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くわばら小日記


★ 12月21日 月曜日
午前5時、枕元のケータイのアラーム鳴る。
うつ伏せになり、猫の柔らかな腹わたに顔をうずめる。

着衣の後、階下に降り、洗顔。
仏壇のろうそくに火をともし、線香を立てる。

簡単なストレッチをした後、
マフラーにマスク、毛糸の帽子と手袋をして
外に出、ウォーキング。

帰宅後、何も浮かばないので
朝の日課を、ツイート。


★ 12月22日 火曜日
近くの里山の中腹に、10匹に満たない
野良猫たちが住んでいる。

昨日、今年生まれたばかりの
子猫が、林道脇に死んで横たわっていた。

白足袋を履いたようで、
歩き方がまだぎこちなく
その愛くるしい姿が記憶に残っている。

幸いにも、何本か、ネコ動画に収録しているが、
あの、シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ、の唄の
飛ばずに消えたシャボン玉のように思え、
哀切極まりない。


★ 12月23日 水曜日
小学生の頃、海岸に流れ着いた
カキ養殖用の、棄てられた、長さ20センチくらいの
竹切れを集め、それを投げ合う
戦争ごっこをしていた。

松の木に登った奴が投げるのを
必死で避けながら、後ずさりしていたら

後ろ向きのまま踏み外し
石垣の上から一回転して
数メートル下の海に落ちてしまった。

青い空と白い雲を見ながら、
一瞬、ダメかと
過ぎったが
引いた砂地に、しばらく
呆然と突っ立っていた。

だいじょうぶかという声に、
見上げると、
相手が、石垣の上から顔を出して笑っていた。


★ 12月24日 木曜日
小学2年生の夏、
海に浸かって遊んでいた時のこと。

あまり親しくもない近所の中学生の誘いに
嫌々ながら応じ
肩につかまって、沖に出ていたら

急に潜り込み、
泳げない自分は、突き放されたまま、
海の底へ沈んでいった。

潮水が、鼻や口からいっぱい入り、
息もできず、とても苦しかったが、
海の深い色を見ながら
こんなに早くみんなと別れるのかと
子ども心に思った。

が、気づいたとき
岸辺に立って大泣きしていた。

姉が助けてくれたのだが、

あの時、自分は、別の宇宙では
溺れ死んだものとして、時が進行し、
家族を悲しませていたのではないかと
その後も、時々思った。


★ 12月25日 金曜日
震度5弱の安芸灘の地震があった日のこと。

車で、海岸沿いの道路を走っていたら
カーブの手前、大型トラックと鉢合わせ。

その直前、車ごとバウンドするような
激しい揺れを感じた。

トラックとすれ違い、
二十メートル走ったら、その手前に
山から落ちた軽トラほどの大岩が、道路の真ん中に鎮座していた。

間一髪のところで、
自分もトラックも、何とか、災難に逢わずに済んだが、

ここまで来る途中、
空き缶を、ごみかごに棄てるため、車を停めていなかったら、
あの大岩の下敷きになっていたかもしれない。
くわばらくわばら。

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