰り返していくことが重要点としてあげられます。手を動かして、不完全なものでも造ってみて、アイデアを複数人で検証していくことの繰返し。

こういう「デザイン思考」を経て生み出された最先端の様々な製品が、世の多くの人を魅了し、新しい価値を生み出しているわけです。そして、大体、意識高そうな人たちほど、こういう優れた作品を手元に置いているのではないでしょうか。

一見、イケてる様に見える製品でも、その背景には、このようなチープなプロトタイプの試行錯誤があって、その中で洗練されて、世に出てくるときにはイケてるデザインになってる。最初から、いきなりイケてるデザインの製品が天から降ってくるわけではない。

最終製品の恩恵だけうけておいて、それが生み出される過程に対して想像力が欠如してはいないでしょうか。そして、それこそが、「地方の製造業」と「都会の情報サービス業」の分断なのではないでしょうか。

『新しい生活様式』をまともにやったら、恐らく、経済は死にます。そして、『経済が死んでしまっても良いのか』と叫ぶのなら、代替案を造っていきましょう。

有形物の現場を知らず、無形物の抽象理論だけ扱ってるから『全部ダメ』『全部再開』の選択肢しかなくなります。

『この場面でのこういう行動しなければ大丈夫ですよ』『この状況ではこういう用具で対策しておけば感染確率は無視できるレベルに落ちる』『こういう状況でも、こんな行動してしまうとさすがに危ない』そういったことを蓄積していって、『まあ、それなりに無理なく生活できる社会』というのが訪れるのだと思います。


そして、その第一歩は、ダサくて、チープで、一見誰でも出来るような、そんなことから、始まるのだと思います。


例え、手を動かさない人間が、そのダサさとチープさを笑ったとしても。

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